【連載】角田郁雄のオーディオSUPREME

CDから生演奏のような臨場感を引き出す ー CHORDのCDトランスポート「Blu MkII」を聴く

角田郁雄

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2017年07月25日
角田郁雄氏がハイエンドからスモールオーディオまでを実際に使い、その魅力をレポートしていく「角田郁雄のオーディオSUPREME(シュープリーム)」。今回は、CHORDのCDトランスポート「Blu MkII」を取りあげる。

CHORDのCDトランスポート「Blu MKII」(写真上段)。下段はD/Aコンバーター「DAVE」となる。取材では専用スタンド(上段:Mサイズ、下段:Sサイズ)を組み合わせている

CHORDの思い出 ー CDのイメージを覆す音との出会い

1999年頃だったろうか。私は東京インターナショナルオーディオショウで、英国CHORD社のCDプレイバック・システムに巡り会った。CDトランスポート「Blu」とD/Aコンバーター「DAC64Mk2」で構成されたこのシステムは、透明度の高い立体的な空間を描き出し、およそCDとは思えない豊かな倍音を再現していた。操作ボタンの多いBluのデザインは正直なところ苦手だったが、そのときの音は忘れられなかった。

「DAC64MkII」(左)と「Blu」(右)

その後、2005年に日本限定のCDトランスポートとして「CODA」が登場した。こちらは件の操作ボタンを省略したシンプルデザインで、とても気に入った。贅沢なアルミブロックを切削したボディ、半球形のディスクカバーにより、外部振動やスピーカーの音圧などを受けることなく、トラバースメカの正確な動作を実現する。仕事柄、その頃にも様々なプレーヤーやDACに出会っていたのだが、この時CODAとDAC64Mk2を思い切って購入した。私はその当時から、CHORDがオーディオ再生に対して持つ驚くべき考えに魅了されていた。

「CODA」

ロバート・ワッツ氏が考える理想の音とCD再生の可能性

CHORDは「CD再生にはもっと可能性があるはずで、44.1kHz/16bitのCDに内包する情報をもっと活かすことができるはず」と考えていた。DAC64を世に送り出した当時から、ハイレゾの音の良さも分かっていた。その一方で、「人はなぜ、ハイレゾリューションの音が良いというのであろうか? 50kHzまで録音できるマイクもないのに!」と冷静な分析をしていた。

同社のデジタル再生を一手に担うロバート・ワッツ氏は、良い音と人に感じるものは何なのか音響心理学の側面から考え、理想のDACの構築を目指した。それが「WTAフィルター」という、2000倍を超える桁違いのオーバーサンプリング技術だった。

一般論で言えば、せいぜい16倍〜64倍のオーバーサンプリングが実現できれば不要ノイズは再生帯域外の高域遥か彼方へ追いやることができ、2次から5次程度の軽いローパス・フィルターが使えるはずである。

ロバート・ワッツ氏

しかし、ロバート・ワッツ氏の考えはそうではなかった。同氏は「自然界の音の立ち上がり(トランジェント)」を、言い換えれば、「臨場感に溢れた演奏」を再現するためには、0.5μsというごく短い時間であっても、PCM特有の波形の階段を見えないくらいにまでなくすことことが必要だという、独創的なオーバーサンプリング理論を打ち出した。これがWTAフィルターなのである。これをFPGAで実現したのが「DAC64Mk2」であり、それは後継機「QBD76HDSD」に継承された。

そして、この理想のアルゴリズムをさらに改良して、高速演算を行える最新のFPGAに搭載したのが、今注目されている「DAVE」である。DAVEは2,048倍のオーバーサンプリングを実行するWTAフィルターを搭載する(WTA1とWAT2でそれぞれが16倍し、その後段で8倍する。合計で2048倍)。精密抵抗を高速で切り替えてD/A変換を行うパルスアレーDACも、片チャンネルあたりの抵抗の数を従来の16から20へと拡張。ダイナミックレンジを拡張させつつ音がさらに高密度となり、生演奏を目の前にしているかのような臨場感は従来モデルを大きく上回る。

超解像とも言うべき独自のアップサンプリング技術「M-Scaler」を搭載

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