5000円台でトレンドをすべて盛り込んだSOUL渾身のノイキャンヘッドホン「ULTRA WIRELESS X」
近年、1万円を切る価格帯で気を吐くブランド、それがSOULだ。創業から一切ブレることなくビートを心地よく楽しむ低音重視の音づくりを継承し、近年は最新SoCを採用した安定性や高機能も実現している。「ULTRA WIRELESS X」は、そうしたSOULらしさを強く感じる逸品。5000円台で買えるが、価格以上の実力を岩井 喬氏が明らかにしよう(編集部)
いまほしい高機能と矜持を感じる音づくりが魅力
低音の量感や再現性にこだわってきたイヤホン/ヘッドホンブランドはこれまでにいくつも誕生しているが、その中でもアメリカ発のブランドとして知られるのがSOULである。SOULは2010年に誕生し、翌年には日本にも導入され話題となった。その特長といえるのが低音重視のSOULレファレンスカーブであり、現在に至るまで同社製品の音づくりの要として、脈々と受け継がれている。
パワフルかつ深い低音再生能力と、歌モノやメイン楽器の明瞭さを引き出す中高域のクリアさを追求した音質面に加え、量産効果による圧倒的なコストパフォーマンスの高さ、外出時でもかさばりにくいコンパクトさと、人間工学に基づいてデザインされたスマートな装着性が人気の秘訣だろう。“ULTRA WIRELESSシリーズ” はまさにSOULらしさが結集している。
そして2025年、シリーズの新製品として誕生したのが「ULTRA WIRELESS X」である。ハイブリッドANC機能を搭載するワイヤレスヘッドホンで、様々なファッションとの親和性が高い、白/黒/グレーという3色を用意。
機能面では映像/ゲームコンテンツを楽しむうえで重要な低遅延エンタメモードも搭載する。質量も250gを切る軽量さであり、普段使い用として屋外/屋内ともに楽しめる設計となっている。再生時間はANC機能ONで35時間、OFFなら最長60時間も連続再生というロングバッテリー仕様だ。内蔵するドライバーユニットは40mmダイナミック型で、コーデックはSBCとAACに対応する。
サブベースの音はズンズン! 中高域もクリアに抜ける
ANCの効き具合はエアコンやバス/電車の車内騒音を軽減する低域方向に対して強く反応する傾向だ。効果量の調整はできないが、外の騒音を適度に抑え、小音量再生でもボーカルのニュアンスや楽器の粒立ちを豊かな低音と共にバランスよく聴かせてくれる。
サウンドはまずANC機能を入れた状態でチェック。SOULらしい力強くドライブ力のあるベースサウンドが前面に押し出されているが、ボーカルのクリアさ、口元の輪郭感はハリよく際立ち、豊かな低域に埋もれるようなことはない。
クラシック音源を聴いていても管弦楽器の旋律の爽やかさ、ヌケ感はしっかりと保たれており、ローエンドにかけての密度の濃い描写、木管パートのふくよかさなど、中低域にかけての量感のリッチさも心地よく感じられる。
特に近年のトレンドとして、洋楽/邦楽とも30 - 40Hz近辺のサブベース領域における表現を積極的に盛り込んだ楽曲が多くなっており、本機のように低域表現を得意とする製品にとっては “水を得た魚” のごとく、楽曲の世界観との相性のよさを実感できるだろう。
また一般的にANC機能を入れた状態はいずれの製品も低域の量感が増える傾向にある。そのためANC機能を切ると低域が適度に引き締まり、全体的に硬質でキレ味が増すサウンドとなる。
しかしSOULならではの低域の深み、伸びやかさはOFFの場合でもしっかりと残っており、持ち味を生かしながら、フォーカス感を高めた音も楽しむことができる。ニュートラル基調が好みの場合や、静かな環境で楽しむ場合の “音変” としてもお薦めだ。
[SPEC]
●通信方式:Bluetooth Ver.6.0 ●対応コーデック:SBC、AAC ●連続再生時間:約60時間(ANC OFF時)/約35時間(ANC ON時) ●質量:約246.5g ●付属品:USB Type-C充電ケーブル、3.5mmヘッドホンケーブル
(協力:SOULNATION、撮影:阿部良寛)
※本記事は「プレミアムヘッドホンガイドマガジンVOL.23」所収記事を転載したものです
