【インタビュー】パナソニック、ネットワークレコーダー“miyotto”の新たな挑戦で切り開く価値
編集部:徳田ゆかりVGP2026受賞インタビュー パナソニック
レコーダーを取り巻く昨今の状況の中で、新たな道を果敢に切り拓いているパナソニック。“ディーガ”のブランドでプレミアム4Kモデルからスタンダードモデル、まるごと録画の“全自動”モデルなどさまざまなラインナップを展開する中、2025年11月に “miyotto”の名称で、新たな価値を訴求するネットワークレコーダーUN-ST20Aを発表した。
音元出版のアワードVGP2026において、UN-ST20Aはライフスタイル大賞を受賞した。そこで受賞インタビューとして、パナソニックがレコーダー事業において見据えるものと今後の展開について、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社の中家俊幸氏、金澤貞善氏に話を伺った。
パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社
コミュニケーションネットワーク事業部
ビジュアル事業統括 中家俊幸氏
出力端子もリモコンもない、“ディーガ”ではない新レコーダー
ーー 音元出版のアワードのVGP2026で、パナソニックさんは有機ELテレビTV-77Z95Bの批評家大賞をはじめたくさんの受賞を果たされましたが、中でも今回、ライフスタイル大賞を受賞したネットワークレコーダーUN-ST20Aにフォーカスしてお話を伺います。
中家 ありがとうございます。このたびの受賞は非常に光栄で嬉しく思っております。パナソニックは長年、ディーガのブランドでレコーダーを展開いたしておりますが、今回異なるコンセプトでの製品を市場に投入することができました。お客様からのお声がどういったものになるか、期待も不安もありましたが、結果的にこうしてご評価をいただけ、開発に携わったメンバーを含めて関係者一同で大変喜んでおります。
ーー ディーガではないレコーダー、非常に興味深い存在です。あらためてUN-ST20Aをご紹介いただけますか。
中家 これはネットワークレコーダーという、パナソニックとして新たな位置付けとなるモデルです。
3つのチューナーと2TBのハードディスクを搭載してテレビのコンテンツをたっぷりと録画できますが、大きな特徴は、専用の「miyottoアプリ」を通じてネットワーク経由でコンテンツを視聴できること。
アプリをダウンロードしたスマートフォンやタブレットで、UN-ST20Aに録画されたコンテンツや、放送中のコンテンツを視聴することができます。
従来のディーガのアプリ「どこでもディーガ」でも同様の機能はお楽しみいただけるのですが、大きな違いは「miyottoアプリ」がFire OSやGoogle TVなど様々なOSに新たに対応したこと。
これによりFire TV Stickなどのストリーミングデバイスや弊社のFire TV搭載ビエラ、またスマートテレビやスマートプロジェクターでもコンテンツを視聴することができるのです。
つまりUN-ST20Aは、ディスプレイを選ばず、場所や場面や時を選ばず、インターネット環境とストリーミングデバイスがあれば、たとえばNetflixやAmazon Prime VideoといったVODと同様の感覚でコンテンツを楽しむことができるものなのです。
そしてHDMI端子やリモコンは搭載していません。操作はmiyottoアプリを通じて、またテレビのリモコンでも行えます。
従来のレコーダーのようにケーブルでのテレビ接続はする必要はないので、Wi-Fiルーターのようにテレビから離れた目立たない場所へ設置することができます。
── テレビ番組が録画できる点はまさしくレコーダーですが、20年以上の歴史を持つディーガとはまったく異なる存在になりますね。
パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社
部長 金澤貞善氏
金澤 ディーガは2003年の誕生以来、録画・保存・編集に特化した製品として進化を続けてきました。複数のチューナーやブルーレイディスクドライブを搭載し、リビングのテレビとHDMIで接続して家族で視聴するスタイルを想定した設計です。
ディーガが「コンテンツを保存して楽しむ」ための製品であるとすれば、UN-ST20Aは「テレビコンテンツを、どこでも、いつでも、好みのデバイスで楽しむ」ための製品で、ディーガの設計思想とは意図的に一線を画しているのです。
中家 ディーガはブルーレイディスクのドライブを搭載していますし、さらに当社の強みである“全自動”モデルに代表されるように、チューナーを複数搭載して録画や保存に特化し、さらにお客様好みに編集機能も強化しているのが特徴です。コンテンツをしっかりと残し、いつでも見られるというところにより注力しています。
一方、UN-ST20Aもテレビ番組を録画できますが、リビングでテレビと一緒にセッティングし、ご家族で見るものというより、個人個人のお客様のライフスタイルに合わせた形で、新しい視聴体験をお届けするという考え方です。
テレビが好きだよね、見たいよね、だから“miyotto”
── UN-ST20Aの企画から製品化に至るまで、どんな経緯があったかをお聞かせいただけますか。
中家 企画のスタートは2023年4月頃でした。当時私は技術部門を担当していましたが、同じ部門のメンバー数名と商品企画のメンバー数名を集めて、ディーガではないレコーダーの新商品を考えてみないかと声をかけたのです。
週に1回ほどのペースでブレストのように進めていきましたが、当初は10名ほどで気軽にアイデア出しをして行った感じですね。あまり突飛に考えて現実離れしすぎないよう、あくまで我々の強みと市場の環境とを照らし合わせたところで進めました。
というのもそもそものきっかけは、いわゆる従来のレコーダー市場の今後の伸びを期待するのは現実的に厳しいと思っていたからです。
ただ私自身は、テレビのコンテンツに対するニーズはまだ十分にあると見ていました。
昨今は皆様がコンテンツを見る場所もデバイスもさまざまで、特に若い方々はテレビを見ないと言われています。けれど、ご覧になっているネット上のコンテンツが、実はテレビのコンテンツだという場合もありますし、見逃し配信などでも楽しまれるケースが多くなっています。
ならばテレビのコンテンツを、今の市場にマッチしたさまざまなデバイスで、時間や場所を問わずに楽しむ。それがライフスタイルにマッチした新しいテレビ視聴ではないかと考えました。
そこにパナソニックがレコーダーで培ってきた強みを活かし、テレビのコンテンツがお好きな方に対してできることがあるのではないかと。そして集まったメンバーからも、実はこういうことをやってみたかったという声が次々に出てきたのです。
コンセプトが固まっていく過程で、「ディーガの強みは活かすけれど、ディーガありきで作らない」という点を、メンバー間で何度も確認し合いました。
その結果として、HDMI端子の非搭載と専用リモコンの廃止は、むしろ当然の判断として全員がすぐに合意しました。
HDMI端子を搭載すれば“ディスクドライブを持たないディーガ”にすぎませんが、ネットワーク経由での視聴体験に特化してこそ新しい価値の核心となると。
我々の事業部では定期的に開発会議が行われ、この技術で「こんなことができる」といった技術部門のアイデアをお披露目する場があります。それで、UN-ST20Aの構想がある程度固まった時に開発会議で披露しました。
そこから一気に流れが加速し、デザインの部門やマーケティングの部門にも加わってもらって、構想がどんどん今のUN-ST20Aの形に近づいていったのです。
ーー miyottoという愛称も親しみやすいですね。これはどういう経緯で名付けられたのでしょうか。
中家 これもブレストを進める中で、愛称を付けようとメンバーで話し合っていました。“ディーガ”とは異なることを大前提として、「放送」にこだわりを持ちつつ、違うアプローチでお客様にリーチしようという思いがありましたので。
ネーミングについては、テレビが好きだよね、見たいよね、見よう見よう、「miyotto」、という感じです。50個ぐらいの本当にさまざまな候補の中から、最終的にシンプルなものがメンバーの意思で決まりました。
いろいろなご意見を聞き、紆余曲折はありましたけれど、楽しく開発したいい例になったと思います。社内でもインパクトのある新しい名前だと受け止められています。
レコーダーがもたらすさまざまな価値を、わかりやすく訴求する
ーー プロモーション活動ではどんなお客様を想定して、どのように進めているのでしょうか。
中家 昨今は比較的いろいろな世代の方がネットで動画を楽しまれていて、特定の年齢層にフォーカスしたわけではありません。ただ、ディーガのお客様は圧倒的に40代、50代の方が多いですから、30代、20代といった方々を新たに取り込めればと思っています。
金澤 UN-ST20Aはあえて出力端子やリモコンを搭載させず、動作は全てテレビのリモコンやスティックリモコンで行うという考え方です。
マーケティング部門と営業部門でリアルの店頭やECでの売り方を総合的に捉え、商品の機能別に短尺のタテ型動画コンテンツをいくつも作成しました。体験価値をわかりやすく伝える内容としています。
そして想定するユーザーに向けたプラットフォームでまず広げていきましたが、特に響いているのは、テレビを持っていないがテレビを見たい若年層や、テレビの壁掛けを検討しつつレコーダーの設置で困っている方。
我々が定義したいくつかの価値が異なるターゲットに刺さっていると分かり、さらにターゲティングの精度を上げているところです。
そのようなデジタルでの施策が今回は奏功していて、リテラシーの高い方を中心に最初に広がっていき、従来のレコーダーとは違ってECでの販売が主になっています。
ただ現状では生産が追いついておらず、大変ご迷惑をおかけしておりますので、PRも含め今後しっかりとフルスイングしていきたいのが正直なところです。
商品のお披露目の場でもYoutuberの方にご協力いただきましたが、誰かが明確に使い方や用途を指南するといった内容を動画でお届けすることで大きく響きます。
アーリーアダプターを始めとする方々に価値をお伝えして、そこから徐々に拡散していくのが方法の一つと思います。ある程度20代の方々にもご購入いただいていて、新しい手応えを感じます。
ーー では、レコーダーの事業について御社の昨今の概況をお話しくださいますか。
中家 当社では2K放送対応、4K放送対応モデルがあり、中でも1番の強みとなっているのは多チャンネルを24時間まる録りできる全自動タイプと、大きく3つのラインナップを揃えさせていただいております。それぞれに強みをもって展開し、今年度も概ね計画通りの着地を見込んでおります。
我々にとって全自動ディーガの存在は大きな強みで、一昨年にGUIを大きく刷新したモデルが非常に好評です。
今年度も前年を上回る成長を見せており、まだまだ我々の強みを活かしていくことが重要であると思っており、全自動モデルを重点商品と捉えながら今後も頑張らせていただきたいと思っております。
金澤 レコーダーを単純に録画機と捉えるだけではなく、さまざまな角度での価値を訴求していきたいですね。
全自動ディーガのお客様は依然として数多くいらっしゃいますし、今回のUN-ST20Aで新たな可能性も見出せると思います。パナソニックから録画機文化をしっかりと推進していければという思いです。
ーー 力強いお言葉をいただきました。UN-ST20Aが新しい価値を広げていくのも楽しみですね。ありがとうございました。