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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第147回】アイアン・メイデンとは、正義。 “メイデンヘッドホン” でメタルの名曲を聴きまくる!

公開日 2016/02/26 10:15 高橋 敦
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▼Pantera「A New Level」

1992年発売「Vulgar Display Of Power」に収録:あえて(真空管ではなく)トランジスタのアンプを愛用した独特の音作りやワーミーペダルの一早い活用などで、後続ギタリストにも大きな影響を残したダイムバッグ・ダレル氏を擁したバンドの名曲。音作りで言えばドラムス、特にバスドラムのアタックが過激に強調されていることもポイント。「スラッシュメタルとハードコアを足して二で割らないで足しっぱなし」みたいな超硬質高密度サウンドの中からも、バスドラムの細かなフレーズがガチンと抜けてくる。

<聴きどころ:00分30秒〜00分52秒>
イントロ後半、歌に入る直前までの部分。これぞパンテラ!といった俗悪脳殺鎌首激鉄な感じのやばいサウンドだ。…なのだが、この曲というかパンテラとこのメイデンホンは、僕の好みでいうと相性がいまひとつ。ギターの生々しさや暖かみ、ドラムスの余韻や空気感といったところが豊かに引き出されるのだ。

…うん、通常であればそれはよいことだ。「No Respect」「Horse Called War」ではそこを評価した。しかしパンテラとなると話は別だ。もっと無慈悲なサウンドを求めたい。メイデンホンでさえもフィットしないサウンドまで含まれるというのは、メタルというジャンルの幅広さを示すポイントだ。そう解釈しておこう。

▼Rage Against The Machine「Guerilla Radio」

1999年発売「The Battle Of Los Angeles」に収録:総合格闘技イベント「PRIDE」のテレビ放送のテーマ曲! …ということで僕にはおなじみだが、そういうのは関係なく重要なバンドの重要な名曲。メタルにヒップホップの感覚をまさにミックスすることで、伝統的なメタルが低く評価されていた時代にもメタル的なサウンドを高らかに世に届けてくれていた。トム・モレロ氏の独創的なギタープレイも魅力で、彼もまたワーミーペダルを定着させた重要人物の一人と言える。

<聴きどころ:00分36秒〜01分14秒>
この曲の中で特にヒップホップ感の強い部分で、サンプリングのループっぽくシンプルなフレーズを叩くドラムスに、ギターもシンプルなワウプレイ、ベースの躍動が目立ち、そしてボーカルは完全なラップスタイルだ。メイデンホンとの相性はというと…良い!

となると、この流れで気になるのは「なぜパンテラには合わなくてレイジには合うのか?」というところだろう。なぜかというとおそらく、ここまで何度か述べてきたように「メイデンホンは音色の質感やローエンドの空気感を強めに引き出す」からだと思う。「質感」や「低音の空気感」はヒップホップサウンドの重要ポイントだ。だからメタルにそれを取り込んだレイジのこの曲には合う。そういうことではないだろうか。

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