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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第150回】田村ゆかりさんに捧ぐ!ラジオ「いたずら黒うさぎ」歴代OP/ED曲をオーディオ目線で語る

2016/03/25 高橋 敦
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▼Lovely Magic(シングル「Lovely Magic」より)

2003年04月05日から2003年10月04日のOP曲。つまり「いたずら黒うさぎ」初代OP曲だ。またイレギュラーなことに、リスナーからの指摘に応え「アイドル声優としての初心に帰る」という理由で復刻版的な内容を試みた、2004年09月18日の放送のOPにも使われている。

Lovely Magic(シングル「Lovely Magic」より)

ただ、その最初期においてはOP曲の前にミニコーナー「いたずらカウンセリング」が配置されていたので、この曲で「いたずら黒うさぎ」が始まっていたわけではなかったりする。とはいえ歌詞に「黒ウサギ」や「いたずら」といった言葉が盛り込まれているあたりはさすが初代OPだ。

音楽的にはまず、あえてチープにまんま打ち込みっぽく仕上げてあるドラムスが印象的だ。ベースもあまり動き回ることなくソリッドな音色でルート音を叩く場面が多い。低域が膨らんでしまうオーディオシステムだとそれらの再現が弱くなって全体にキレが甘くなりがちなので、そこは考慮したい。

それらによる堅実なリズムの上で、シンセの様々な音色は面白味のある使い方をされている。シンプルなピコピコフレーズだけれど左右へのパン(定位の振り)が効果的に用いられていたり、深いディレイやリバーブで奥行きも演出して場面を切り替えたりと、空間を大きく使ったアレンジとミックス。

左右の動きはヘッドホンやイヤホンの方が派手に楽しめるが、ディレイやリバーブが派手にかかる場面の「広がる!」感はスピーカー再生の方が楽しめるだろう。どちらも捨てがたいのでどちらでも聴いてみてほしい。

エンディング前には音数を一気に減らす場面が二箇所ある。ドラムスを残して他の多くを削ぎ落とした上でゆかりさんが「I wish」を繰り返すところと、その少し後のサビでゆかりさんの歌とピアノ、そして左右の「ゆかりんコーラス」になるところだ。

この曲の頭でもすでに炸裂している「ゆかりんコーラス」は超重要ポイントだが、これについては他の多くの曲でもポイントになるので、後ほどのどこかで改めて触れる。

オーディオ的なポイントとしては特に後者。ボーカルとピアノを音場中央にモノラル的にまとめ、ゆかりんコーラスをステレオ感たっぷりに大きく左右に振るという定位だ。ここまで空間を広く使ってきたところから音数も定位もばっと抜いてシンプルにする、そのコントラストによってこの場面がより鮮やかになる。

再生時にそのコントラストをより鮮やかにするには、その場面の前までの「空間を広く使って」の部分をしっかり再現して、その瞬間に向けての落差を作っておくことが必要だ。やはり空間性に優れた再生システムでこそ、この曲全体もこの場面この瞬間も、より楽しめると思う。

さてゆかりさんのこの曲での歌声は、ゆかりさん独特の手触り感、僕はそれを「猫の舌のように心地よいざらつき」と感じているのだが、それが特に強めに思える。他の曲にもその手触りはもちろんあるが、それを強めに出している曲とそうではない曲があるのだ。そこを出す出さないは曲に合わせての表現、歌い方と録音、それらでの意図的な部分も大きいと思う。

だからこそこの曲のようにそれを強く出している曲では、その「手触り」「質感」といった要素の再現性に強みを持つオーディオで聴くことでその表現、その表現の意味が、より強く伝わってくるはずだ。そこはぜひ考えてみてほしい。

ちなみにこの時期においてゆかりさんは、コンビニで見かけたご友人にそのゆかりんボイス(しかも大きめ)で、
ゆ「お姉ちゃんもう早く帰ってきなよ!お母さん心配してるよ!」
ほ「ゆかりちゃんやめて!ここよく来るコンビニなんだから!」
ゆ「何お姉ちゃんわけのわかんないことゆってんの。そうやってすぐやなことあったらさ、ここに来るでしょ?」

といういたずらを仕掛け、以降そのご友人がそのコンビニに行きづらくなった原因を作っている。若干ひどい。いまは同い年だがこの時点ではまだ、堀江由衣さんより一学年上のお姉さんだったはずなのだが。

なお2007年03月まではゆかりさんはコナミのレーベルに所属しており、この曲もコナミから。この時期は番組スポンサーもコナミだ。さらになお、コナミ期よりもさらに前のポリグラム期の作品は入手困難が続いていたが、去年2015年にコレクションアルバム「Early Years Collection」としてまとめられているので、未チェックの方はそちらもぜひ。

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