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再生音源のあるべき音をひたすら超高解像度で描写する

XI AUDIO「SagraDAC」レビュー。テクノロジーとセンスを結集したハイエンドD/Aコンバーター

2019/02/19 角田郁雄
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ハイレゾという言葉が登場してからというもの、単体D/Aコンバーターは急速なスピードで進化を遂げてきた。とりわけハイエンドの分野に採用されてきたのが、DACチップに頼ることなくアナログ変換を行うディスクリートDAC。なかでも、R-2Rラダー抵抗変換方式を採用したDACは、そのサウンドで多くのオーディオファン達の憧れのDACであり続けてきた背景がある。この「憧れ」がついに「現実」となる日が来たのかもしれない。そんな「革新」を起こす可能性を秘めた、イレブンオーディオ「SagraDAC」に迫る。

R-2Rラダー抵抗変換方式DAコンバーター「SagraDAC」¥490,000(税抜)

注目の新進ブランドが生み出した最先端DAC

ハイレゾの醍醐味は、目の前で演奏されているかのような「リアリティ」を実現することではないだろうか。「ハイレゾ=高解像度」ということを考えると、言うまでもなく再生の最上流となる「DACの性能」も重要視される。とりわけ、近年では32bit型DACチップが開発され、また徐々にではあるが、ディスクリートDACに挑むブランドも高解像度再生に効果を発揮している。

こうしたなかで、いま注目すべきブランドがある。その名もイレブンオーディオ。ファウンダー兼開発者は、かつてナグラ・プロフェッショナルでその手腕を発揮し、その後最高峰のポータブルプレーヤーとして登場したLotoo「PAW Gold」で大成功を収めたマイケル・シャオ氏。

イレブンオーディオのファウンダーであり、開発者でもあるマイケル・シャオ氏。ナグラ・プロフェッショナルやロトゥーを渡り歩いた、いま最注目のエンジニアである。イレブンオーディオは、そんな同氏のこだわりの技術をフルに投入したブランドとして、現在世界的にも注目を集めている

これまでもイレブンオーディオは、世界で最もドライブしづらいとさえ言われたハイエンド・ヘッドフォン、アビス「AB‐1266Phi」をドライブすることも可能としたヘッドフォンアンプ「Formula S」を開発するなど、強くトップエンドのサウンドを意識した製品開発を行ってきた。そんなイレブンオーディオから、実に素晴らしいDACが登場。その名は「SagraDAC」。私はこのDACに搭載された技術と、その結果実現した音に感心させられた。

圧倒的な精度で作り込まれたR‐2Rラダー抵抗変換方式

SagraDACにおける最大の注目は、トップボードを開けて最初に目にとまるR‐2Rラダー抵抗変換方式のディスクリート・マルチビット型DACの搭載だ。これはデンマークのスークリス・エンジニアリング社製のもので、SagraDACのためにカスタムチューニングを施したものとのことである。

SagraDACの内部全景。注目のR-2Rラダー抵抗変換方式DACの基板は、向かって右側に装備。電源は各セクションへ9つの独立電源が供給される。こうした設計も、R-2Rラダー抵抗変換方式DACの性能をフルに発揮する重要な役割を果たしている。なお、アナログ回路はあえてシングルエンドを採用。これはバランスの場合、ラダー抵抗アレーがもう一枚必要となり、電源構成も複雑になるなど音質面への良からぬ影響もあることに加え、なによりもR-2Rラダー抵抗変換方式のサウンドを身近なものにしたいというイレブンオーディオの想いが反映されたものとなる

そもそも、マルチビットDACとなるR‐2Rラダー抵抗変換方式の基本動作を簡単に説明しよう。24bitのPCM音源の場合、最上位bitであるMSBからbit2、bit3……bit22、bit23、最小bitであるLSBまでがそれぞれ電流ソースとなり、各bitに対応する分割スイッチの「抵抗」を通過してDA変換される仕組みである。

R‐2Rラダー抵抗変換方式の実装に関しては、2つの構成がある。抵抗値「R」と抵抗値「2R」の抵抗を使い、1bitあたり2個の「R+2R」とするもの。もうひとつが、抵抗値「R」の抵抗だけを使い、「2R」の役割は「R」の抵抗を直列に2本接続して、1bitあたり3個の抵抗、つまり「R+(R+R)」とするものだ。本機が採用するのは前者であり、サイン・マグニチュード方式であるため、27bit×2×2(正/負)×2ch分で計216個の抵抗が必要になるというわけだ。私はこの大規模なディスクリート構成でサイン・マグニチュードを実現した抵抗アレーに、思わず感激した。

SagraDACに搭載された27bit R-2Rラダー抵抗変換方式DACの基板は、デンマークのスークリス・エンジニアリングによるもので、本機のためにカスタムチューンが施されたものを搭載。厳選された精度の高い抵抗を正/負に各54個、1chあたりで合計108個の抵抗を実装した大規模なものとなる。50万円を切る価格帯でこの構成のDACを持つこと自体、驚異的と言えるポイントだ

R‐2Rラダー抵抗変換方式は高い抵抗精度が要求される上、温度変化への対応力も求められる。本機で採用されたのは、スークリス・エンジニアリングがシリコンバレーで製作した抵抗。その精度は0.012%と非常に高いものだ。この合計216個の抵抗でDA変換されたデジタル信号は、テキサス・インスツルメンツのサウンド・プラスと呼ばれるオペアンプOPA1602Aを1chあたり1個使用して構成されたローパスフィルターでアナログ化される。このオペアンプもハイ・スルーレート(20Vμs)で、超低歪率(0.00003%)を誇る高精度なものだ。

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