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HDMIとMHLはうまく共存できる

走り始めたsuperMHL − MHLコンソーシアムのプレジデントに聞く「8Kへの期待感」

公開日 2015/03/17 19:51 山本 敦
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MHLコンソーシアムは、今年の1月に発表したMHLの次世代規格である「superMHL」の技術に関連する記者説明会を開催した(関連ニュース)。イベントに出席したコンソーシアムのプレジデント、Rob Tobias氏にsuperMHLを取り巻くビジネスの現況と今後への期待を訊ねた。

MHLコンソーシアム プレジデント Rob Tobias氏

1月に米・ラスベガスで開催された2015 International CESでは、ブースに108型の8K対応ディスプレイとプレーヤーの試作機を用意。新開発のsuperMHL専用コネクターを搭載するケーブルで互いの機器を接続し、8K/60pの4:2:0映像を映し出したデモンストレーションが評判を呼んだ(関連ニュース)。CESで発表後の反響はとても良好だとTobias氏は語る。

MHLコンソーシアムブースで展示されていたsuperMHLによる8k/120p伝送デモ

「特に日本から高く注目いただいています。日本では総務省が2016年にBSで8K試験放送を開始するロードマップを策定していますが、NHKは8K対応への技術開発をスピードアップしてきているようです。これに呼応しながら各AV機器メーカーが対応を推し進めています。superMHLはチューナーから8Kディスプレイまで、ケーブル1本で接続できる最もスマートなインターフェースを提供します」

日本だけでなく、世界の技術先進地域もsuperMHLに期待を寄せる。Tobias氏は、世界の大手テレビメーカーが8Kテレビの開発に取り組んでいることを強調しつつ、課題となる8K対応のコンテンツについても、「まず4Kが普及してくれば、テレビ側のアップスケーリング技術も成熟してユーザーのニーズがまかなえるようになるはず」とポジティブだ。

なお、superMHLのコネクタースペックについてはMHLコンソーシアムの会員企業に向けて1月末から提供が始まった。次の段階として認証テスト用のスペック公開も控えており、これに準拠するかたちでMHLのテストラボも調整が進んでいくものと考えられる。superMHL対応のAVコンポーネントが姿を現す時期について、Tobiasi氏は「独自インターフェース仕様のケーブルを含めて、今年の下期ごろに出てくるのでは」と期待感を示した。

コンシューマー機器だけでなく、映像・音楽コンテンツのポストプロダクションサイドもsuperMHLに高い関心を示しているという。「映像・オーディオの品質向上もさることながら、superMHLではオプションとして端子のロック機構も規定しています。デジタルサイネージやカンファレンス用途、プロのホームシアターインストールなど、シビアな現場により安定感が高く、長尺の引き回しにも対応できるインターフェースが提供できます」と、Tobias氏はBtoB市場に向けたMHLメリットのメリットについても力を込めて語る。

superMHLは、オーディオビジュアルデータの伝送インターフェースとして既に広く普及しているHDMIに対してどのような優位性を持っているのだろうか。Tobias氏に訊ねた。

「superMHL独自のコネクターを開発したことで、HDMIと競合するのでは、あるいはそれを狙っているのかと訊ねられることもあります。MHLコンソーシアムにそのような意図はありません。私たちは、今後テレビやレコーダー、STBなど据え置き型のAVコンポーネントは、HDMIとMHL両方の端子を搭載してくるだろうとみています。8Kテレビが出てくる前段階では、既に幾つかのメーカーが発表している5,120×2,160ドットの“5Kテレビ”から採用が始まっていくでしょう。その頃にはHDMIとMHLはうまく共存できるのではないでしょうか。8Kが普及する際には“スーパーハイビジョンはsuperMHL、BDはHDMI”でつなぐといった具合に使い分けられることもあると思います」

superMHL端子

ただ、その頃にはHDMIも8K対応になっている可能性が高い。ユーザーにとって混乱を招くことにはつながらないのだろうか。HDMI陣営も8Kに対応できる新スペックのローンチに向けて動いているのは間違いないだろうが、Tobias氏はHDMIサイドの今後の見通しに関するコメントについては明言を避けた。

superMHLのモバイル機器への展開についても、USB Type-C対応の「MHL ALTモード」をサポートするシングルチップのUSBポートコントローラー「SiI7023」「SiI7033」がSilicon Imageから発表されたばかりだ。本日の記者説明会の会場でも、USB Type-C搭載モバイル端末を想定した試作機から、薄型テレビに映像を出力しながら端末を給電したり、USBコントロール信号もやり取りしながら、モバイル端末の用途がPC的に広げられるユースケースも紹介された。

superMHL端子の活用スタイルが提案された

MHL ALTモードは、MHLやDisplayPortのように異なる信号プロトコルをUSB Type-Cのハイズピードレーンに乗せて扱うための技術だ。USB Type-Cは24ピンでリバーシブル仕様の端子構造だが、うち8ピンを送受信1組の差動ペア単位で束ねた計4つのレーンがハイスピードレーンとして活用できる。デバイスメーカーはそれぞれの機器に組み込む際、4つのレーンにどのような役割を与えるかを自由に決めることができ、4つのハイスピードレーンを全てsuperMHLに割り当てることで、最大8K/60fpsの映像伝送がモバイル環境でも可能になる。

Tobias氏は「モバイル機器に搭載されるプロセッサーパワーにも依存してきますが、使い方はメーカーのコンフィグ設定によって自在に変えることができ、給電機能のスペックについてもタブレット向けにハイパワー充電に割り当てることもできるようになります」と説明する。

技術発表後は多くのPCメーカーもMHLの採用に関心を示しているという。今後もモバイル端末は、特に各社のフラグシップに位置づけられるハイエンド端末が、その処理能力や4K・ハイレゾ再生をはじめとするリッチなエンターテインメント機能をさらにリッチ化してくるはずだ。

Tobias氏は「来年2月にMWCが開催される頃には、USB Type-C搭載のモバイル端末がブースに並ぶものと期待しています」と語る。superMHLへの対応はどのメーカーが世界初を狙ってくるのか?据え置きコンポーネントの対応とともに注視したいトピックスだ。

(山本敦)

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