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伝記映画『Michael/マイケル』いよいよ公開

Qobuzで聴きたいマイケル・ジャクソン。“オーディオ”的にも楽しめる珠玉のアルバムとカヴァー曲を徹底ガイド

公開日 2026/06/13 14:30 安田脩理
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 ファン待望の映画公開。今こそ聴きたいMJの音源

King of Pop…

いつしかこう称されるようになったが、マイケル・ジャクソンほどこの称号が似合う者などいない。ポップであることが軽く見られたり、大量消費される音楽として揶揄されるような時代もあったが、MJは音楽界におけるイノベーターであり、ゲームチェンジャーでもあった。

早過ぎる死によってその行き着く先を見届けることは叶わなかったが、MJが疾走した時代は確かに輝いていた。音楽も、熱狂する人々の日常すらも。だからこそ時代を照らす者に相応しい“King”という称号が与えられたのだろう。

そしてMJの死後、SNS全盛の時代となり、あらゆるものが簡単に切り取られ、発信されるようになった。スマホやアプリがすべての人を表現者に仕立て上げてくれる状況を現出した。MJもムーンウォークや象徴的なムーヴにとどまらず、奇行に映った当時の言動までもが切り取られて日々拡散され続けている。

しかし、MJの価値が毀損することなどなく、SNSによる新たな拡散と大量消費の波に晒されながらも、King of Popは輝き続けている。決して死後に美化された偶像ではない。MJが創り上げた音楽とショートフィルム、ダンス、ムーヴ、その総和としてのエンターテイメント性が突き抜けた普遍性を有しているからに他ならない。

MJはすべてを超えていく...

そしてまた、世界を熱狂の渦に巻き込んでいる。4月22日に全米で封切られたMJの伝記映画『Michael/マイケル』が6月12日に日本でも公開された。

音楽は時空を超えてリスナーの記憶や感情を呼び醒まし、心の赴くまま魂を自由に浮遊させてくれる素晴らしいアート。時空を超える音楽にMJのヴォイスとムーヴが重なると、意識が光速でワープして、まるで宇宙船の中にいるような無重力の心地良い浮遊感に包まれながらMJに熱狂した時代ごと疾走できる。

本稿ではハイレゾ時代の今こそ聴きたいMJの音源やリマスター盤についてご紹介したい。

おすすめハイレゾ音源

Thriller(Qobuz 176.4kHz/24bit)

筆者のリファレンスはオリジナルアナログマスターテープから新たにDSDマスタリングされたMobile Fidelity(MoFi)のSACDハイブリッド盤であるが、「King of Tube」と称される故ティム・デ・パラヴィチーニが設計したアナログマスターテープの再生機を使用したマスタリングに拠ってか、MoFi盤はDSDらしい解像度と階調性に加え、中低域にアナログライクな質感がある。

一方、Qobuzの176.4kHz/24bitは1999年のSACD盤のDSDマスターをPCM変換したとされているように、SACD盤に近いバランスであり、アナログライクな深い低域のMoFi盤に対して、ややタイトでベースやドラムなどのリズム系の楽器が斬れ味よく心地良い。

没入感はMoFi盤の方が得やすいかもしれないが、タイトでニュートラルな音調がリズムを際立たせ、楽曲の構成や細やかな質感、綿密に創り込まれたサウンドを味わうことができる。

なお、筆者のオーディオで聴くと、「This is It」(Qobuzの44.1kHz /16bit)に収録されたThrillerの楽曲やTriller40周年記念盤(Qobuzの44.1kHz/24bit)はやや音圧が高めで一聴するとマッシヴな響きがノリの良さを演出してくれるが、MAGICOのような低域に制動力のあるスピーカーで聴くなら 176.4kHz/24bitを一推ししたい。

ハイレゾ音源による解像度の高さとディテールの明瞭度が醸し出す臨場感が、PVなしでもショートフィルムの映像が浮かぶような世界観を創出してくれる。

個人的なフェイヴァリット・トラックは、「Billlie Jean」「Human Nature」「The Lady in My Life」の3曲。タイトル曲の「Thriller」やエディ・ヴァン・ヘイレンのリフとソロが素晴らしい「Beat It」ももちろん最高だが、MJの繊細なヴォイスやソウルフルなフィーリングはミディアムテンポの曲で際立つように思う。

そして『Thriller』のサウンドを語る時、クインシー・ジョーンズやエディ・ヴァン・ヘイレン、スティーブ・ルカサーに目が行きがちであるが、そのサウンドを下支えし、ビートやグルーヴ、ファンクなフィーリングを生んでいるのはジェフ・ポーカロだと思う筆者にとって、「Human Nature」こそ、Qobuzの176.4kHz/24bitで味わいたい。ジェフ・ポーカロのグルーヴが「Human Nature」を極上のナンバーに仕立て上げている。

『Thriller』がリリースされた1982年、筆者は高校受験のための試験勉強を余儀なくされ、毎夜、浮かない時間を過ごしていたのだが、休憩中や英文読解の時、LPを録音したTDKのカセットテープをソニーの初代ウォークマン「TPS-L2」に入れてずっと聴いていた。

だから、『Thriller』を聴くと、ブルーの初代ウォークマンの重さとオープンエア型の小型ヘッドホンのスポンジの感触を思い出す。

まだハイレゾやメモリープレイヤーの可能性すら描けなかった時代。音楽をダイレクトに身体で吸収していたティーンエイジャーの頃、まだMJなどと呼ばれてはいなかったマイケル・ジャクソンのビートサウンドやグルーヴは初代ウォークマンでも激しく身体を揺さぶってきた。

毎夜ずっと繰り返し聴いていた『Thriller』は初代ウォークマンでもラジカセでも抜群に魅力的だったが、あれから40年以上が経ち、ハイレゾ音源を享受できる今こそ、スタジオワークによって創り込まれたサウンドを詳らかにするような解像度やディテール表現、抜群の定位感、美しく広がる倍音がもたらすサウンドイメージの中で、その唯一無二のKingの世界観に浸りたい。

Dangerous(Qobuz 96kHz/24bit)

MJのアルバムを2枚選定するとしたら、恐らく、1979年の『Off the Wall』と1982年の『Triller』を、あるいは『Triller』と1987年の『Bad』を挙げるのが通例だろう。

前者の組み合わせはクインシー・ジョーンズ(QJ)との出会いがモータウンサウンドからの脱皮とポップスターに上り詰める軌跡を描いてくれるし、後者の組み合わせはクインシーやポール・マッカートニーらとのコラボレーションを通じて開花したMJのソングライティング力や革新的な音作りへのチャレンジが雄弁に物語るMJのアーティスト性を浮き彫りにしてくれる。また、この3枚は80年代の音楽を象徴する3部作でもある。

『Off the Wall』『Bad』『Dangerous』はいずれもQobuzで96kHz/24bitで聴けるが、筆者がオーディオファイルへお勧めする理由が『Dangerous』にはある。

本作ではクインシー・ジョーンズとのコンビが解消され、MJのセルフプロデュース色が強まり、メッセージ性の高い歌詞やルーツであるアフリカンミュージックのフレイヴァーが随所に感じられるサウンド創りが特徴となっている。

QJ3部作に比べれば歌詞やリズム、収録曲の多様性が増しており、アルバム全体に通底する新たな世界観や共生の価値観、リズムとビートに秘められたブラックミュージックやアフリカンミュージックへのリスペクトの念を上手く引き出したい。

それにはハイレゾ音源が相応しいし、QJ3部作よりもリスニング環境が問われることになるかもしれない。奥深さのある『Dangerous』こそ、筆者の推薦盤とする理由である。

特にお薦めなのがアルバムのラストを飾るタイトル曲の「Dangerous」。実はこの曲をPops/Rock系のリファレンス曲にしているオーディオショップが少なくない。

重厚でエッジの効いた低域やMJの息遣いのリアルさ、90年代のR&Bに大きな影響を与えたとされる本作のエッセンスが表出したかのようなファンク感溢れるリズムなど、オーディオ的な聴きどころが満載である。

もう一曲は「Heal the World」。ビートやムーヴというKing of Popを着飾る要素を脱ぎ捨てた本曲だからこそ、MJの繊細な眼差しや極上のヴィブラートが聴く者の心に浸透し、美しく沁みてくる。

「I'll Be There」を歌った11歳の天賦ある少年が辿り着いたヴォーカリストとしての境地と響きの美しさ、極上のヴィブラートに秘められた想いをハイレゾ音源で引き出したい。

また、本曲は毎年、東京インターナショナルオーディオショウの最終日、太陽インターナショナルブースでの最後の講演でオーディオ評論家・傅 信幸氏がかける曲でもある。その場に居合わせた経験のある方も少なくないだろう。

オーディオを愉しめる環境が長く続くことを願ってやまない関係者の想いや、またの再会を願う気持ちが込められた選曲なのだと筆者は理解している。そういう想いや情景も優しく載せてくれるMJの傑作だと思う。

MJのカヴァー曲のおすすめ

以下ではroonの素晴らしいタグ機能によってQobuzのストリーミング音源の中から見つけたカヴァー曲を紹介したい。

音源のレートはいずれもCDクオリティに留まるが、他のアーティストによるアレンジが施されたカヴァー曲を聴くことで、MJのソングライティング力やアルバム収録曲の素晴らしさが改めて浮き彫りにされる気がする。

筆者がセレクトしたこの5曲、ぜひプレイリストにして5曲続けて愉しんで欲しい。

Workin’ Day and Night / 小沼ようすけ(Qobuz 44.1kHz/16bit)

アルバム『Jazz ’n’ Pop』収録 / ※オリジナルの作曲者はMichael Jackson

『Jazz ’n’ Pop』は日本人ギタリスト小沼ようすけの3rdアルバムで、MJ以外にもU2やWeather Reportらのカバーを収録。

全編打込みをベースにしたサウンドであるが、本カヴァーではアップテンポな小沼のギターサウンドが原曲のディスコ・ファンク感をジャジーでポップなライトさでブレンドしている。

ピック弾きのようなアタック感から柔らかいトーンまで多彩な音触を表現するそのフィンガーピッキングの響きが、打ち込み系のリズムに弾むような生命感を授けている。

Smooth Criminal / 2CELLOS(Qobuz 44.1kHz/16bit)

アルバム『2CELLOS』収録 / ※オリジナルの作曲者はMichael Jackson

Stjepan HauserとLuka Šulićによる人気のチェロ・デュオ 2CELLOSによるカヴァーで、2011年に本カヴァーをYouTubeにアップしたところ、2週間で300万回再生されたことで有名になり、デビューに至った彼らの音楽人生を変えた曲。

リズムやビート系の楽器を一切使わずに2本のチェロだけで演奏された本カヴァー。擦る音だけで構成されたとは思えないようなダイナミズムとスピード感があり、オリジナルよりも楽曲のドライブ感をアップさせている。

Bad / Sönke Meinen(Qobuz 44.1kHz/16bit)

アルバム『Perpetuum Mobile』収録  / ※オリジナルの作曲者はMichael Jackson

フィンガーピッキングの達人 Tommy Emmanuelをして「現代で最もクリエイティブなギタリストの一人」と言わしめた超絶技巧のドイツ人ギタリストSönke Meinenによるカヴァー。

ナイロン弦によるピッキング音と美しい倍音、独奏とは思えないようなリズムと主旋律の重なりが優しい波動としてリスナーの身体を滑りながら浸透してくるかのようで、オリジナルとは違った皮膚感覚の音触とグルーヴが堪らない。曲中の「Black and White」や「Man in the Mirror」への変転も愉しい。

Man in the Mirror / Michele Grandinetti(Qobuz 44.1kHz/16bit)

※オリジナルの作曲者はGlen Ballard & Siedah Garrett

バークリー音楽大学で学んだ後、ソニーBMGタイランドとレコード契約を始めて結んだイタリア人歌手であり、2016年のカヴァー。

アコースティックな編成とシンプルなアレンジで、透明感のあるピアノに重なる声が美しい。夜露に濡れた朝の花を想起させるようで、その水滴の中に映る空は汚れなき手付かずの夜明けの先に広がる優しい世界を夢想させてくれる。

Lady in My Life / Trijntje Oosterhuis(Qobuz 44.1kHz/16bit)

アルバム『Never Can Say Goodbye』収録 / ※オリジナルの作曲者はRod Temperton

ブルーノートレーベル所属のオランダ人女性歌手Trijntje OosterhuisによるJackson5時代を含むMJのカヴァーアルバム『Never Can Say Goodbye』からの一曲。

筆者がroonを始めてからそのタグ機能を使って知った歌手の中で目下いちばんお気に入りの一人で、本盤は代表作であるBurt Bacharachのカヴァーアルバムに並ぶ佳作。

ゴスペルやジャズ、ソウルミュージックらに根ざしたハスキーでややスモーキーな張りのある声やソウルフルなファルセットが美しくギターに重なり、極上の質感で迫ってくる。バックヴォーカルと重なる後半のアレンジが最高に素晴らしい。

◇ ◇ ◇

MJの伝記映画「Michael」は全国のシアターで公開中。お気に入りのアルバムを、あるいはプレイリスト化した楽曲を前夜に聴いてから、MJに熱狂していたあの時代の自分に会いにシアターに行こうではないか。お気に入りの靴を履いて、MJのグルーヴやムーヴに重ねるステップを心の中で踏みながら…

【筆者のQobuz再生環境】
TAIKO SGM Extremeをroon coreにして、Network Renderer v2 Moduleを搭載したMSB Analog DACにて再生するシステムであり、スピーカーにはMAGICO Q3を使用。

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