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中田さんはダミヘ収録にどう臨んだ?

中田譲治さんはリンカーン・ナポレオンをどう演じた? バイノーラル歴史ドラマ『あと3分』インタビュー

2021/12/16 編集部:杉山康介
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「リンカーンは内省的、ナポレオンは陽の気質を意識して演じました」

ーーそんな『あと3分』は、歴史上の偉人が何かを為そうとする、その直前3分の心の動きをバイノーラルで臨場感たっぷりに描こうというユニークな作品です。最初にこの話をもらった時、どのような印象を持たれましたか?

中田 最初はタイトルの意味が分からなかったですけど、台本をもらって「ああそういうことか! キャッチーなタイトルだな」と思いました。リンカーンのゲティスバーグの演説やナポレオンのアルプス越えは今までにもドラマになっていたでしょうけど、その3分前にスポットを当てることで、表に出てこない「陰」の部分まで掘り下げられるというのはユニークですよね。

ーー中田さんは今回「ゲティスバーグの演説を行う3分前のリンカーン」と、「アルプス越えを3分後に控えたナポレオン」の2役を演じられています。政治家と軍人という毛色の異なる2人ですが、演じるにあたって、それぞれどのようなことを意識されたのでしょうか?


中田 リンカーンは弁護士でもありましたし、論理的かつ生真面目で、物事を少しずつ、慎重に積み上げていく人なのかなというイメージがあったんです。顔つきも彫りが深く、どこか内省的な雰囲気もあるので、人としての誠実な部分といいますか、表に出さない部分で自分に問いかけるタイプの人間を意識して演じました。

ナポレオンはやっぱり、大砲をバンバン撃ってあちこち征服していくようなイメージがありますので、より明快に、軽やかに、陰ではなく陽の気質を持っていて発散させるタイプを意識して演じています。

ーー確かにリンカーンはネガティブな自分を鼓舞する一方、ナポレオンはポジティブに周囲の人たちを鼓舞していて、同じ3分間でも使い方が全然違いますし、何より同じ中田さんの声でも、印象が全く異なってくることに改めて驚かされました。

そして今回はダミーヘッドマイクを用いての収録というのも、普通のボイスドラマとは大きく異なるポイントです。やはり普通のマイクと人間の頭を模したマイクでは、前に立った時の意識に違いが出るものでしょうか?


中田 いや、僕はそこまでマイクの違いを意識しないタイプですね。本当は良くないんですけど(笑)。特に今回の収録は、立ち位置がダミーヘッドマイクの正面と真後ろの2つだけだったので、演技しながらポジションのことも考える必要が少ない分、集中しやすかったですね。

バイノーラル収録時の立ち位置を示す、通称「魔法陣」

とはいえバイノーラルのような距離感が大事な作品であれば、やはり人型の方が演技するうえでのイメージはつきやすいと思います。後ろに回り込んでみたり距離を変えてみたり、いわばマイクの芯から外れて収録するわけですからね。

そういう意味で言うと、僕は役者上がりなので演技中、ついつい体を動かしちゃうんです。首を振ったりいろんな方向を向いたりとね。なので普通の収録でもマイクの芯から外れちゃったりして、録る方にご迷惑おかけしていると思うので、例えば歌手の方がライブで使っているようなヘッドセットマイクで収録できたら嬉しいな、なんて考えたりします(笑)。

ーーちなみに中田さん、これまでリンカーンやナポレオンを演じられたことは・・・

中田 ないんですよねぇ。日本の戦国時代だったり、海外だったりの英雄と呼ばれる方は何人かやらせていただきましたけど、少なくともリンカーンとナポレオンを、ここまでしっかり演じさせていただくのは今回が初めてだと思います。

ーーそうなんですね! 中田さん初の人物で、かつバイノーラルという二重にレアなドラマなのではないでしょうか!

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