AEX2025受賞:ティアック 加藤徹也氏
【インタビュー】エソテリックとティアック、進化し続ける2ブランド。世界にアピールする技術力でオーディオを推進
オーディオ銘機賞2025
受賞インタビュー:ティアック
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる “真の銘機” を選定するアワード「オーディオ銘機賞2025」において、エソテリックおよびティアックの各製品が数々の重要賞を受賞した。2024年4月にプレミアムオーディオ事業の新組織を設立して2ブランドの展開を集約、国内そして世界各地へと活躍の舞台を広げるティアック株式会社。事業を指揮する加藤徹也氏が、受賞に際して昨今のさまざまな取り組みと手応えを語ってくれた。
■エソテリックのフラグシップSEシリーズ
―― オーディオ銘機賞2025において御社は、金賞、特別大賞、ネットオーディオ大賞と、非常に重要な賞を多数受賞されました。誠におめでとうございます。まずはご受賞に際しての所感などいただけますでしょうか。
加藤 誠に有難うございます。大変嬉しい思いでおります。金賞を頂戴しましたK-01XD SEは、エソテリックブランドの最新型SACDプレーヤーです。ウルトラハイエンドであるGrandiosoシリーズの技術の数々を踏襲しました。P1X SEやK1X SEでおなじみのエソテリック独自のVRDS-ATLASドライブメカと、D1X SEの技術を継承するMaster Sound Discrete DACを搭載。今回SE化に際して、クロックをディスクリート回路化し、DACのアナログ回路を刷新しました。
オーディオ銘機賞の審査員である評論家の方々やご販売店様を試聴室にお呼びした際に、K-01XD SEやネットワークDACのN-01XD SEを、旧モデルK-01、N-01と聴き比べするデモも行いました。そこで皆さんの顔がほころんだ瞬間が非常に嬉しかったですね。私たちが追求してきたものが、音楽を聴く方にとっての嬉しい進化になったとあらためて感じることができました。フォノイコライザーのGrandioso E1についても今回、MCカートリッジの「バランス電流入力」や光カートリッジへの対応など、弊社に取っては全く新しい技術にチャレンジし、「今まで聴いたことの無い音が出ている!」と評価いただくこともあり、デジタルに強いエソテリックのイメージを進化させることができました。
開発に際しては常日頃から、“演奏” に迫ることを目指しています。オーディオで音楽を聴く時、一聴でオーディオを再生しているとわかってしまうのではなく、歌い手がすぐそこで自分のためだけに歌ってくれているようだと言われたいんですね。究極的に目指しているのはそういうことで、カテゴリーや価格帯を問わず、一貫してそういう思いで取り組んでいます。
―― オーディオ銘機賞で御社の製品は例年注目を集めていますが、今年はそれ以外にも大きな話題がありましたね。ティアック株式会社とエソテリック株式会社、別会社であった2つが1つになりました。その後の展開はいかがでしょうか。
加藤 以前にもお話をさせていただきましたように、コンシューマーオーディオの分野でエソテリックとティアックの2つのブランドをさらに強化する。そのための施策として別会社であったエソテリック株式会社を、ティアック株式会社に吸収合併しました。そしてこの4月からティアック株式会社のもとに設立したプレミアムオーディオ事業部で、私が事業部長を拝命して2つのブランドを展開しています。
1つの組織になったことによって、2つのブランドをスムーズに補い合いながら展開できるようになりました。エソテリックは最高峰の位置付け、ティアックはより身近なハイエンドの位置付けですが、エソテリックの製品開発で新たに得られた技術的な内容を、ティアックブランドの製品にも踏襲していく。これまでも行ってきたことがよりやりやすくなりました。
性格の異なる2つのブランドが存在すれば、その分お客様の選択の幅が広がります。そしてどちらのブランドを選んでいただいても、私どもが目指す実演奏に迫る音楽再生というものを実感していただけると思っています。エソテリックはオーディオファイルのコアなお客様をターゲットにしていますが、ティアックのターゲットは少しずつ変化するところがあります。ワールドワイドの展開においては、地域ごとにマーケットの状況を見て、競合ブランドがどの価格帯でどんな商品を出しているかを分析し、そこで勝負できる要素を設定していくのです。特に中級とされる価格帯の製品をもつティアックにとって、エソテリックの技術的なバックボーンの存在は非常に強みとなります。高度なクオリティを追求し続けることは、市場で存在感を示すために重要なことです。
―― 今回新たな組織体制となった際、営業面において、国内は専門店さんに強いエソテリックの部隊がティアック製品もアピールしていくとお聞きしていました。手応えはいかがですか。
加藤 営業体制についてはおっしゃるとおり、専門店様に対してティアックブランドもエソテリックと同様にアピールできるようになっています。よりコアなお客様にマッチする価値を訴求できていますし、この価格帯で最高のバリューを持つ商品展開ができていると自負しています。昨今国内のオーディオ製品の選択肢が少なくなっていますが、ティアックがここに加わり、専門店様でお試しの機会をつくっていただくことによって、お客様に選ぶ楽しさを味わっていただきたいですね。
そういう意味でも、ご販売店様の専門的なアドバイスはお客様にとってますます重要です。私どもとしても販売のプロの方々と二人三脚でやっていけなければ、お客様に本当の意味で楽しんでいただく領域まで到達できません。オーディオ機器をネットで購入されるケースも多いですが、そうした方々が機器の実力を100パーセント引き出せず、こんなものか、とがっかりされているとすれば非常にもったいないことです。機器がもつ本来の実力を味わっていただくためにも、お客様にリアルの販売店様との接点をもっていただきたいですし、私どももその後押しをさせていただきたいと思います。
―― 昨今のオーディオの市況については、どのようにご覧になっていますか。
加藤 国内のオーディオ市場を取り巻く状況は困難です。ご存知のとおり、商品の値段が高額になっていますが、ワールドワイドで日本だけが物価や給与の面で他の国々と足並みが揃っていない。日本のお客様にとって、オーディオは身近な趣味ではなくなってきつつあり、お客様との隔たりをどう埋めていくか、当社だけでなく他社さんも頭を悩ませておられるかと思います。
ワールドワイドでは、円安もあって日本のオーディオの価格は製品のクオリティに対してバーゲンプライスという言われ方をすることもあります。アジアの経済が発展している地域はかなり元気ですので、エソテリックの価格はそういったところでは受け入れられやすく、むしろ安価だと受け止められているのです。
エソテリックのターゲットであるコアなオーディオファイルのお客様の数に大きな変化はないですが、経済が活況になっているベトナムや中国、香港などに新たなお客様が多くいらっしゃいます。いわゆるニューリッチと言われる方々で、東ヨーロッパのお客様層も同様です。東南アジア、中国といった成長著しい市場は、若い人たちにどうアプローチするか、ラグジュアリーの市場にどうやって入っていけるかも課題です。マーケティングの手法もよりゼネラルな感じで、SNSでの展開がやはりポイントです。
―― 御社では昨今SNSマーケティングの取り組みにも注力されていますね。
加藤 専任のマーケティングエージェントが入社して体制が整いました。海外、北米/ヨーロッパの英語圏のみならず、中国語圏においてもSNSのコンテンツ作りはうまくできているかと思います。
成長著しいアジアと比較して、アメリカやヨーロッパといった市場が成熟している地域は、日本と同様にコア層へのアプローチが欠かせません。現地の担当者が販売店と一緒にお客様のご自宅を訪問するなど、日本と変わらない地道な営業スタイルを重視しています。またローカルなイベントに注力して、地域の販売店様との連携で購買を予定しているお客様を連れてきていただくといった活動も効果的だと思っています。アメリカは広大で、獲得できていないお客様がたくさんおられますから、この4月から広報宣伝のエージェントを新しく契約しました。SNSだけでなく、あらためて既存のメディア対策に注力しています。
―― 今回の受賞に象徴されますように、ディスクプレーヤー、フォノイコライザーアンプ、ネットワークプレーヤー、USB-DACとあらゆるメディア再生に注力されています。ワールドワイドの中では、ディスクやアナログ、ネットワークといったニーズはどのような感じなのでしょうか。
加藤 国内ではずっとディスクプレーヤーが確固たる位置を占めていましたが、アメリカでも今、CDプレーヤーが好調です。ストリーミング黎明期の2007年頃から、新しもの好きの一部アメリカのメディアにレガシー扱いされたこともありますが、ここに来てディスクメディアの音質が再評価されているんですね。そういう中で今回のK-01XD SEも大変注目されており、高くご評価いただいています。
ストリーミングは確かに利便性が高く、メディアを保存する場所もいらないですが、やっぱり棚から出して再生する快感は、CDにもレコードにもありますよね。そして音もいい。ストリーミングに向かっていくのはメジャーとしての流れですが、趣味の深い話としてディスクも最注目されていますね。それは各地域とも同様の動きとなっています。
―― いい商品を作ることに関してはこれまで同様に磨きをかけて、さらに販売網も強化されお客様に対するアプローチがスムーズにできるようになってきました。今後、どういった方向性を目指しますか。
加藤 国内の市況は楽観視できません。けれどもオーディオの事業を難しく考えすぎてもいけないかと思っています。いい音を聴いて、今までにないような感動を体感していただければ、お客様の買い替えを促進することができると思っています。オーディオの市場自体は徐々に小さくはなっていますけれども、より価値の高いものへ。ベースのお客様にどれだけ訴求できるか。ニーズに合わせて、よりマニアックで、よりコアで、より素晴らしい商品をストイックに追求していきます。
オーディオの事業について、これまでは1万台売らないと成立しない考え方でしたが、たくさん売るためにはリスクも生じる。そこに気がつけなければ沈没していくしかないんです。これが欲しいと言ってくださる方のためだけに集中する。それはティアックグループ全体が、ニッチなところでトップを取る考え方に変わっているからです。エソテリックは、トップエンドのモデルであれば100台の販売で成立する価値訴求ですね。製品は進化し続け、お客様の心の琴線に触れる良いものであれば買っていただける。これが至って普通の考え方だと思っています。
―― 本当に価値を求めているお客様にとっては、価値あるものが次々に出現してくるのは嬉しいことですね。
加藤 生活必需品ではない趣味の製品だからこそ、どれだけの面白さをアピールできるか。私どもとしては、そこを追求し続けていきたいですね。新製品を試聴されているお客様の表情が「やられた」という感じでニヤリとされる、それを拝見するのが嬉しいのです。エソテリック、ティアックともども、これからも技術力を発揮して進化していきたいと思います。
―― 新たな組織でのお取り組みでご活躍に拍車がかかった1年となりましたね。ありがとうございました。
受賞インタビュー:ティアック
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる “真の銘機” を選定するアワード「オーディオ銘機賞2025」において、エソテリックおよびティアックの各製品が数々の重要賞を受賞した。2024年4月にプレミアムオーディオ事業の新組織を設立して2ブランドの展開を集約、国内そして世界各地へと活躍の舞台を広げるティアック株式会社。事業を指揮する加藤徹也氏が、受賞に際して昨今のさまざまな取り組みと手応えを語ってくれた。
■エソテリックのフラグシップSEシリーズ
大きな進化をもたらした新たなディスクプレーヤーとネットワークDAC
―― オーディオ銘機賞2025において御社は、金賞、特別大賞、ネットオーディオ大賞と、非常に重要な賞を多数受賞されました。誠におめでとうございます。まずはご受賞に際しての所感などいただけますでしょうか。
加藤 誠に有難うございます。大変嬉しい思いでおります。金賞を頂戴しましたK-01XD SEは、エソテリックブランドの最新型SACDプレーヤーです。ウルトラハイエンドであるGrandiosoシリーズの技術の数々を踏襲しました。P1X SEやK1X SEでおなじみのエソテリック独自のVRDS-ATLASドライブメカと、D1X SEの技術を継承するMaster Sound Discrete DACを搭載。今回SE化に際して、クロックをディスクリート回路化し、DACのアナログ回路を刷新しました。
オーディオ銘機賞の審査員である評論家の方々やご販売店様を試聴室にお呼びした際に、K-01XD SEやネットワークDACのN-01XD SEを、旧モデルK-01、N-01と聴き比べするデモも行いました。そこで皆さんの顔がほころんだ瞬間が非常に嬉しかったですね。私たちが追求してきたものが、音楽を聴く方にとっての嬉しい進化になったとあらためて感じることができました。フォノイコライザーのGrandioso E1についても今回、MCカートリッジの「バランス電流入力」や光カートリッジへの対応など、弊社に取っては全く新しい技術にチャレンジし、「今まで聴いたことの無い音が出ている!」と評価いただくこともあり、デジタルに強いエソテリックのイメージを進化させることができました。
開発に際しては常日頃から、“演奏” に迫ることを目指しています。オーディオで音楽を聴く時、一聴でオーディオを再生しているとわかってしまうのではなく、歌い手がすぐそこで自分のためだけに歌ってくれているようだと言われたいんですね。究極的に目指しているのはそういうことで、カテゴリーや価格帯を問わず、一貫してそういう思いで取り組んでいます。
■エソテリックとティアック、2ブランドを展開する新たな組織での取り組みに手応え
―― オーディオ銘機賞で御社の製品は例年注目を集めていますが、今年はそれ以外にも大きな話題がありましたね。ティアック株式会社とエソテリック株式会社、別会社であった2つが1つになりました。その後の展開はいかがでしょうか。
加藤 以前にもお話をさせていただきましたように、コンシューマーオーディオの分野でエソテリックとティアックの2つのブランドをさらに強化する。そのための施策として別会社であったエソテリック株式会社を、ティアック株式会社に吸収合併しました。そしてこの4月からティアック株式会社のもとに設立したプレミアムオーディオ事業部で、私が事業部長を拝命して2つのブランドを展開しています。
1つの組織になったことによって、2つのブランドをスムーズに補い合いながら展開できるようになりました。エソテリックは最高峰の位置付け、ティアックはより身近なハイエンドの位置付けですが、エソテリックの製品開発で新たに得られた技術的な内容を、ティアックブランドの製品にも踏襲していく。これまでも行ってきたことがよりやりやすくなりました。
性格の異なる2つのブランドが存在すれば、その分お客様の選択の幅が広がります。そしてどちらのブランドを選んでいただいても、私どもが目指す実演奏に迫る音楽再生というものを実感していただけると思っています。エソテリックはオーディオファイルのコアなお客様をターゲットにしていますが、ティアックのターゲットは少しずつ変化するところがあります。ワールドワイドの展開においては、地域ごとにマーケットの状況を見て、競合ブランドがどの価格帯でどんな商品を出しているかを分析し、そこで勝負できる要素を設定していくのです。特に中級とされる価格帯の製品をもつティアックにとって、エソテリックの技術的なバックボーンの存在は非常に強みとなります。高度なクオリティを追求し続けることは、市場で存在感を示すために重要なことです。
―― 今回新たな組織体制となった際、営業面において、国内は専門店さんに強いエソテリックの部隊がティアック製品もアピールしていくとお聞きしていました。手応えはいかがですか。
加藤 営業体制についてはおっしゃるとおり、専門店様に対してティアックブランドもエソテリックと同様にアピールできるようになっています。よりコアなお客様にマッチする価値を訴求できていますし、この価格帯で最高のバリューを持つ商品展開ができていると自負しています。昨今国内のオーディオ製品の選択肢が少なくなっていますが、ティアックがここに加わり、専門店様でお試しの機会をつくっていただくことによって、お客様に選ぶ楽しさを味わっていただきたいですね。
そういう意味でも、ご販売店様の専門的なアドバイスはお客様にとってますます重要です。私どもとしても販売のプロの方々と二人三脚でやっていけなければ、お客様に本当の意味で楽しんでいただく領域まで到達できません。オーディオ機器をネットで購入されるケースも多いですが、そうした方々が機器の実力を100パーセント引き出せず、こんなものか、とがっかりされているとすれば非常にもったいないことです。機器がもつ本来の実力を味わっていただくためにも、お客様にリアルの販売店様との接点をもっていただきたいですし、私どももその後押しをさせていただきたいと思います。
■世界各地で様相の異なるオーディオ市場。地域のニーズに寄り添う取り組みを展開
―― 昨今のオーディオの市況については、どのようにご覧になっていますか。
加藤 国内のオーディオ市場を取り巻く状況は困難です。ご存知のとおり、商品の値段が高額になっていますが、ワールドワイドで日本だけが物価や給与の面で他の国々と足並みが揃っていない。日本のお客様にとって、オーディオは身近な趣味ではなくなってきつつあり、お客様との隔たりをどう埋めていくか、当社だけでなく他社さんも頭を悩ませておられるかと思います。
ワールドワイドでは、円安もあって日本のオーディオの価格は製品のクオリティに対してバーゲンプライスという言われ方をすることもあります。アジアの経済が発展している地域はかなり元気ですので、エソテリックの価格はそういったところでは受け入れられやすく、むしろ安価だと受け止められているのです。
エソテリックのターゲットであるコアなオーディオファイルのお客様の数に大きな変化はないですが、経済が活況になっているベトナムや中国、香港などに新たなお客様が多くいらっしゃいます。いわゆるニューリッチと言われる方々で、東ヨーロッパのお客様層も同様です。東南アジア、中国といった成長著しい市場は、若い人たちにどうアプローチするか、ラグジュアリーの市場にどうやって入っていけるかも課題です。マーケティングの手法もよりゼネラルな感じで、SNSでの展開がやはりポイントです。
―― 御社では昨今SNSマーケティングの取り組みにも注力されていますね。
加藤 専任のマーケティングエージェントが入社して体制が整いました。海外、北米/ヨーロッパの英語圏のみならず、中国語圏においてもSNSのコンテンツ作りはうまくできているかと思います。
成長著しいアジアと比較して、アメリカやヨーロッパといった市場が成熟している地域は、日本と同様にコア層へのアプローチが欠かせません。現地の担当者が販売店と一緒にお客様のご自宅を訪問するなど、日本と変わらない地道な営業スタイルを重視しています。またローカルなイベントに注力して、地域の販売店様との連携で購買を予定しているお客様を連れてきていただくといった活動も効果的だと思っています。アメリカは広大で、獲得できていないお客様がたくさんおられますから、この4月から広報宣伝のエージェントを新しく契約しました。SNSだけでなく、あらためて既存のメディア対策に注力しています。
―― 今回の受賞に象徴されますように、ディスクプレーヤー、フォノイコライザーアンプ、ネットワークプレーヤー、USB-DACとあらゆるメディア再生に注力されています。ワールドワイドの中では、ディスクやアナログ、ネットワークといったニーズはどのような感じなのでしょうか。
加藤 国内ではずっとディスクプレーヤーが確固たる位置を占めていましたが、アメリカでも今、CDプレーヤーが好調です。ストリーミング黎明期の2007年頃から、新しもの好きの一部アメリカのメディアにレガシー扱いされたこともありますが、ここに来てディスクメディアの音質が再評価されているんですね。そういう中で今回のK-01XD SEも大変注目されており、高くご評価いただいています。
ストリーミングは確かに利便性が高く、メディアを保存する場所もいらないですが、やっぱり棚から出して再生する快感は、CDにもレコードにもありますよね。そして音もいい。ストリーミングに向かっていくのはメジャーとしての流れですが、趣味の深い話としてディスクも最注目されていますね。それは各地域とも同様の動きとなっています。
■技術力を発揮して、趣味の製品のたゆまぬ進化を続けていく
―― いい商品を作ることに関してはこれまで同様に磨きをかけて、さらに販売網も強化されお客様に対するアプローチがスムーズにできるようになってきました。今後、どういった方向性を目指しますか。
加藤 国内の市況は楽観視できません。けれどもオーディオの事業を難しく考えすぎてもいけないかと思っています。いい音を聴いて、今までにないような感動を体感していただければ、お客様の買い替えを促進することができると思っています。オーディオの市場自体は徐々に小さくはなっていますけれども、より価値の高いものへ。ベースのお客様にどれだけ訴求できるか。ニーズに合わせて、よりマニアックで、よりコアで、より素晴らしい商品をストイックに追求していきます。
オーディオの事業について、これまでは1万台売らないと成立しない考え方でしたが、たくさん売るためにはリスクも生じる。そこに気がつけなければ沈没していくしかないんです。これが欲しいと言ってくださる方のためだけに集中する。それはティアックグループ全体が、ニッチなところでトップを取る考え方に変わっているからです。エソテリックは、トップエンドのモデルであれば100台の販売で成立する価値訴求ですね。製品は進化し続け、お客様の心の琴線に触れる良いものであれば買っていただける。これが至って普通の考え方だと思っています。
―― 本当に価値を求めているお客様にとっては、価値あるものが次々に出現してくるのは嬉しいことですね。
加藤 生活必需品ではない趣味の製品だからこそ、どれだけの面白さをアピールできるか。私どもとしては、そこを追求し続けていきたいですね。新製品を試聴されているお客様の表情が「やられた」という感じでニヤリとされる、それを拝見するのが嬉しいのです。エソテリック、ティアックともども、これからも技術力を発揮して進化していきたいと思います。
―― 新たな組織でのお取り組みでご活躍に拍車がかかった1年となりましたね。ありがとうございました。