Beatsの新スタンダードイヤホン「Powerbeats Fit」を聴く。「Powerbeats Pro 2」との違いは?
Beatsのブランドから、新たなワイヤレスイヤホン「Powerbeats Fit」が誕生した。ワークアウトやランニングなど、アクティブに身体を動かしながらオーディオコンテンツを楽しむシーンに最適な、柔らかいシリコン製のウィングチップを採用するコンパクトなワイヤレスイヤホンだ。実機をレビューする。
Beats「Powerbeats Fit」「Powerbeats Pro 2」を比較レビュー
Beatsは今年の2月に、シリコン製のイヤーフックによる安定したフィット感を特徴にうたうワイヤレスイヤホン「Powerbeats Pro 2」も発売している。対するPowerbeats Fitは外耳のくぼみにウィングチップを固定して、シリコン製のイヤーチップと合わせて装着状態を安定させるデザインだ。
製品の名前を「Beats Fit Pro」から変更し、Powerbeatsシリーズに統一した。背景には、アクティブなリスニングシーンに強いBeatsのイヤホンという印象をより鮮明に打ち出そうとする狙いも垣間見える。
Powerbeats Fitの価格は、Powerbeats Pro 2よりも7,000円ほど安価で手頃な32,800円(税込)だ。Powerbeats Pro 2はアップルが設計した上位のBluetoothオーディオ向けチップであるApple H2を搭載するが、Powerbeats Fitに採用されているのは一世代前のApple H1チップだ。
Powerbeats Pro 2との大きな違いは心拍数モニタリングセンサー、ワイヤレス充電ケースがないことだ。かたやPowerbeats FitもANCと外部音取り込みモードを備え、iPhoneに組み合わせるとダイナミックヘッドトラッキングを効かせた空間オーディオ再生も楽しめる。
Powerbeats Fitは手のひらに心地よく収まるコンパクトな充電ケースを採用していることが、ひとつ良いポイントに挙げられる。イヤホン本体はIPX4相当の防滴仕様。この点はPowerbeats Pro 2と変わらない。
バッテリーのスタミナは、イヤホン単体で最大10時間の連続再生に対応するPowerbeats Pro 2に軍配があがるものの、Powerbeats Fitも最大7時間の再生が可能。日常的には不自由を感じない。高速充電のFast Fuel機能は、5分の充電で最大1時間の再生分のバッテリーをチャージできるので安心だ。
両モデルの音質傾向の違いは?
Powerbeats Fitのサウンドを試聴した。比較のためにPowerbeats Pro 2も用意した。
音を聴く前に、Powerbeats Fitの設定からイヤーチップ装着状態テストを行った。iPhoneの場合は設定アプリから、AndroidはBeatsアプリをダウンロードするとテストが行える。静かな場所でないとテストができないので注意したい。筆者はサイズが4種類あるイヤーチップの中からLサイズを選ぶと、良好な消音効果が得られ、装着状態も安定した。
楽曲はApple Musicで配信されている宇多田ヒカルのアルバム『DEEP RIVER』(2018 Remastered Album)から「traveling」。Powerbeats Fitはボーカルの距離が近く、バンドの演奏との一体感がタイトに引き締まっている印象だ。ベースラインの打ち込みが鋭く量感も豊かだ。音場はPowerbeats Pro 2の方が縦・横にいっそう広がる手応えがある。
Powerbeats Fitのもうひとつの持ち味は潤いあふれるボーカルと、輪郭が太く描かれる楽器の鮮やかなメロディ。ワークアウト等で身体を動かしながら聞くサウンドとしては、Powerbeats Fitの熱いグルーヴ感を好む方も少なくないと思う。
ヒラリー・ハーンの演奏による『パガニーニ:24の奇想曲 第24番』を空間オーディオで聴いた。バイオリンの艶っぽい音色をPowerbeats Fitは誇張しすぎることない程度に楽しく再現する。高音のきらびやかなイメージと、ふんわりとした余韻も心地よい。低い音域の音色を、Powerbeats Pro 2よりもどっしりと響かせる。
Powerbeats Fitのノイキャン性能もチェック
ANCの効果も確かめた。Powerbeats Fitはウィングチップを正しくフィットさせると、ノズルからイヤーチップが深く耳の奥に固定される。それだけでパッシブな遮音効果がかなり高い。
ANCをオンにすると、カフェのBGMがすっと消えて静寂に包まれる。ヒラリー・ハーンの演奏に深く没入できた。消音効果そのものはPowerbeats Pro 2よりも少し強めに感じられる。屋外で使う場合、特にジムなど周囲に人が大勢いる場所では外部音取り込みモードに切り替えて、上手く使い分けたい。なお、外部音取り込みモードは、アップルの「AirPods Pro」に負けないほど環境音がクリアに聞こえる。
Powerbeats Fitを試しながら、改善を望みたいポイントもあった。本体の側面がクリックして押し込むリモコンになっている。このリモコンの感度がやや鋭いため、イヤホンを着脱する時に誤って触れて、音楽コンテンツの再生・一時停止が実行されてしまうことがある。
イヤーチップを耳に挿入してから本体をひねり、ウィングチップを固定している最中にもよくリモコンに触れてしまった。使い慣れるまでに少し時間がかかるかもしれない。
筆者は今回、4色あるPowerbeats Fitのカラーバリエーションから「スパークオレンジ」を試用した。iPhone 17 Pro/Pro Maxのコズミックオレンジにもよくマッチするエネルギッシュなカラーだと思う。
Powerbeats FitをiPhoneやiPadにペアリングすると、空間オーディオに加えてダイナミックヘッドトラッキングも使える。シアター鑑賞にも最適だ。ANCの遮音性能が高く、充電ケースもコンパクトなイヤホンなので、この次に飛行機に乗って旅する時にはぜひ本機を持ち出したいと思う。
本機をスポーツタイプのワイヤレスイヤホンと定義してしまうのは少し勿体ない気がする。耳にしっかりとフィットするので、外出時に落として紛失する心配からも解放されるだろう。Beatsの新しいスタンダードモデルになるワイヤレスイヤホンだ。
