レポート執筆:山之内 正

VICTOR HM-HDS1 標準価格\188,000(税別)

VICTORホームページ http://www.jvc-victor.co.jp

ハードディスクとS-VHS。なんとこの異なる2つの記録媒体を複合させたという画期的 な製品が、日本ビクター(株)から発表された。これが世界初のハイブリッドレコー ダー「HM-HDS1」である。

ハードディスクとS-VHSが複合、と一口に言っても、それは具体的にどんなものだろうか。さらに、使い勝手などはどうなのだろうか。---さまざまな期待を胸に、ファ イル・ウェブでは、今週から4回にわたってハイブリッドレコーダーに密着。この画 期的な製品の魅力を明らかにするべく、さまざまにレポートしていく。

まず第1回目は、ハイブリッドレコーダーが誕生した背景と、ハイブリッドレコー ダー 「HM-HDS1」の具体的な内容について解説しよう。
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第1回<デジタルレコーダーの現状とハイブリッドレコーダーの登場>

デジタルレコーダーは、こんなに多様化している

ホームビデオの世界が、いま大きく変わろうとしている。ここでも変化のキーワード は「デジタル」だが、一口にデジタルレコーダーと言っても、記録するメディアの種類によって複数の方式が存在する。

それらを家庭用録画機として登場した順に並べると、DV、D−VHS、DVD−R W、DVD−RAM、そしてハードディスクと、なんと5種類もある。このなかでD V以外はMPEG2という圧縮方式を使っている点で共通だが、圧縮方式が同じでも メディアが異なるので、互換性はない。デジタルレコーダーの世界は、活況を呈して いるともいえるし、混沌としているともいえる。とても複雑な状況になっているのだ。

デジタルレコーダー、メディアごとの特徴は?

どの方式にどんなメリットがあるのか、簡単に整理してみよう。メディアの種類で見 ると、デジタルレコーダーはテープ、光ディスク、ハードディスクの3種類に分けら れる。このなかで、まずテープと光ディスクのメリット、デメリットを比べてみよ う。

<テープ>
テープの優れたところは、長時間記録ができ、記録メディア(ビデオテープ)の価格 が安いことだ。DVはカメラ用途に集約されつつあるから、家庭用ビデオとしては、 D−VHSが主流になるだろう。D−VHSは、録画メディアとしては、相当に強力 だ。ハイビジョン番組のデジタル録画という離れ技は他のデジタルレコーダーでは真 似できないし、VHSという、世界標準のビデオフォーマットと互換性があることも、 大きなメリットのひとつだ。

テープの一番の弱点は、番組の頭出しに時間がかかることだろう。高速メカの実現で 昔に比べると随分高速になったが、光ディスクやハードディスクが登場して、遅さが 目立つようになってしまった。

<光ディスク>
それに対して光ディスクのメリットとデメリットは、まさにテープの長所と短所の裏 返しだ。アクセスがはやく瞬時に頭出しができるが、録画時間が短く、メディアの価 格が高い。またいまのところBSデジタル放送をデジタルのまま録画する機能も実現 できていない。

<ハードディスク>
次に、ハードディスク方式のレコーダーの長所と短所を考えてみよう。まず、ハード ディスクは、光ディスク以上にアクセスが速い。記録しながら同時に再生するという 芸当は、いまのところハードディスクでしか実現できないし、これからも多分無理だ ろう。このユニークな機能は、ハードディスクの書き込み/読み出し速度が、他の記 録メディアに比べて圧倒的に速いからこそ、実現できたものだ。

ハードディスクの短所は、記録できる容量に限りがあることだ。一時的に保存してお くならともかく、長期にわたって残しておきたい番組は、テープやディスクなど、取 り出しできるメディアにダビングしなければならない。これは、ハードディスクの容 量を多少増やしたぐらいでは解決しない、基本的な性質だ。

光ディスクとテープの長所と短所が裏返しの関係にあると書いたが、ハードディスク とテープの間の関係にもそれが当てはまる。むしろこちらの方が、完全な対称関係にあるといえるだろう。

だったら、メディアの長所を合体すればいい。超強力なレコーダー登場!

このように単独で完結する記録メディアが存在しないなら、2つの方式を組み合わせ ることで、両者の短所を補完し合う強力なデジタルレコーダーが完成する。組み合わ せのパートナー関係は3種類。すなわち、テープと光ディスク、ハードディスクと光 ディスク、そしてハードディスクとテープのコンビネーションが考えられる。

このなかで、現在最も可能性があるのはどの組み合わせだろうか?記録時間、普及度、 価格、画質、使いやすさなど、いろいろな要素を考え合わせてみると、落ち着くとこ ろはひとつ。ハードディスクとテープの組み合わせだ。

長所と短所がちょうど対称関係にあるので、互いに相手の短所を補うというのも重要 だが、やはり、テープ、それもS−VHSなら技術の完成度の高さと普及率の高さ が、大きくものをいう。一度だけ見ればOKという番組はハードディスクに次々に記録 し、手軽に再生。保存しておきたい番組は、ハードディスクからテープにダビングすれば よい。他のデッキで再生することもできるし、家族や知人に見せるときにも互換性の心配はない(光ディスクの場合は、この点が問題になる)。考えただけでも、とても便利に使えそうだ。

ビクターは、この組み合わせで実際に製品を真っ先に発売した。その名もハイブリッ ドレコーダー、ハードディスクとS−VHSを組み合わせた「HM-HDS1」である。 “ハイブリッド”という名は、2つのメディアの組み合わせによる“新しい価値”を 狙ってつけられたもの。その新しい価値こそ、この新形態のレコーダーの真価を理解することにつながるわけだ。

これがビクターの「HM-HDS1」!

<ハードディスク>
その真価に迫る前に、まず本機の概要を紹介しておこう。本機が内蔵するハードディ スクは、容量20GB。可変ビットレート(VBR)方式の“MPEG2”を利用して、最長20時 間の録画に耐え得る。録画モードは4種類あって、SP(約7時間)、LP(約10時間)、 EP(約14時間)、SEP(約20時間)。SPとLPの場合静止画時の水平解像度は520本に及 び、これは十分高画質として常用できるレベルである。

<S-VHS>
一方のS-VHSデッキの部分も、クオリティ重視の設計だ。ビクターの高画質技術であ る3次元&TBC回路を採用、アフレコ機能を搭載しており、単体のS-VHSデッキとしても 遜色のない内容である。

<ハードディスクとS-VHS、複合のメリット>
時間差再生、相互ダビング、番組保存ナビなど、ハードディスクでなければ実現でき ないこと、2つのフォーマットを組み合わせなければできない機能が満載されている。 本機を導入すれば、ビデオの見方、いやテレビの楽しみ方そのものが、大きく変わるはずだ。

「HM-HDS1」のおもな機能

これがHM-HDS1のリモコン。ハードディスクもS-VHSも、これ1本だけで操作できる。

フロントパネルには十字キーが。ナビ画面に対応させて、機能を実行。

端子の並ぶ背面。S端子入力2、出力2、コンポジット入力2、出力2と豊富である。


時間差再生
ハードディスクでの録画が途中まで進んでいる時や予約録画中でも、録画を続けなが ら番組の始めや少し戻したところからの視聴や、ハードディスクに受信中の番組の一時停止やさかのぼっての再生も可能な機能。

HDD同時録画再生
ハードディスクでの録画中に、ハードディスクに録画済みの別の番組が再生できる機能

おまかせ毎週録画
毎週(毎日)放送されている帯番組を、ハードディスクに自動的に上書き録画する機能

番組保存ナビ
残したい番組をサムネイルの画面で選ぶだけで、ハードディスクに録画した番組をS-VHSへ簡単にダビングできる機能

ハイブリットナビ
ハードディスクに記録してある複数の番組の画面をサムネイル表示して、見たい番組を瞬時に探せる機能

360倍速マジックサーチ
ハードディスクに録画した番組をノイズレスで高速サーチでき、シーン探しがすばやく行える機能(1時間番組を最短10秒でサーチ可能)

次回はさっそく、HM−HDS1を使って実際に詳しく機能を検証してみよう。