HOME > レビュー > 【第150回】田村ゆかりさんに捧ぐ!ラジオ「いたずら黒うさぎ」歴代OP/ED曲をオーディオ目線で語る

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第150回】田村ゆかりさんに捧ぐ!ラジオ「いたずら黒うさぎ」歴代OP/ED曲をオーディオ目線で語る

公開日 2016/03/25 10:45 高橋 敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

▼Super Special Smiling Shy girl(シングル「You & Me」より)

2009年11月28日から2010年08月21日のOP曲。この曲がOPの間に、ゆかりさんは17回目の17歳のお誕生日を迎えた。

Super Special Smiling Shy girl(シングル「You & Me」より)

ゆかりさんの曲としては珍しい気がする、スタスタスタスタ!というストレートにアッパーでかなりアップテンポな縦ノリ曲だ。ライブでも全体の流れのアクセントになり、その縦ノリとエンディングで観客席が大合唱になるところなど、一体感を特に感じられる曲のひとつと思う。

BD化もされている2015年02月の武道館公演「LOVE LIVE *Lantana in the Moonlight*」においてアンコールのラストに披露され、武道館をまさにひとつにしたことも記憶に新しい。ああ見えてマスクさんも内心は大興奮だったはずだ。クルピヨンだって「マスクの下に秘めた恋心」と歌っている。

そのエンディングで合唱になるフレーズ「Super Special Smiling Shy girl」。最後に合唱になるそのフレーズそのメロディ、改めて確認すると観客だけではなくゆかりさんご自身も、そのエンディングパートになるまではそれを歌っていない。なのにあのフレーズあのメロディの印象が強烈なのは、もちろん最後にみんなで合唱しているからというのもあるだろうが、おそらくと思われる理由は他にもある。

まずイントロを聴いてみてほしい。ゆかりさんは歌っていないがギターがあのメロディを歌っている。イントロは曲の印象を大きく左右すると同時に、そのイントロ自体もリスナーの印象に強く残る。

そしてサビ。ゆかりさんとゆかりんコーラスが掛け合うように歌っているのもポイントだが、それはどちらもあのフレーズではなく別のメロディだ。

しかし耳を凝らしてみてほしい。その後ろに控えめの音量にミックスされている、イントロと同じようにあのフレーズを歌っているギターに気付くはずだ。「Melody」のピアノのフレーズと同じ、イントロのフレーズをサビの裏にも置く手法を、あちらよりもこっそりとやっている。

そして続いての一番と二番の間ではまたイントロと同じく、ギターが前に出てあのフレーズを歌う。このように繰り返して用いられているわけだから、これはリフと捉えてよいだろう。この曲のもうひとつの顔と位置付けられているフレーズだ。

言われなくても気付いていたよという方も多いだろう。しかし言われてみたらそういえばという方も、何割かはいたのではないだろうか。そこがこの編曲やミックスの巧いところだ。そのメロディをあらかじめさりげなく各所に忍ばせておき、それを最後の最後、エンディングでバーンとゆかりんコーラスで出してくる。
「Melody」と同じ手法を発展させてさらにインパクトを強めた使い方、とでも言えばよいだろうか。勢いで押し切っている曲のようでありながら実は巧妙。音楽というものの奥深さを感じさせるアレンジだ。

それでそのサビの後ろのギター。これが「さりげなく」「忍ばせ」な控えめの音量でミックスされているので、ひとつひとつの音が不明瞭すぎる再生環境だとリスナーの意識にも無意識にも残りにくいかもしれない。このサイトこの連載の読者の方の再生システムなら問題ないだろうが、再生音量を徐々に下げていけば、他のパートよりも先にそのギターが聴こえにくくなる様子を疑似体験できるかと思う。

ということでこの曲も「ストレートにアッパーでかなりアップテンポな縦ノリ曲」でありつつ、しっかりとしたオーディオシステムで聴くことで「仕掛け」が強く発動し、さらに魅力的になる。どこからかこの記事に流れ着いてきてくれた非オーディオファン、付属イヤホンやパソコンの内蔵スピーカーでこの曲を聴いている方も、いつかぜひしっかりとしたオーディオシステムで聴いてみてほしい。

そういえばこの曲このフレーズも、「Cherry Kiss」のところで触れた「そこライブアレンジはどうするの?」問題の一例として面白いと思う。お手持ちの方はBDで確認してみてほしい。

そしてもうひとつ。その最後の「Super Special Smiling Shy girl」の合間に挿入されているバンド全体での「ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!」のキメ。これはもう、ライブでコールを入れざるを得ない仕掛けと言えるだろう。最初の方で触れた要素も含めて、この曲はいわゆる「ライブ映え」を強く意識して作られているのではないかと思う。

なお僕が「田村ゆかり」という存在に興味を持ち始めたのはこの時期にとあるウェブサイトに掲載されていたライブレポートがきっかけだったと思う。「LOVE LIVE 2009-2010 *Princess a la mode* 名古屋公演」のレポートのこの記述、

「ゆかりん、アンコールでバック宙きめた!すげー運動神経!」

は衝撃だった。実際に歌い踊るその姿を見る前に僕の心に刻み込まれた想像上のゆかりんは、バク宙きめてたのだ。僕はラジオ好きだったので、そこからゆかりさんの音楽作品でもご出演アニメでもなく、いきなり「いたずら黒うさぎ」に向かった。そして現在に至る。

次ページそろそろラストスパート、次は「恋と夢と空時計」

前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE