2.8 MHz DSDと96/24 PCMで

MAYAさん「DSDは毛穴で聴く音」。HQM STOREで最新作『Jazz A Go Go』がハイレゾ配信

公開日 2016/02/16 17:38 編集部:小澤貴信
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クリプトンが運営するハイレゾ配信サイト「HQM STORE」は、女性ジャズボーカリスト MAYAの最新作『Jazz A Go Go』のハイレゾ音源(PCM/DSD)を2月17日より配信する。

『Jazz A Go Go』

MAYA『Jazz A Go Go』 2月17日配信開始
・FLAC 96kHz/24bit ¥2,469(税込)
・ALAC 48kHz/24bit ¥2,400(税込)
・DSD 2.8MHz(DIFF) ¥2,496(税込)

MAYAは、2004年にアルバム『MAYA』でメジャーデビュー。本作がSwing Journal誌選定『ゴールドディスク』を受賞した。翌2005年は5thアルバム『Love Potion No.9』で同誌の「ジャズディスク大賞」「ボーカル賞(国内部門」を受賞。現在まで14作品のCDがリリースされている。

今回配信が開始される『Jazz A Go Go』は、ジャズアレンジのシャンソンをフランス語で歌い上げた最新作。CDは昨年12月に発売され、Jazz JAPAN Awards 2015にてアルバム・オブ・ザ・イヤー(高音質ソフト部門)を獲得した。

MAYAさんと松尾明さん

本作は96kHz/24bitにて録音。DSDについては、JVC KENWOODマスタリングセンターにてDXD(352.8kHz/32bit)編集によるDSDリマスタリングが行われた。また、本作の録音時にはクリプトンが手がけるオーディオアクセサリーが用いた音質チューニングが行われ、音質監修をオーディオ評論家の林正儀氏が務めた。

MAYA「DSDはジャズ特有の人間のぬくもりを表現してくれる」

本日開催された発表会には、MAYAさん、プロデューサーを務めたドラマーの松尾明さん、林正儀さんが登場。本作の製作秘話や聴きどころを語ってくれた。

MAYAさんは本作を“ジャズとシャンソンを合わせたジャスソン”だと説明する

クリプトンは、HQM STOREにて2012年にMAYAさんのアルバム『BLUEAY MAYA in Hi-Fi』をハイレゾ配信開始。さらには同社のハイレゾ対応オーディオシステム「KS-1 HQM」の“MAYAモデル”としてカナリアイエロー・バージョンを発売した(関連ニュース)。

『Jazz A Go Go』ではシャンソンやフレンチポップスが歌われているが、MAYAさんは「特にフランス語の響きにこだわりました。“ジャズシンガーが歌うシャンソン”ということを特に意識しました。歌はシャンソンでも、演奏にはゴリゴリのジャズメンバーに入ってもらって、その音に触発されながら、アフタービートを感じながら歌っています」と聴きどころを紹介してくれた。MAYAさんは本作を「ジャズ+シャンソンという意味で、“ジャズソン”と名付けたいと思っています」とも語っていた。

ちなみに今回の作品は3年振りのアルバムとなるが、この3年間にMAYAさんは、学校に通ってフランス語の発音はもちろん、語学・文化・アートを勉強してきたのだという。

MAYAさんとコラボした100セット限定モデル「KS-1HQM(M)」

音楽プロデューサーを務めた松尾さんは、本作を録音するにあたってMAYAさんが自身の作り上げたいサウンドイメージを事前に録音エンジニアに伝え、相談していたことも明かしてくれた。

「ミュージシャンが録音前にエンジニアとコンタクトを取るというのは異例なことです。MAYAさんからは、“日本で最も音のいいアルバムにしたいので、自分の音へのイマジネーションをエンジニアの方に伝えたい”と相談を受けました。本作のサウンドは、その元となる部分からMAYAさんがクリエイトしたと言えるでしょう」(松尾さん)

本作は登場後、Amazonでもジャズ部門で1位を獲得。各ジャズ誌でもアワードを受賞するなど高く評価された。発売前には予約で初回プレスが完売し、2次プレスも12月いっぱいで完売したとのことだ。なお本作は、CDと共に180g重量盤のアナログレコードもすでに発売されている。

MAYAさんは本作のハイレゾ音源のサウンドの印象も語ってくれた。「本作は高音質CDのUHQ-CDでリリースしたこともあり、CDの音質も非常に素晴らしいものだと感じていました。しかし、その後に聴いた96kHz/24bitのPCMは、そこからさらにクオリティーが上がったと感じました。本作ではライブ感を出したかったので、各ミュージシャンにも“歌伴という意味での演奏をしないで、自分の音を奏でてほしい”と伝えていたのですが、ハイレゾではそのニュアンスがより明確に聴き取れると感じました」(MAYAさん)。

しかし、特に強い印象を受けたのはDSD音源だったとのこと。「私はこれまでDSDの音を体験したことがなかったのですが、DSDで本作を初めて聴いたときには“音を耳で聴く時代は終わったな。DSDは全身の毛穴で聴くんだな”と思いました。DSDはそれくらい皮膚に染みこむような音で、人間のぬくもりを感じる暖かみのあるサウンドでした」(MAYAさん)。

DSDのサウンドが当初のイメージに最も近かったとMAYAさんは語る

それでは、MAYAさんが事前にエンジニアに伝えたという音のイメージに一番近かったのは各メディアの中でどの音だったのだろうか。MAYAさんは「CDも素晴らしい音に作りあげられたと自信を持って言えるし、その音がベースにあってこそのハイレゾだと思います」と前置きした上で、「でも、一番イメージに近かったのはDSDです」と答えてくれた。

「ジャズは人間に一番近い音楽だと私は思っています。ジャズはインプロビゼーション(即興)であり、演奏者やボーカリストが即興で音を出していきます。それはまさに人間の感性のぶつかり合いです。だからジャズには、他のジャンルの音楽にはない、その場でしか出せない音、生きている音楽があります。だから人間に近い音楽なのです。人間のぬくもりを感じることのできるDSDのサウンドは、私が最初にイメージした音にとてもマッチしていました。」(MAYAさん)

松尾さんも「DSDの音は初めて聴きましたが、腰が抜けるくらい驚きました。本当にショッキングな音だった」と語っていた。

録音時にはクリプトンのアクセサリーを使用

今回のレコーディングでは、クリプトンの電源タップ「PB-HR1000」、オーディオボード「AB-HR5」、電源ケーブル「PC-HR1000M」、インシュレーター「IS-HR5」が用いられた。昨年発売されたPC-Triple C採用の電源ケーブルであるPC-HR1000Mは、今回初めて用いられた。

レコーディング時に使用されたクリプトンのアクセサリー

MAYAさんの作品でオーディオをプロデュースしたのは『BLUEAY MAYA in Hi-Fi』に次いで2回目となる林正儀氏は、クリプトンのアクセサリーを本作のレコーディングで用いた背景についても語ってくれた。

林正儀氏

「今回の作品はオルガンなど楽器の数も多く、従ってマイクの数も多くなりました。だからこそ、たくさんの情報量をいかにピュアに、かつ整えて取り込むかを意識して、アクセサリーの導入を行いました。特にマイクアンプの電源にクリプトンの製品を用いた効果は大きかったです。前回の時はまだ発売されていなかったPC-Triple Cの電源ケーブルが使えたことも、音質向上に貢献してくれました。スタジオのエンジニアは通常、外部から機材を持ち込まれるのは嫌がるのですが、クリプトンのアクセサリーの音質改善効果には驚いていました」(林さん)。

クリプトンのオーディオ部長である渡邉勝氏は「DSDについては、マスター音源のスペックである96kHz/24bitと親和性の高い2.8MHz DSDでリマスタリングしました。マスターのイメージを大きく変えることなく、かつPCMとDSDの違いがしっかりわかるようになったと思います」とコメントしていた。

クリプトン 渡邉氏

発表会冒頭では、クリプトンの田社長が挨拶。「ハイレゾという言葉が定着し、ハイレゾ対応機器もハイレゾ音源も増えてきたが、“ハイレゾまがいのもの”も増えてきてしまったという印象を受けます。ハイレゾ配信でもハイレゾ対応オーディオシステムでも他社に先駆けたクリプトンとしては、ここで原点に帰り、改めてハイレゾ本来の上質さを極めていきたいと考えます。だからこそ、HQM STOREで配信するハイレゾ音源も丁寧に厳選して提供していく所存です」と述べた。

クリプトン 田社長

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