オーディオ銘機賞2017 銅賞受賞

“音質最優先”のCDトランスポート&DAC内蔵プリメイン。ケンブリッジオーディオ「CXC/CXA80」レビュー

石原 俊
2016年11月21日
英国ケンブリッジオーディオより、現代のオーディオファイルのために完全にリニューアルされたCXシリーズが今年春より登場。 「サウンドファースト(音質最優先)」を徹底追求し、ピュアな再現性を極限まで具現化したシリーズだ。


なかでも代表モデルであるCDトランスポート「CXC」と、DAC内蔵プリメインアンプ「CXA80」のコンビは、その実力が認められ「オーディオ銘機賞 2017」にて見事に三賞入りを果たした。そこで本項ではこの2モデルに焦点をあて、その実力を石原 俊氏がレポートする。

2モデルはオーディオ銘機賞2017 銅賞を受賞した

ブランドの魅力
質実剛健な製品作りで手の届く価格設定も魅力

ケンブリッジはイギリスのオーディオ総合メーカーである。設立は1968年で、ケンブリッジ大学のオーディオ好きの学生たちが集まって社業を始めたという。同社の製品の特徴は質実剛健さで、一般的な収入の音楽好きな人にも手の届くような価格設定がなされている。

ただし、輸入品であるからわが国においては本国よりも割高感があることは否めない。しかしながらヨーロッパのブランドであるがゆえの味わいには格別だ。クルマでいえば、割安で高性能な国産車があるわが国においても、イギリスの小型車ミニが趣味的に乗られているではないか。

CXA80
USB-DACを標準装備、巨大トランス搭載の本格機

CXA80は同社の下から二番目に位置付けられるプリメインアンプだ。USB-DACを標準装備しているのがミソ。PCもしくはストレージとスピーカーを用意すれば、すぐさま音楽を本格的に楽しめてしまう。DACチップはウォルフソンWM8740。USB入力はPCM192K㎐/24bitまで対応している。ブルートゥースにはオプションのブルートゥースレシーバーでの対応だ。

「CXA80」のフロントとリア部。アナログ入力端子はRCA×4、3.5mmステレオミニ×1のほかにXLRも1系統装備。デジタル入力はRCA同軸デジタル×1、光TOS×2のほか、最大192kHz/24bitまで対応するUSB(Bタイプ)も1系統備える。出力端子はRCA×1、3.5mmステレオミニ×1、その他サブウーファーアウトやコントロール、オプションのBluetoothレシーバーBT100が接続できる端子も備える

筐体の剛性はそれなりだが、トロイダル電源トランスを中央に配置し、その両側にパワーアンプのヒートシンクをマウントしているので、持った時のバランスが良い(重量バランスの悪いアンプの音はしばしば音場が歪んでいるような印象を受ける)。

ちなみにトロイダル電源トランスは端子が二系統でデュアルモノ的な使い方がされており、アナログ回路もデュアルモノ的なコンストラクションだ。出力は80W×2(8Ω)で、4Ω時は120W×2と完全なリニアリティが保証されているわけではないが、そのぶんスピーカーを破損させる心配がないともいえる。

「CXA80」の内部。トロイダルトランス/ヒートシンクを中心に配し、L/R chが左右対象になり、シグナルパスが互いに干渉しないように配慮されている

CXC
上級機の技術を踏襲した注目のCDトランスポート

一方、CXCはアナログ出力を欠くCDトランスポートだ。CXA80がDAコンバーターを装備しているので、潔くアナログ入力を省略したのだろう。上級機と同じサーボ回路やトロイダルトランスが奢られており、このクラスのモデルとしてはメカニズムもしっかりしている。このモデルは、ネットワーク再生に特化してしまったシステムのオーナーが、CDも聴きたくなった時の有力な選択肢になりえるだろう。

CDトランスポート「CXC」のフロントとリア部。デジタル出力端子としてRCA同軸×1、光TOS×1を搭載

CXA80+CXCで試聴
バランス感覚に優れ非常に良識的な音質

まずは両者を組み合わせて聴いた。スピーカーはモニターオーディオのGOLD300を用いた。ずばりイギリスのオーディオ音である。バランス感覚に富んでいて、表現が常識的かつ良識的だ。エネルギーバランスはすらりとした摩天楼型だが、低域が不足することはない。ハイエンドアンプのような強引ともいえるほどスピーカードライブ能力こそ有していないものの、聴感上の印象はオリジナルのミニの乗り心地に一脈通じるようなキビキビ感があって、聴いていて気持ちが良い。これは国産のアンプではまず間違いなく得られない聴き味だ。

ジャズではいかにもイギリスのオーディオといった趣のサウンドだ。これはアメリカのアンプでは決して表現できない渋味のある音響世界といえよう。トランペットやシンバルがキンキラキンに輝くのではなく、いぶし銀のような鈍い光沢を放つのである。

思えば、1960年代のイギリス製真空管アンプにはこのような表現をするモデルが多かったが、それらよりもはるかにパワフルで安定した動作をしてくれるのはありがたい。音楽的にはリズムセクション主導型で、その上にブラス楽器が乗っているような印象だ。ヴォーカルは歌詞やフレージングに意識を集中させることができる。英語の発音の聴きやすさも上々だ。

クラシックでは両者の組み合わせのミュージカリティの高さが光った。ディテール感がびっくりするほどあるわけではないのだが、複雑な交響曲の聴こえるべきところが全て聴こえるような表現なので、分析的な聴き方もできる。したがって非文学的・実証的音楽評論をするのにも使用することができると思う。

CXシリーズにはネットワークプレーヤー「CXN」(¥OPEN)もラインアップ。DSD(2.8MHzのみ)をはじめとした高音質ハイレゾ音源が再生可能。また豊富なデジタル入力端子を備え、CDトランスポートやWindows、Mac OSなどのPCと接続しDAコンバーターとしても使用が可能。写真は「CXC」「CXA80」との組み合わせ例

ストレージとのUSB接続で異次元の音響世界が開ける

次にCXA80とfidataのストレージをUSB接続して聴いた。CXCとの組み合わせのようなバランス感覚の良さこそ希薄ではあるものの、これはありだな、と思った。情報量が多く、音楽的なディテール感が豊富で、楽しくてスリリングな時を過ごせる。

192K㎐/24bitともなるとCDクォリティとは別次元の音響世界が開ける。小澤/ボストン響によるレスピーギの「ローマの松」の第四楽章「アッピア街道の松」を聴いたのだが、広くて清潔な音場にローマの軍団が凱旋してくるさまが非常にカラフルに描かれた。イングリッシュホルンの東洋的なメロディも美しい。

CXA60には2系統のスピーカー端子があるので、同じ状態のまま最後にバイワイヤリングを試みた。これは大化けだ。ローマの軍団が倍の人数に感じられるほどスケールが大きい。音楽的なディテールもはるかに増えている。使い勝手が良く、使いこなし甲斐のある製品である。

メーカーは語る
音楽が好きなブランドの作るサウンドを日本のオーディオファンに聴いて欲しい

ケンブリッジ・オーディオは1968年に設立されたオーディオメーカーだが、その歴史の中でブランドとしての取り組みに変化が起きている。それは、創業当初は技術に注力していたが、よりユーザーの目線に立ち、音楽を楽しむためのオーディオを開発するようになったというものだ。その理念は、開発に携わる全員が音楽好きで、自身が音楽を楽しみたいという意識を持つことから実現している。それは、同社の代表であるジェイムス氏の言葉からも色濃く表れている。

CAMBRIDGE AUDIO CEO James Johnson-Flint氏

「ケンブリッジ・オーディオでは、高すぎない価格設定でハイレベルな製品を作りたい、と考えています。多くの人に、良い音楽を聴いて欲しい。最新のCXシリーズも、そうしたコンセプトのもと開発しているため、販売価格以上の技術を投入しています」

ケンブリッジ・オーディオの製品は、そのどれもがコストパフォーマンスの高さでも評価を集めている。これは氏が語る理念の体現とも言えるが、それを成すためには並々ならぬ企業努力が必要だ。「この理想を実現するのは、言葉にするほど簡単ではありません。CXシリーズはシンプルな構成で最良の音を獲得するために、1から設計を行っていますが、これはエンジニアにとっては難しい注文となります」。

「ですが、現場にとっては大変なことであっても、それだけの価値があるからこそチャレンジするのです。また、品質を重視し、外部に託さず自社工場で製造することで、あらゆる工程においてクオリティを低下させないよう一貫して管理しています」。

技術を徹底した歴史がベースにあることが、音楽性を追求することに良い形でつながっているということだろう。では、同社による音作りはどういったものなのだろうか。

「音楽の繊細な機微を感じ取れるような、オーディオ的な性能はもちろん、音楽好きとしても納得のいくサウンドを目指しています。また、個人的にはアナログも好きですが、より大多数の人が触れているデジタルの音を楽しく聴けることを考えています。自分たちが楽器を弾いているので、音決めにあたってはそういった感性も活かされていると思います。また、イギリスの音はベーシックを貫いているので、その部分は日本に合っているのではないでしょうか」。

最後に、同社のこれからの展開について聞いた。

「まずはいまのCXシリーズをしっかりと展開していきたいと考えています。このシリーズには自信がありますし、嬉しいことに実際に高い評価をいただけています。特にこれまでオーディオに触れたことのない若い層に、広くアピールしていきたいです。また、より上のハイエンドな製品に関しても計画はありますが、そのマーケットには歴史あるブランドが多数ありますので、難しいことも分かっています。そのため、エンジニアには時間やコストを掛けても良いから、既存品に負けない優れた製品の開発を進めるよう意識しています」。

日本、そして世界オーディオファンから、ケンブリッジ・オーディオが評価される理由は、こうした真摯な姿勢にあるのだろう。同社の展開にこれからも期待したい。(編集部)

CDトランスポート
Cambridge Audio CXC
¥OPEN(市場予想価格¥80,000前後)
Specifications
●出力系統(デジタル):S/P DIF RCA同軸×1系統、S/P DIF RCA TOS×1系統 ●コントロール端子:Control Bus in/out、IR in ●消費電力:最大=25W ●外形寸法:430W×85H×315Dmm ●質量:4.7kg


プリメインアンプ
Cambridge Audio CXA80
¥OPEN(市場予想価格¥160,000前後)
Specifications
●出力:80W×2(8Ω)、120W×2(4Ω) ●周波数特性:<5Hz-60kHz+/-1dB ●S/N比(1W/8Ω):>93dB ●入力系統(アナログ):アンバランスRCAorバランスXLR(L/R)×1系統、アンバランスRCA(L/R)×3系統、3.5mmΦステレオジャック(L/R)×1系統 ●入力インピーダンス:50kΩ(バランスXLR)、43kΩ(アンバランスRCA) ●DAコンバーター:WolfsonWM8740 ●入力系統(デジタル):USB(B-type/USB1.0-2.0)×1系統、S/PDIF RCA Coaxial×1系統、S/PDIF TOS×2系統、USB(A-type/BT100専用)×1系統 ●出力系統(アナログ):PreOutアンバランスRCA(L/R)×1系統、SubwooferOut×1系統、3.5mmΦステレオジャック(L/R)×1系統 ●コントロール端子:ControlBusin/out ●消費電力:最大=750W、スタンバイ=<0.5W ●外形寸法:430W×115H×341Dmm ●質量:8.7kg