レポート執筆:山之内 正

VICTOR HM-HDS1 標準価格\188,000(税別)

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第4回<ハイブリッドレコーダーを使えばこんなこともできる〜徹底使いこなし編>

ハードディスクとS−VHSのハイブリッドレコーダーは、本機が最初の製品だけに、 いろいろと新しい機能が盛り沢山だ。今回は、本機だけの便利機能の数々をまとめて 紹介することにしよう。

録画したものがどこにあるかがすぐわかるナビ機能
テープのことを気にしないで録画できる便利さは、ハードディスクならではのものだ。 録画の前にテープを探す手間がいらないだけでも嬉しいが、エアチェックした後にも 便利さを実感する。テープだったらどこにどの番組を入れたのかを探すのが大変な作 業だが、ハードディスクなら、一目瞭然だ。

録画内容を表すHDDナビのサムネイル。登録にはこんな配慮がある
前回紹介したHDDナビ画面には、各番組について、録画を開始した位置の画面が静 止画(サムネイル)で登録される。この画面と録画日時のデータを見れば内容が一目 で分かる仕組みだ。 このサムネイル画像の表示にはちょっとした工夫がある。普通に録画ボタンを押して 録画した場合は、録画開始位置の画面が登録されるのだが、タイマー録画の場合は、 録画開始後10分経ったときの映像が登録されるのだ。民放チャンネルの場合は番組が 始まる前にCMが放送されるケースが多いため、そのままではCMの画像が登録され てしまう。10分ずらすことでそれを避けるという、親切な配慮なのだ。

録画内容を表すサムネイルの修正は、録画内容を左側の子画面で見ながら、登録したい場面を取り込む。

10分後には本編が始まっているのが普通だが、それでも登録されたサムネイルからは 番組内容がわかりにくい場合がある。そんなときのために、本機は、サムネイル画像 を変更する機能を積んでいる。 操作はとても簡単だ。HDDナビを呼び出し、修正したい番組を選んでから、「修正」 タグを選択。さらに「サムネイル修正」を選ぶと、上の写真のような画面が現れる。 左側の子画面を見ながら登録したい画面を探し、一時停止ボタンを押してから、OK を選択。登録された画面が右側の子画面に表示される。サーチ機能が使いやすいので、 登録したい画面を簡単に探すことができる。番組のタイトルが表示されている画像を 登録しておけば、一目瞭然でわかりやすい。

サムネイル修正機能は VHSナビでも使える
このサムネイル修正機能は、VHSナビでもまったく同じように使える。また、前回 紹介した簡単保存機能を使ってハードディスクからVHSにダビングした場合は、登 録済みのサムネイル画像も、そのままVHSナビに移行するようになっている。この 機能があるだけで、本機のVHSデッキの使い勝手は格段に向上しているといってよい。

HDDナビのタイトル修正画面。英数字を選んでタイトルを入力する。

サムネイルとともに番組検索をサポートする便利な機能が、タイトルとジャンルの入 力機能だ。特にジャンルを入力しておくと、VHS側でジャンルを指定しての番組検 索が利用できるようになり、とても便利になる。 入力はサムネイルの場合と同様にナビ画面から行う。タイトルは、画面に表示される 英数字キーを使って入力する方式。カナ文字や漢字が使えないため、英語かローマ字 で入力しなければならない点がちょっと残念だ。次のモデルでは日本語対応を望みたい。

HDDナビのジャンル修正画面。あらかじめ設定された16ジャンルの中から選んで登録する。

ジャンル登録は、あらかじめ設定されている16ジャンルのなかから該当するものを選 択する方式。スポーツ、音楽、映画といったジャンルが並んでいるが、新たなジャン ルを登録する機能は積んでいない。入力操作はタイトルよりもずっと簡単で、慣れれ ば一番組につき10秒ほどで入力が完了する。

サムネイルはHDDに記録した番組を検索する際に特に役に立ち、タイトル、ジャン ルの各情報は、VHSに記録した番組を検索するときに威力を発揮する。HDDから ダビングした場合だけでなく、直接VHSに録画した番組についても情報を登録でき るところが、この機能のポイントだ。本機を使えば、長年の課題だったテープの集中 管理が実現できるかもしれない。他機で録画したテープにもこの機能が利用できるよ うになると理想的だが、テープ全体に識別情報を記録する必要があるから、これはちょ っと無理かもしれない。

予約録画機能もこんなに便利だ
次に、本機の予約録画機能に注目してみよう。ハードディスクとVHS、2台分のデッ キを積んでいる本機は、予約プログラム数が16番組とたっぷり確保してある。予約方 法は、もちろんGコード予約と通常予約の両方に対応。予約設定画面はGUIが工夫 されていて、とても見やすい。

録画予約の設定画面。GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)が見やすいので、簡単に設定できる。

ハードディスクならでは。手軽な上書き録画
ハードディスクならではの機能として注目したいのが、毎週または毎日放送されるレ ギュラー番組を更新しながら録画する機能だ。一度見てしまえば保存する必要はない という番組は多いが、外出などで見逃してしまうことも少なくない。定時予約の際に は、テープ入れ忘れという失敗も起こりやすい。

本機の更新録画機能は、ハードディスク上にあらかじめ一定の領域を確保し、そこに 繰り返し上書き録画していくというもの。録り忘れの心配がないし、上書き方式だか ら見終わった部分は自動的に消去される。テープの場合は繰り返し録画でも頭出しの 操作が必要だが、ハードディスクならその手間が一切かからないのだ。

CMを飛ばして見たいときに使える、こんな機能
VHS側では予約録画時にCMをカットするオートCMカット機能が利用できるが、 HDD側にはこの機能はない。だが、HDDにはもっと便利な機能が用意されている。 再生時に動作するオートCMスキップ機能をオンにしておけば、モノラル音声の番組 中に放送されたステレオ音声のCMを、自動的にスキップしてくれるのだ。スキップ の動作自体、テープとはまったく異なり、瞬時に次の場面に切り替わる。この機能を オンにして再生していると、CMの存在そのものに気付かない。

HDD側で「オートCMスキップ」を「入」に。再生するとCMそのもの がなくなったかのように瞬時にスキップする。

オートCMスキップは、時間差再生時にも動作する。この機能を利用すると、CMを まったく見ないでドラマや映画を楽しむという離れ技も可能だ。

60分枠の番組の場合、CMを除くと番組本編は実質的に45分程度しかないことが多い。 その分を計算し、オートCMスキップをオンにした状態で時間差再生を行えば、本編 だけを効率的に見ることができる。方法は簡単だ。まず、見たい番組が始まったときに本機の電源を入れておく。ただし、 実際に番組を見始めるのは、その10分後ぐらいから。もちろん、時間差再生を利用す る。この方法で、CM部分だけを自動的にスキップし、本編だけを見ることができる のだ。 CMに入る直前、一瞬本編の音声が切れたり、CMの最初の画面が一瞬表示される場 合もあるが、いずれにしてもあっという間のことで、まったく途切れることはない。 ほんの少しだけ時間をずらすだけで、CMを一切見ないで番組を楽しむことができて しまう。

存在が見えなくなってしまったCMは、実際にはハードディスク上に記録さ れている。サーチモードに切り替えると、本来は再生されるはずのCMがたくさん並んでいるのがわかる。

ステレオ放送の番組など、オートスキップが使えない場合は、本体のCMスキップキーを押すと、30秒単位でスキップすることができる。この場合も動作は実に快適で、まったく待たされることなく、次のシーンがすぐにスタートする。2回押せば1分、4回 押せば2分間だけ先に進むので、本編を見ているときにも便利に使える。これとは逆に、ワンタッチで7秒前に戻るという「チョット見バック」機能もある。 これは野球、ゴルフ、サッカーなどスポーツ番組で威力を発揮する。決定的瞬間を見逃したときなどに便利だ。

ハードディスクレコーダーの凄さ、そしてS-VHSを組み合わせることの大きなメリットを実感
ハードディスクレコーダーは、テレビを見るスタイルそのものを変えてしまうほど、 大きな可能性を秘めている。だが、ハードディスク単体で使うよりも、他の録画メディ アと組み合わせた方が、その可能性をフルに引き出すことができる。特に、S−VH Sを組み合わせるメリットは予想以上に大きかった。今回の視聴では、そのことをあ らためて実感することができた。

さて、本機に内蔵しているハードディスクは、20GBの容量をそなえている。VHS との連携プレーに慣れると容量不足を感じることはないのだが、記録時間には余裕があるに越したことはない。テレビを見る時間が長いヘビーユーザーなら、少なくとも 現在の2倍前後、LPモードで20時間は確保しておきたいという場合もあるだろう。

そんな声を予想して、ビクターは、本機のユーザーを対象にハードディスクの交換サー ビスを検討中だ。実現は来春以降になる見込みだが、最低でも2倍の40GB、場合に よってはそれ以上の大容量ドライブに載せ換えることも検討しているという。増設で はなく交換なので、HDDに記録している番組は自分でバックアップしておく必要があるが、VHSナビの情報はドライブ交換時にそのまま移行されることになるだろう。

筆者:山之内 正(やまのうち ただし)
『オーディオアクセサリー』『AVレビュー』の編集に十余年携わった後、評論に転 向。ピュアオーディオから、PCを駆使したネットワークオーディオ、シリコンオー ディオ、デジタルビデオ編集までの高い知識と経験を持つ。自らも楽器を演奏、音楽 を愛する多彩な評論家である。