これぞアニメーション!『マクロスプラス』4K UHD BD、現代の最高画質で蘇る手描きの極致
1994年から1995年にかけてオリジナル・ビデオ・アニメーション(OVA)として展開された『マクロスプラス』。全4エピソードにて発表されたOVA版を再編集し、新作カットを加えた総決算ともいえる劇場作品『マクロスプラス MOVIE EDITION』がこの度、「マクロスプラス -MOVIE EDITION- 4Kリマスターセット」として4K Ultra HD Blu-ray(4K UHD BD)でリリースされる。
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3月25日の発売に先立って開催された上映イベントでは、本アイテムの先行販売が実施された。そこでしっかり製品を購入させていただいたので、本稿では「35mmネガフィルムスキャン」と「4K UHD BD」という器の組み合わせによって、現代の最高画質で蘇る「手描きの極致」を、いくつかのシーンをピックアップして紐解いてみたい。
「これぞアニメーション!」ネガフィルムスキャンで表れる真の姿
セルアニメーションの限界に迫るほど濃密なメカ描写と、鮮烈なアクション作画が圧巻の本作。さらにそれを裏打ちするように、監督には後年『カウボーイビバップ』で名を馳せる渡辺信一郎、原画・絵コンテ・特技監督には庵野秀明、樋口真嗣、板野一郎など、錚々たるクリエイターが名を連ねている。
まずはYF-21の実技テストのシーン、チャプター5から見ていく。ガルドの駆るYF-21を狙い、画面を埋め尽くすミサイルが放たれる。その軌道をなぞる煙の描写は圧倒的で、板野一郎がラフ原画を務めたと明かしているパートだ。数えて13年前、2013年発売の「マクロスプラス Complete Blu-ray Box」収録ディスクと比較すると4Kリマスターの効果が非常に冴え渡る。
もちろん、これまで各メディアで発売されてきたパッケージの該当シーンも、その上限を攻めるべくエンジニアたちがベストを尽くしてきたことは明白だ。しかし、Blu-rayの映像最大ビットレートは約40Mbpsであるのに対し、4K UHD BDは約128Mbps。いずれもピーク時の比較ではあるものの、1秒間あたりのデータ量が約3倍以上となれば、すくい上げることのできる情報の差は圧倒的だ。
「35mmネガフィルムスキャン」で得られた、本製品のためのオリジナルデータも余すこと無く、鮮やかなアニメーションとして十全に描き出してくれた。
Blu-rayの1,920×1,080(フルHD)に対して、4K UHD BDの3,840×2,160という解像度の差も、潰れ感のない、激しく動く煙のディテールや動体解像度の鮮やかさに寄与している。
同作を唯一サブスクリプションサービスで配信しているDisney+でも、Blu-ray同様にフルHDでの配信はあるが、伝送ビットレートは通信環境に左右される要素。このシーンのような画面全体に動きのある場面だとブロックノイズなどが発生することもあるだろう。
階調表現の向上で見えてくる「本当の空」
本製品を購入したら「真っ先にでも確認したい」という方も多いと思われるのが、チャプター12収録のいわゆる「伝説の5秒」。板野一郎氏がセルアニメーションの限界に挑んだ、この作品の語り草であるところの劇場版の新作カット部分だ。しかし、マクロスシティで大喧嘩を繰り広げるチャプター10からこの流れなので、熱量が本当に凄まじい作品である。
緻密な作画を保ったまま高速で戦闘を繰り広げるYF-21と無人自立機ゴーストX-9とのドッグファイトはまさに圧巻。上記したYF-21の実技テストや、マクロスシティでのイサム搭乗のYF-19とYF-21の一騎打ちもかなり動きのあるシーンではあるのだが、まさに4K UHD BDの真骨頂がいかんなく発揮されるといったところ。これまでにない情報量で拝めることに感謝の言葉が尽きない。
また、ここまで記事内で触れたアクションシーンは、いずれもデイライトのシーンであるが、ゴーストX-9の登場シークエンスはいずれもナイトシーンであることを特筆したい。4K UHD化によって付されたHDRフォーマット(おそらくこれまでのバンダイビジュアル作品4K作品同様HDR 10の採用だろう)による明暗差の向上が顕著に表れる。
少なくともBlu-rayでは潰れる、背景と同化するということはなかったが、夜空を思わせるボディカラーのYF-21もHDRによる明暗の階調表現の向上や、4K UHD BDによる色域の拡大は、従来パッケージ比でナイトシーンにおいてもその存在感を際立たせている。
明暗の階調表現と色域の拡大は、もちろん動きのあるシーン以外でも効いてくる。イサム、ガルド、ミュンの3人が再会するシーン、大喧嘩を経て長年のわだかまりが解消されたイサムのYF-19とガルドのYF-21をつつむ薄明のグラデーション、その2機がテストフライトを行なう惑星エデンの濃く青い空といった情景がとにかく美しく描写される。
特に惑星エデンの濃い青をした空、その濃度が高い成層圏に近い部分は、当時の普通のアニメのデイシーンでは使えないような黒に近いような色を使用したとのこと。突き抜けるような青から黒への色の移ろいをより繊細に見られるようになっているのも4K UHD BDならではのアドバンテージといえる。
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VHS、LD、DVD、Blu-ray、そして今回の4K UHD BD(「しっかり数えてんじゃねぇよ!」という台詞が聞こえてきそうである)とメディアが変わる都度パッケージが発売されるのは、シリーズIPの強さもあるだろうが、より良い状態で「作品を所有してもらいたい」というリマスタリング担当者の熱量を注げられる、作品クオリティの高さも十二分にあるだろう。
惜しむべきらくは音声トラックだ。13年前の初のBlu-rayパッケージ化でDTS-HD Master Audio 5.1ch音声が追加されたように、今回の4K UHD BDではドルビーアトモストラックを新規作成してくれたのなら……と期待していた部分もあったが、スペック面ではBlu-rayと同一の仕様となっている。「過ぎたことは、忘れようぜ」として、一旦脇に置くこととしたい。
しかし映像は、これ以上は無いと思わせてくれる内容だ。視聴環境をお持ちの方は、ぜひお手に取ってその結晶をごらんになっていただきたい。
■製品概要
マクロスプラスMOVIE EDITION 4Kリマスターセット(4K ULTRA HD Blu-ray & Blu-ray Disc)(特装限定版)
品番:BCQA-0026/価格:11,000円(税込)
【Disc仕様】
UHD BD:約116分(本編約115分+特典約1分)
仕様:HDR/DTS-HD Master Audio(5.1ch)・リニアPCM(サラウンド)/HEVC/100G/16:9<2160p UltraHigh Definition>日本語字幕付(ON・OFF可能)
BD:約116分(本編約115分+特典約1分)
仕様:DTS-HD Master Audio(5.1ch)・リニアPCM(サラウンド)/AVC/BD50G/16:9<1080p High Definition>/日本語字幕付(ON・OFF可能)
発売・販売元:バンダイナムコフィルムワークス
