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PR“GOLDEN EAR”ジェフ・リーさんに訊く

ネットワークオーディオを、ハイエンドの高みへと導く。aurender15周年モデル「A1」が目指す世界

公開日 2026/05/22 06:30 筑井真奈
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知的遊戯としてのハイエンドオーディオ 

「選ばれし者の恍惚と不安、二つ我にあり」とは、フランスの詩人ヴェルレーヌの言葉であるが、韓国・aurenderの試聴ルームでその15周年モデル「A1 15th Anniversary Edition」に耳を傾けていると、「ハイエンドオーディオとは、選ばれし者の高度な知的遊戯である」という思いが心に浮かんだ。

aurenderの製品開発が行われている試聴室。メインスピーカーはWilson Audioの「Alexia V」

多くの人にとって、たかだか音楽を聴くために数百万円もの資金を投入するのは間違いなくクレイジーなことであろう。だがしかし、オーディオという再生芸術の世界に魅せられた者にとって、それはまさに人生を掛けるに能うほどに、唯一無二の営みである。

ハイエンドオーディオとはそういうものだ。現在のaurenderの開発を率いるジェフ・リー氏の物静かで知性的な瞳の奥に垣間見える、オーディオファイルとしての深い狂気は、ハイエンドオーディオブランドとしての新たな大空へと飛び立たんとする、強靭な鷲の姿にも思えた。

aurenderの開発を率いるジェフ・リーさん

aurenderは2010年に、韓国で立ち上がったネットワークオーディオ専業ブランドである。ネットワークオーディオの黎明期は、LINNが主導したUPnPベース(OpenHome)の再生スタイルが主流であったが、aurenderは独自の“キャッシュ再生”という考え方を採用。NASなどの外部ストレージの音源を一旦プレーヤー側で“キャッシュ”してから送り出す、というものだ。

OpenHomeはデータの逐次送信、つまりパケットが常に送り出され続け、受け取る側は常にパケットを受け取る準備をしていなければならない、という規格上の仕様がある。その常時動作という負荷が音質面で不利という考え方から、一旦データをキャッシュした上で改めて送り出すというスタイルを貫いているのだ。

それはaurenderの開発当初から採用されており、現在に至るまですべてのモデルに搭載されている。

aurenderのオフィス内には過去のモデルも展示。AK4497を搭載、プリメインアンプまで一体となったネットワークプレーヤー「AP20」(3,960,000円/税込)

この再生方式は、現在のストリーミング全盛時代においてもより威力を発揮する。QobuzやTIDAL、つまりクラウド上から送り込まれてくるデータを一旦プレーヤー側でキャッシュすることで、ネットワークの不安定さやノイズから開放されたサウンドが実現できる。

2010年の時点でこういった未来図を想定した製品開発を行っていたことは、aurenderというブランドの先見性を示すひとつの証左だろう。

ファイル再生は、CDプレーヤーより音がいい

現在のaurenderの製品開発を担うジェフ・リーさんがaurenderにジョインしたのは、実は3年ほど前のことだという。以前はサムスン等でエンジニアとして働いており、オーディオはあくまで“趣味”として関わってきたそうだ。

だが、その知性に裏打ちされたオーディオファイルとしての深い知見が、現在のaurenderのサウンドに大きな影響を与えている。ジェフさんは、aurenderでも2人しか認められていない“GOLDEN EAR”の持ち主であり、音質設計において最重要となる役割を担っている(もう一人はデヴィッドさんといって、現在中国のaurenderを担当している)。

「オーディオは私にとって大切な趣味であって、まさか自分がaurenderに加わって、製品開発に携わることになるとは夢にも思っていませんでした」と振り返る。

ジェフさんがオーディオにのめり込むきっかけとなった体験が2つある。ひとつはWilson Audioの「WATT/Puppy」、音像の高さや楽器の位置が見える、立体的な音場体験に衝撃を受けたと言う。もうひとつの出会いがMonitor Audio。その体験は、三次元的な奥行き感、音のレイヤーが手に取るようにわかることだった、と言葉を紡ぐ。

そしてジェフさんは、立ち上がったばかりのaurenderと出会う。自宅に何千枚ものCDを所有していたが、それまで使っていた高級CDプレーヤーよりも、aurenderのファイル再生の方が音が良いことに大きなショックを受けたのだという。

彼はaurenderのチームに、「なぜこんなに音が良いのか?」と尋ねた。すると3つの答えが返ってきたそうだ。「良質なクロック、強力な電源部、そしてキャッシング再生の力です」と。当時はまだ、“デジタル再生で音が変わるわけがない”といった声がまことしやかに語られていた。だが、ジェフさんのエンジニアとしての長い経験、そしてオーディオファイルとしての直感が、aurenderというブランドの目指す世界と響き合った。

とはいえそこですぐにaurenderにジョインしたわけではない。だが、時にプロトタイプの音質をチェックする、あるいはアプリケーションへのアドバイスを行うといった親しい距離感を保ちながら、あくまで趣味の延長線上として、開発チームとの良好な関係を結んでいたそうだ。

ソウル市郊外にあるaurender本社オフィスの入口

電源、クロック、SPU負荷の最小化が鍵

ジェフさんがaurenderに加わったのは2023年のこと。最初のプロダクトは、日本市場でも大ヒットとなったネットワークプレーヤー「A1000」である。日本円にして約60万円。aurenderとしてはもっとも廉価な戦略モデルである。

aurender ネットワークプレーヤー「A1000」(660,000円/税込)

「A1000はaurenderとしてエントリーにあたる製品です。ですが、音質的な妥協は決して許されません」と断言する。そのうえで、「上からは、CNC加工のシャーシと強力なリニア電源。これだけは絶対に譲れない、と宣言されました。その上でどうやってコストを抑えるか、という点は大きな難関でした」と開発時の苦労を語る。

そのためにどのような工夫を重ねたか。AKMのDACチップの中でも比較的安価な「AK4490REQ」をデュアルモノ構成で使用すること、部品のコントロール、不要な処理や機能をなくしてCPUの負荷低減を徹底。その結果誕生した「A1000」は、日本はもとより世界市場で好意的に受け入れられた。

「aurenderとしてはこれ以上安い製品を作るつもりはありません」。ネットワーク再生へのエントリーとしては、WiiMなど使い勝手も良く手頃な価格の製品も数多く存在する。そして「A1000」は、そこから本格的にアップグレードしたい、ハイエンドオーディオの沼にどうしようもなく魅せられてしまった人に向けたプロダクトとして位置付けられている。

オーディオファイルとして、そしてエンジニアとして、ジェフさんはネットワークプレーヤーにおいて何が音質面で重要だと考えているのだろうか?

「先ほどお話ししたこととつながりますが、大切なことは3点あります。クリーンで安定した電源、低ジッターで高精度なクロック、そしてCPU負荷の最小化です。aurenderでは、ハードウェアとソフトウェアが連携して動作することで、その高い音質を実現しているのです」。ジェフさんの説明は常に明快で、技術者としての真摯な姿勢が言葉の端々からも窺える。

無限の物語を想起させる、ハイエンドオーディオの音

続けて、最新プロダクト「A1 15th Anniversary Edition」についても訊ねてみた。日本円にして予価385万円、DACまで内蔵したネットワークプレーヤーとして最高位モデルとなる。こちらは完全にジェフさんが一からアイデアを出して作り上げたものだ。フロントにゴールドのパネル、そしてロータリーリモコンが付属する。全世界300台限定。

aurender ネットワークプレーヤー「A1 15th anniversary」(予価3,850,000円/税込)

DACチップは旭化成の最上位モデル「AK4499EX」を4基搭載、I2S入力を搭載する他、XLRバランス出力、ヘッドホンアウトも搭載するなど、使用シーンはA1000よりもさらに広い。だが、トランスポートではなくあくまで一体型のプレーヤーとして開発されており、シンプルな再生システムとしての音質が追求されている。

 「A1 15th anniversary」の背面。I2S入力を搭載するほか、各種デジタル入力も充実。またRCA/XLRのアナログ出力を搭載するなど、「A1000」より機能面で大幅にアップデートしている

aurenderの試聴室にて、「A1 15th Anniversary Edition」を体験する機会を得た。そこで話は冒頭に戻る。知的遊戯としての、ハイエンドオーディオの世界。

ニルス・ロフグレン・バンドの「Bass & Drum Intro」では、切れ味の良いベースとドラムの織りなす妖艶なる舞踏に翻弄される。メアリー・ブラックの伸びやかな声は、天井を突き破り無窮の空へと歌声を響かせる。パット・メセニーのギターには、これほどの優しさと柔らかさが溢れていたのかと、改めて気付かされる。

メインスピーカーはWilson Audioの「Alexia V」に、プリ&パワーアンプはConstellation Audio。ふたつのスピーカーの間はせいぜい2m程度だろうか、だがその広いサウンドステージはスピーカーを超えて縦横無尽に広がり、私の身体を満たす。音楽と呼吸が同期するこの深い充実感は、オーディオという沼に足を踏み入れなければ決して知ることはなかっただろう。

オーディオの体験は、どこまでもパーソナルなものだ。同じ音楽を、同じ部屋で聴いていても、そこから何を感じ取るかは人によって異なる。その意味でどこまでも孤独であり不安である。だがその音は、深いイマジネーションの世界に誘ってくれる。無限の物語を生み出すその喜びを、私はハイエンドオーディオと、そして食と酒の甘美なるマリアージュによって以外、体験したことはない。

新しい息吹を加えるソフトウェア開発チーム

aurenderの今後の計画について尋ねてみた。「ウィーン・ハイエンドにて、新しいConductorアプリのベータバージョンを披露する予定です」。

ジェフさんはハードのみならずソフトウェアチームのマネージメントも行っている。「新しいアプリについて、メディアの方にお話ししたのは今日が初めてです。Conductor V6は、まったく新しい体験になる予定です」。その詳細については決して口を割らなかったが、期待していてほしいと視線が強く訴えていた。

翌日には、カンナムエリアにあるソフトウェアチームのオフィスも訪問した。20代から30代の若手スタッフ中心で構成されており、そのことにも驚いたのだが、さらに衝撃的だったのが、ほとんどのスタッフが「aurenderもハイエンドオーディオも知らずに」入社した、ということだ。

7名で構成されるaurenderのソフトウェア開発チーム。中央の帽子を被った女性がリーダーのアレックスさん。右端がaurenderの創業時から参画するエリックさん。その左がジェフ・リーさん、マーケティング担当のアンドリューさん。左端はエミライの八重口さん

「音楽好き?それならうちの会社に入らない?」とスカウトされて入社したパターンが多いそうで、入って初めて、ハイエンドオーディオの世界に触れ、そして魅せられてしまったという。

彼らのフレッシュで柔軟な発想が、コンサバティブに陥りがちなオーディオに、新しい息吹を加えるのだろう。そしてその若いエネルギーの向かうべき方向性を、“GOLDEN EAR”たるジェフさんが、ハイエンドオーディオたる思想をもって正しくディレクションするのだろう。

新しい時代のハイエンドオーディオを牽引する

最後にジェフさんに、「すべてのオーディオファイルが“GOLDEN EAR”になることはできないかもしれませんが…それでも少しでもそれに近づくために、何をすれば良いですか?」と尋ねてみた。彼は少し考えてから、こう答えてくれた。

「まずは衝撃的な体験が必要です。私がWilson AudioやMonitor Audioから感じたような、人生を変えてしまうほどの音楽に出会うことです」。そして、「同じ楽曲を1000回でも、素晴らしい環境で繰り返し聴いてください。そして自分なりの音の評価軸を持ってください。繰り返し聴くことで、演奏者の位置関係も明確に見えてきますし、サウンドステージや奥行きについての理解も深まります。録音されたのが広いコンサートホールなのか、小さな音楽バーなのかでも違います。そうしてミュージシャンと対話するのです。それを繰り返すことです」。

オーディオは進化する。新しいテクノロジーとアイデアを持って、新しい時代の音楽鑑賞スタイルに適合していく。ストリーミングサービスとの融合は、まさにその最たる事例だ。

同時にオーディオは何も進化しない。プレーヤーが再生し、アンプが増幅し、スピーカーがそれを振動に変え、脳がその連続性を音楽として認識する。過去に失われた時間を、録音行為を通して凝固させ、イマ-ココに音として再現する。それは100年前から変わらない。

ドイツ・グラモフォンの社長が、125周年記念の際に述べていた言葉を思い出す。「変わり続けるものだけが、忠実でいられるのです」と。オーディオや録音の歴史から見れば、ネットワークオーディオというのはまだまだ若造の世界である。

創業15年を超え、さらに飛翔するaurender。「変えるべきもの」と「変えてはならぬもの」の両翼を見つめながら、鋭き眼光と強靭な爪でハイエンドオーディオの大空を切り裂く、高貴なる鷲の姿をみた。

(提供:エミライ)

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