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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第147回】アイアン・メイデンとは、正義。 “メイデンヘッドホン” でメタルの名曲を聴きまくる!

公開日 2016/02/26 10:15 高橋 敦
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▼Tool「Stinkfist」

1996年発売「Ænima」に収録:世代的にはレイジと同じあたりでギタリストのアダム・ジョーンズ氏はレイジのトム・モレロ氏と高校の同級生らしいのだが、サウンド的には彼らと同じ流れにはなく、鉄球付きの足枷を引きずるようなヘヴィネスは、ブラック・サバスのそれを思い起こさせる。それでいて懐古的な雰囲気ではなく、なんとも不思議なサウンドだ。

<聴きどころ:00分13秒〜00分36秒>
ギターのフィードバックを裏返してハウリング気味にするイントロからオープニングのリフが始まる部分。ここで「いいな」と思わされたのは高域の綺麗さ。フィードバックからのハウリングというところは、言うならば「音楽的なノイズ」であり、音色としてはノイズに近いのだが演奏者が意図的に出しているという意味では楽音だ。しかしノイズというのはやはりノイズなので、意図的に操るのが難しく、楽音として成立させるには、使いどころを選ぶセンスと同時に、その使いどころで確実にノイズるテクニックも要求される。それを見事に成功させているのがこの演奏だ。

その見事な音はぜひとも全力の再生音質で堪能したいわけだが、メイデンホンの高域は繰り返し述べているように実にクリア。裏返されたハウリングの金切りっぷりもいい感じで、耳やら脳やらを切り裂きつつも不快ではなく快感。またそれに続くリフではハイハットシンバルが印象的なリズムを刻んで重要な役割を担っているが、その整った音色やダイナミクスの細やかな表現もやはり見事。

▼Jason Becker「Altitudes」

1988年発売「Perpetual Burn」に収録:メタル系ギターのインストゥルメンタルも入れておきたい…ということで選んだ一曲。そういう枠となればジェイソン・ベッカー氏のこのアルバムからの選曲になるのは必然だ。メタル系ギターのソロプレイにおける超絶技巧の追求が過激化していた1990年代。その極北の一つと見なされる名盤。しかしそれが時代の変わった今も評価され続けていることが、この作品が超絶技巧だけのものではなかったことの証左と言えるだろう。

<聴きどころ:01分24秒〜01分57秒>
音を歪ませないクリーントーンでのソロ部分。なのでこの部分だけだと実はあんまりメタルっぽくはないのだが、しかし聴きどころであることは間違いない。ユニットを組んでいたマーティ・フリードマン氏の影響もあったのか、彼の音のため方やひねり方、揺らし方や装飾音などに独特のニュアンス、つまり「こぶし」がある。そこも彼のギターの面白味であり、そこが特に表に出ているのがこのクリーントーンでのソロだ。

で、ニュアンスや装飾音といった細かな部分のことなので、それを存分に感じるにはそういった細かな様子までくっきりと届けてくれる再生環境が欲しい。メイデンホンは、そこは全く問題なし。ピックのコントロール、あるいはピッキングしないでフィンガリングで音を柔らかに詰め込む箇所など、演奏の繊細さ、それによる表現がよく伝わってくる。

またミドルレンジのクリアさやアタックの明瞭さというメイデンホンの特徴は、この曲の他の箇所、ディストーションでの極限の速弾きが詰め込まれている場面でも発揮される。音がぎゅうぎゅうになって埋もれてしまうことも、もたついて取りこぼしてしまうこともない。

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