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アナロググランプリ2021 受賞インタビュー

フェーズメーション、ステージが見通せる定位の再現にこだわり。鈴木信行会長が語る理想を貫くものづくり

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PHILEWEBビジネス 徳田ゆかり
2021年06月07日
アナロググランプリ2021 Gold Award
受賞インタビュー:フェーズメーション


「アナログ感覚が感じられ、オーディオファンに推薦するにふさわしいアナログ再生に欠かせない機器」を選出し、13年目を迎えたアワード「アナロググランプリ2021」。Gold Awardを受賞した、フェーズメーションブランドを展開する協同電子エンジニアリングの会長 鈴木信行氏が、音楽とオーディオへの思いと飽くなきこだわり、受賞モデルとその先に求めるものについて語った。


協同電子エンジニアリング株式会社 取締役会長 鈴木信行氏

インタビュアー 徳田ゆかり(ファイルウェブビジネス担当)・人物photo 君嶋寛慶


■ブランドの思想をつくった、オーケストラの生演奏との出会い

ーー アナロググランプリ、ゴールドアワード受賞誠におめでとうございます。

鈴木 本当に有り難く思います。乾坤一擲、この上はないという思いで取り組んでおりますので、それを認めていただいたことは何ものにも替え難く光栄です。

ーー 鈴木会長は大変な音楽好きでいらっしゃいますが、音楽との出会いはいつ頃でしょうか。

鈴木 中学校の近所に音楽大学があって、大学の先生がオーケストラの生徒を連れて、時々演奏してくださいました。オーケストラの音をそこで初めて体験して、世の中にこんな音楽があるのかと感動し、それから虜になりました。

ーー オーケストラの生演奏が最初の音楽体験とは貴重なことですね。オーディオとはどのような出会いだったのでしょうか。

鈴木 大学に入ってからです。機械が好きで、アマチュア無線をやりながらオーディオに触れていました。仕事でもオーディオに携わりたくて、当時最先端の技術を持っていたメーカーに就職したのですが、その後会社がいろいろ変化していく中で、サラリーマンの立場の限界を感じて退職しました。

そして協同電子エンジニアリング(株)を立ち上げて、計測器の仕事を始めました。初めからオーディオを手がけるのは、資金の問題や、事業の在り方からも不可能でした。

ある時カートリッジメーカーの「光悦」ブランドを経営する武蔵野音響社の社長であった菅野さんから、JISに即した測定方法の相談を受けました。菅野さんは音楽が好きで絵も描かれる芸術に長けた方でしたが、技術的なベースはお持ちでない方でした。私にとっては好きなオーディオのことですから喜んでご協力し、やがてステップアップ・トランスのOEM注文を受ける間柄になりました。

それがオーディオの事業につながるきっかけでした。菅野さんが亡くなられて、いろいろな機材を頂いていたので、それを使って研究を始め、オーディオ機器の自社ブランド、カーオーディオ、CDプレーヤーのOEMなど展開する様になりました。

そのうち協同電子システム(株)の計測事業部門を売却し、残った事業部分を協同電子エンジニアリング(株)として経営を続け、オーディオ機器メーカーとして、本格的に手がけることになり、「フェーズ・テック」のブランドを立ち上げたのです。しかし、ブランド名「フェーズ・テック」では世界ブランドとして登録出来ないと知り、途中で「フェーズメーション」のブランド名として今に至っています。

ーー どのような製品を手がけられたのですか。

鈴木 フェーズ・テックで最初に出したのが、カートリッジのP-1でした。その次がCDプレーヤーのデッキでCT-1。当初はアナログにこだわっていたわけではなく、スペック上有利なCDの方が良いと思い込んで、CDプレーヤーのデッキCT-1などを出荷していました。

しかし、CDとアナログの再生音を聴き比べた時、CDの音は何か変だぞとの思いが募ってきました。アナログの方がよいのですよ。「物理特性が良いから音が良い」のでは無く、「音が良いものは、物理特性も良い」と菅野さんのおっしゃっている事を思い出すのです。

これは、生音楽を聴き慣れているから理解出来るのです。それ以来、菅野さんからの見様見真似で、カートリッジを造りはじめ、最初の商品になったのがP-1でした。その時、評論家先生方から過大な評価を頂き、カートリッジのフェーズ・テックとして世に出たのです。その後JVC退職の技術者を招聘して、世界に通用する商品に進化しました。

良い音を創るには、長年の経験とノウハウが物を言う、これがオーディオ機器の世界です。ここは、音楽が好きでないと出来ません。幸いにも当社では、私だけでなく、技術部長も大変な音楽マニアですから、その方向で人材を育成しています。

ーー コンサートホールで聴く「生音らしさ」を常に追求するというフェーズメーションの姿勢の根本は、そこなのですね。

鈴木 コンサートホールとまったく同じ音をオーディオ機器で再生するのは無理ですが、音の定位は追求できます。オーディオで音楽を聴く時にどんな環境であっても、ステージ上のオーケストラの楽器の位置がイメージ出来る、それを我々は狙っているのです。ステージの前後や高さも含めた定位の良さ、ステージの見通しの良さです。不思議なことに、アナログだとそういう感覚が出やすい。デジタルではどういうわけかハイレゾであろうと、ステージの見通し感が出てこないと私は感じています。

■追い求める理想の形を体現したフォノイコライザーアンプEA-2000

ーー 受賞モデルEA-2000は、御社が展開するオーディオの集大成と言えますね。

鈴木 技術屋として追い求める理想のオーディオの形が頭の中にあります。ただ、求める品質の部品には調達上の問題があって、実現が難しかったのです。と言うのも、EA-2000にはLCR回路を使っていて、理論的に良いことは広く知られているのですが、良い部品がないという事情がありました。

私達には、得意のトランス作りからくる巻き線技術がありますから、手間暇がかかりましたが、トライする事で大きな成果が得られたのです。優れたLCR回路を採用すると、さらなる高い目標が見えて来て、結果として、機能別に3つの筐体に分けて、更にLRに分けるまでに至り、筐体が6つになってしまったのです。

ーー 鈴木会長の中にある理想に対して、この製品はどこまで到達していますか。

鈴木 ほぼ理想に到達しているといえます。まあ、ここから先は思い付かないです。ただ、オーディオはこれだけではなく、プレーヤーがあり、スピーカーがあります。入口のフォノイコライザーアンプが良くなると、続くデバイスの欠点が目立ってくるのですよ。するとね、スピーカーもつくってみるかと・・・。そういう気持ちにはなるけれども、これは、やってはいけないと、自分に言い聞かせています(笑)。

ーー ご自身ではどんなオーディオを聞いていらっしゃるのですか。

鈴木 私は、老人ホームに入居していて、生活する部屋の他にオーディオを聞くための部屋を別に借りています。そこでは普通に生活されている方々の環境に近いクオリティーの機器を置いて、試聴の実体験をしています。もうひとつは、以前私が住んでいた自宅に、石井伸一郎さんに設計して頂いた試聴室があり、4チャンネルSPシステムの実験をしております。近々チャンネル・デバイダーの商品化を目指しています。

ーー 音楽家でもない限り、専用の試聴室を持っておられる方は多くはないと思います。そういう方々に御社の製品をどうアピールされますか。

鈴木 我々としては、広くいろいろな方々に受け入れられる、オーディオ機器を提供したいと考えています。それは、環境如何に関わらず、絶対に譲れないテーマであり、思いである、奏でる楽器の定位です。つまりステージの見通しの良さです。聞く部屋が広くても狭くても、そこだけは絶対に譲れないところです。

ーー 今後の方向性はいかがでしょうか。

鈴木 カートリッジをつくり、メインアンプをつくり、イコライザーアンプをつくりました。CDプレーヤーも初期の頃につくりました。残るはスピーカーですね。でもこれはやるわけにはいかない(笑)・・・。

今回はEA-2000で素晴らしい賞を頂戴しました。ただこういう製品は多くの皆様に買っていただけるものではありません。今後は、この技術を生かした普及価格の商品を出したい、お求めやすい物創りを企画します。そして、コンサートホールの音をもっと多くの方に体験していただき、音楽ファンを増やしていきたいと思っています。

コロナ禍の中でもあり、また年齢を重ねるとコンサートホールに行き難くなるものです。そうなった時でも、自分の部屋でコンサートホールを感じて頂ける商品を市場に提案し続けて行きたいですね。

ーー 貴重なお話をお聞かせいただきました。有難うございました。

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