新モデルや今後の展開について語る
細部まで丹念に作りあげるハーベスのものづくり − アラン・ショー氏インタビュー
1977年にH・ダッドリー・ハーウッドが設立したイギリスのスピーカーブランド「Harbeth」。英国国営放送局BBCのモニター・スピーカーシステムを長年にわたり供給してきた実績を持つ同社製スピーカーの特徴は「声」の表現に優れていること。周波数特性や位相特性などに細心の注意を払っていることに加え、箱の響きをうまく使った総合的なチューニングを行っているのも特筆すべき点だ。
最近では2006年に「HL Compact7ES-3」を、2010年には「HL-P3ESR」という注目の2製品を世に送り出した。

HL Compact 7ES-3
HL-P3ESR
「HL Compact7ES-3」は、「HL Compact」(1987年発売)をルーツに持ち、多数のリファインを繰り返し進化してきたHLシリーズの最新モデル。200mmの"RADIAL2"コンポジットコーン型ウーファーと、25mmのアルミニウム・ハードドーム型ウーファーを採用。クロスオーバーネットワークはコンピューターを使用し新設計を行い、部品も一から見直されたものであるという。
「HL-P3ESR」は、「HL-P3」(1990年発売)をリファインし、ハーベスのスピーカーづくりの新たな一幕を開いたモデルだ。ミッドバスに新開発110mmの"RADIAL 2"ドライバーを採用。トゥイーターは19mmのアルミドーム型をベースに「HL-Compact7ES- 3」で採用したOpenWeaveグリルを装着し、高域のエネルギー感を獲得したという。
また新たに図面から描き起こした大型クロスオーバー・ネットワークを採用。パーツ類もHL Compact 7ES-3などに採用されたものを中心に、試聴を重ねて厳選し手作業で組み上げたというこだわりぶり。安定感のある滑らかなエネルギーバランスを実現したとのことだ。
エンクロージャーのチューニングには、独自の“Super Tuned Structure”を採用。ビチューメン(瀝青)シートでダンプニングを行うことで、エンクロージャーの振動をコントロールする。リアバッフルもネジ留めするメカニカルダンピング構造と相まって、エンクロージャーの響きを活かしながら制振するという音響制御を行っている。
このたび、同社のデザイナーでありマネージングディレクターでもあるアラン・ショー氏が音元出版に来社。お話しを伺うことができた。
■Harbeth Designer and Managing Director Alan A Shaw氏
■インタビュアー:山之内 正氏
山之内氏:「HL-P3ESR」が日本に導入されて、ちょうど1年が経ちましたね。「LS3/5A」を源流に持つスピーカーは、ここ数年さまざまなメーカーから登場してきています。そういった製品群のなかに於いてハーベスのスピーカーは他社製品とどこが違うのでしょうか?
ショー氏:そうですね。私は他社製品のような“LS3/5A風”の製品は全く興味がないんです。それらはLS3/5Aという名前を使っているだけなので、出てきている音がどうこうと言えることはありません。
しかし「HL-P3ESR」は違います。新しいスピーカーを作るのと同じような感じですね。ウーファーユニットの開発に5年の歳月をかけましたし、ネットワークからキャビネットに至るまで新たな工夫を凝らし、丹念に作り上げたものです。
山之内氏:私は「HL Compact」シリーズの音を20年以上聴いてきましたが、先日最新モデルの「HLCompact 7ES-3」を聴いてみて、昔の音と随分変わった部分と、変わっていないなと思う部分両方があるなと思いました。最新モデルと過去モデルの違いはどこにあるのでしょうか。
ショー氏:そうですね、大きな違いと言うと、ネットワークのデザインにCADを使えるようになったことでしょうか。ハーベスのスピーカーのバランス良い再生音の鍵は、何と言ってもネットワーク。それまでネットワークのデザインにはとても時間がかかっていたのですが、CADのおかげでシミュレーションが容易になり、時間が大幅に短縮されました。
しかしCADを使いつつも、最後にクオリティを決定するのはやっぱり「自分」なんですね。ソフトで計算した結果を元に、自分で調整して試聴してみるんです。CADが使えるようになるまでは手を使って何度もカットアンドトライを繰り返してきたのですが、こういったところでその経験が活かされているなと感じます。
山之内氏:今後のハーベスの展開についてはどうお考えですか?
ショー氏:そうですね、まずは生産能力の向上を図りたいですね。いまのハーベスでは生産能力に限界があって、世界中から来る受注に応えきれず納期が遅くなってしまっているので。ユニットも、効率良く作れるようラインを再設計していかなければと思っています。いまはウーファーユニット一つ作るのに20分以上かかっていますからね…。
新しい製品について言えば、私は今もてはやされているような大きなスピーカーには全く興味がありません。作るのであれば小さくてパーソナルなスピーカー…そういったものを考えています。
山之内氏:有り難うございました。
なお今回のインタビューは、2月21日発売の「季刊・オーディオアクセサリー」に、より充実した内容で掲載予定。こちらも是非チェックを!
【ハーベス製品に関する問い合わせ先】
エムプラスコンセプト
TEL/045-845-7639
最近では2006年に「HL Compact7ES-3」を、2010年には「HL-P3ESR」という注目の2製品を世に送り出した。

HL Compact 7ES-3

HL-P3ESR
「HL Compact7ES-3」は、「HL Compact」(1987年発売)をルーツに持ち、多数のリファインを繰り返し進化してきたHLシリーズの最新モデル。200mmの"RADIAL2"コンポジットコーン型ウーファーと、25mmのアルミニウム・ハードドーム型ウーファーを採用。クロスオーバーネットワークはコンピューターを使用し新設計を行い、部品も一から見直されたものであるという。
「HL-P3ESR」は、「HL-P3」(1990年発売)をリファインし、ハーベスのスピーカーづくりの新たな一幕を開いたモデルだ。ミッドバスに新開発110mmの"RADIAL 2"ドライバーを採用。トゥイーターは19mmのアルミドーム型をベースに「HL-Compact7ES- 3」で採用したOpenWeaveグリルを装着し、高域のエネルギー感を獲得したという。
また新たに図面から描き起こした大型クロスオーバー・ネットワークを採用。パーツ類もHL Compact 7ES-3などに採用されたものを中心に、試聴を重ねて厳選し手作業で組み上げたというこだわりぶり。安定感のある滑らかなエネルギーバランスを実現したとのことだ。
エンクロージャーのチューニングには、独自の“Super Tuned Structure”を採用。ビチューメン(瀝青)シートでダンプニングを行うことで、エンクロージャーの振動をコントロールする。リアバッフルもネジ留めするメカニカルダンピング構造と相まって、エンクロージャーの響きを活かしながら制振するという音響制御を行っている。
このたび、同社のデザイナーでありマネージングディレクターでもあるアラン・ショー氏が音元出版に来社。お話しを伺うことができた。
■Harbeth Designer and Managing Director Alan A Shaw氏
■インタビュアー:山之内 正氏
山之内氏:「HL-P3ESR」が日本に導入されて、ちょうど1年が経ちましたね。「LS3/5A」を源流に持つスピーカーは、ここ数年さまざまなメーカーから登場してきています。そういった製品群のなかに於いてハーベスのスピーカーは他社製品とどこが違うのでしょうか?
ショー氏:そうですね。私は他社製品のような“LS3/5A風”の製品は全く興味がないんです。それらはLS3/5Aという名前を使っているだけなので、出てきている音がどうこうと言えることはありません。
しかし「HL-P3ESR」は違います。新しいスピーカーを作るのと同じような感じですね。ウーファーユニットの開発に5年の歳月をかけましたし、ネットワークからキャビネットに至るまで新たな工夫を凝らし、丹念に作り上げたものです。
山之内氏:私は「HL Compact」シリーズの音を20年以上聴いてきましたが、先日最新モデルの「HLCompact 7ES-3」を聴いてみて、昔の音と随分変わった部分と、変わっていないなと思う部分両方があるなと思いました。最新モデルと過去モデルの違いはどこにあるのでしょうか。
ショー氏:そうですね、大きな違いと言うと、ネットワークのデザインにCADを使えるようになったことでしょうか。ハーベスのスピーカーのバランス良い再生音の鍵は、何と言ってもネットワーク。それまでネットワークのデザインにはとても時間がかかっていたのですが、CADのおかげでシミュレーションが容易になり、時間が大幅に短縮されました。
しかしCADを使いつつも、最後にクオリティを決定するのはやっぱり「自分」なんですね。ソフトで計算した結果を元に、自分で調整して試聴してみるんです。CADが使えるようになるまでは手を使って何度もカットアンドトライを繰り返してきたのですが、こういったところでその経験が活かされているなと感じます。
山之内氏:今後のハーベスの展開についてはどうお考えですか?
ショー氏:そうですね、まずは生産能力の向上を図りたいですね。いまのハーベスでは生産能力に限界があって、世界中から来る受注に応えきれず納期が遅くなってしまっているので。ユニットも、効率良く作れるようラインを再設計していかなければと思っています。いまはウーファーユニット一つ作るのに20分以上かかっていますからね…。
新しい製品について言えば、私は今もてはやされているような大きなスピーカーには全く興味がありません。作るのであれば小さくてパーソナルなスピーカー…そういったものを考えています。
山之内氏:有り難うございました。
なお今回のインタビューは、2月21日発売の「季刊・オーディオアクセサリー」に、より充実した内容で掲載予定。こちらも是非チェックを!
【ハーベス製品に関する問い合わせ先】
エムプラスコンセプト
TEL/045-845-7639