ネットワークアクセサリーが世界を救う!? iFiの新ブランド・SilentPowerが立ち上がった背景とは?
ネットワークオーディオの先駆者として、数々のプロダクトを送り出してきたイギリスのiFi audio。SilentPowerは同社が「静寂」を追求する中から生まれた新しいブランドであり、主に電源、ノイズ対策アクセサリー関連製品を再編成したものとなる。
なぜ彼らはアクセサリー類を再編成することにしたのか、同社のグローバルセールス担当マイルス・ロバーツ氏にその背景、そしていま日本市場で最も熱いジャンル、光アイソレーターLAN iPurifier Proについて教えていただいた。
太陽光発電システムにアクセサリーが大活躍!
マイルス氏は、長年プロ向けオーディオ製品の欧州セールスを担当したのちに、英国スピーカーブランド・PMCのマネージャーに就任。2010年からiFi audioにジョインして、全世界のセールスを担当している。
SilentPowerを分離した理由について尋ねると、ちょっと予想外の興味深い答えが返ってきた。
「下の写真を見てください。こちらはアメリカのネバダ州にある大規模な太陽光発電システムです。19億ドル(約2700億円)をかけた巨大プロジェクトでしたが、当初このシステムがうまく稼働しなかったのです。それは、中央のデータセンターと、個々の太陽光パネルがうまく接続しないことに原因がありました。そこで、その接続に私たちのiSilencerを入れたところ、システムがきちんと動くようになったのです!」。
「ネットワークケーブルは、それぞれの施設の下に敷設されていますが、そこに1個ずつiSilencerが活用されています。このプロジェクトは、1000個以上のiSilencerを注文してくれました。この小さなアイテムが、19億ドルのプロジェクトを救ったのです」。
にわかには信じられない壮大な話だが、iFi audioのチームは自分たちのノイズ対策技術に大きな自信と手応えを得た。そこで、“新市場の開拓” を見据え、SilentPowerを別ブランドとして分離した、というのだ。
これまでオーディオ市場は、別ジャンル、たとえば軍需や医療、航空機などで活用されてきた技術を応用することで、さまざまな音質対策を練り上げてきた。逆にオーディオ市場で培われた技術がネットワークの世界で活用されるというのは、非常に夢が広がる話でもある。まさにiFi audioの高い技術力を示すエピソードである。
クリーンなネットワーク環境の構築が音質の鍵
SilentPowerとしては、今後ネットワークや医療、データセンターなど新しい市場への開拓にも力を入れていくそうだが、あくまで土台が “オーディオ市場” にあることは今後も変わらない。続けて、最新の光アイソレーターについて教えてもらった。
「ネットワークは私たちの生活に不可欠のものになっています。IoT家電は日々増え続け、ネットワークにノイズをもたらしています。デジタルの世界におけるノイズそのものは、実はさしたる問題ではありません。しかし、それがアナログに変換されて、音となると、さまざまな歪みをもたらします。LAN iPurifier Proは、クリーンなネットワークを構築するために開発されたプロダクトとなります」。
LAN iPurifier Proの技術のポイントは後述の3点。入出力ポートのトランスでノイズを減らしている点。内部で一度光ファイバーに変換して(彼らはガルバニック・アイソレーションと呼んでいる)、再びメタルに戻している点。そしてもうひとつが、信号のリクロック/リジェネレート(再生成)を行っている点である。光アイソレーター製品は世界中のブランドから登場してきているが、この3つの技術をトータルにコントロールしているのはSilentPower製品だけだ、とマイルス氏は大きく胸を張る。
「LANケーブルを接続するだけで使用できる、シンプルな使い勝手もポイントです。IPアドレスの設定といった面倒なことは必要ありません。ですが、繋ぐとすぐにこの音質効果を感じていただけると確信しています」とマイルス氏は力強く訴える。
さらに今後は、光アイソレーター機能とネットワークハブをまとめた「OMNI LAN」という製品も展開予定。もしかすると今後、大規模データ処理等で培われた知見が、オーディオにも展開されてくるかもしれない。
マイルス氏の話からは、世界のトップランナーとしてのiFi audioブランドに大きな誇りを持っていることが伺えた。「私たちはフォロワー(追従者)ではありません。世界初の製品を生み出していく、テックカンパニーであり続けたいと考えています」。時代の先端を走り続ける、信念の強さを持つブランドであるとの思いを新たにした。
(提供:エミライ)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.197』からの転載です

