新開発の3モデル展開

【試聴レビュー有】JVC、木の音響効果を高めた「HA-FX850」など“ウッドシリーズ”のイヤホン3機種

2014/01/28 山本 敦
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JVCケンウッドは、木の振動板を採用した“ウッドドームユニット”搭載のカナル型イヤホン「HA-FX850」「HA-FX750」「HA-FX650」の3機種を、JVCブランドから2月下旬に発売する。

HA-FX850


HA-FX750

HA-FX650
価格はオープンだが、FX850が38,000円前後、FX750が28,000円前後、FX650が19,000円前後で販売される見込み。なお、新製品の発売後、FX700/FX500は販売終了予定。

“ウッドドームユニット”搭載のイヤホン3機種が登場 ー 最上位機はリケーブル対応

それぞれ2008年に発売された「HP-FX500」、2010年発売の「HA-FX700」を継承する「木」の振動板による“ウッドドームユニット”や、新開発のウッドディフューザー、ユニットの振動ロスを広帯域で低減する新構造の“アコースティックハイブリッドダンパー”の搭載などが特徴となる。

3機種ともにウッドハウジングを採用

最上位モデルのFX850はリケーブルに対応。プラグ形状はMMCXを採用する。

FX850はリケーブル対応

コネクタはMMCX

FX850は11mm口径のダイナミック型・ウッドドームユニットを採用。線材は4N OFCとし、ケーブルの強度を高めるため被覆を厚くしたことで、本機のケーブルのみ太さが異なっている。再生周波数帯域は6Hz〜45kHz。出力音圧レベルは106dB/1mW。

左がFX750、右がFX850。ケーブルの太さが少し違う

FX850のユニット分解図


FX850のハーフカット。木製の素材を効果的に配置している

FX850の筐体カットモデル
FX750は10mm口径のダイナミック型・ウッドドームユニットを採用。線材は4N OFC。再生周波数帯域は6Hz〜40kHz。出力音圧レベルは105dB/1mW。

FX650は8.5mm口径のダイナミック型・ウッドドームユニットを採用。線材は4N OFC。再生周波数帯域は6Hz〜30kHz。出力音圧レベルは100dB/1mW。

全機種ともにインピーダンスは16Ω。ケーブルの長さは1.2mのY型で、プラグは金メッキ処理の3.5mm ステレオミニ ストレートプラグ。

3機種ともにカナル型イヤホンではあるが、本体の前面・背面に開口部を設けることで、クリアで開放感のある音づくりを狙っている。

FX850の本体。背面に小さな孔を配置

フロント側にも小さな孔が設けられ、ヌケ感のあるサウンドを実現した

イヤーピースはシリコン製がS/M/Lの3サイズ、低反発がS/Mの2サイズを同梱。シリコン製イヤーピースは新開発の「スパイラルドットイヤーピース」。内部にゴルフボールのようなディンプルをスパイラルに配置。通常のイヤーピースでは、振動板から放出される音が内部で反射することで音の濁りに繋がっていたが、ディンプルで拡散させて、よりクリアな音を実現する。

イヤーピース内部で発生する反射音を効果的に抑制する「スパイラルドットイヤーピース」を新規採用

内側にディンプルを配置し、音を拡散させる


3機種ともにストレートプラグを採用。FX850のみ、プラグ部のつくりが堅牢に強化されている

こちらはFX750のプラグ部

木製素材のメリットを活かした部材・アプローチを追加投入

新製品の開発意図と技術的な特徴については、同社オーディオ事業部 技術統括部 アコースティック技術部の宮澤貴之氏が説明した。

JVCケンウッド 宮澤貴之氏

従来機種のFX700/FX500では「空間表現力」を実現することがテーマだった。新製品では空間表現力のさらなる強化と、分解能の向上に挑戦。「小さい音で入力したときの分解能を上げて、ダイナミックレンジを高めることで、原音をより生々しく再現できるようになった」と宮澤氏は説明する。「木」をメインの素材として用いる理由については、「適度な内部損失があり、美しい響きを持たせられるので、音響素材として好適である」ことからだとする。「新製品では、アコースティック楽器をチューニングするように、音を決める要素となる他のパーツとの組み合わせも吟味しながら音を作ってきた」と続ける。

新しいウッドシリーズの要素技術は大きく3つある。


ウッドドームユニットの解説図
新開発の「ウッドドームユニット」は3モデル全てが採用しているもので、それぞれにパラーメタが最適になるようチューニングされている。センター部に配置するウッドドーム振動板は、従来機を踏襲して「樺(カバ)材」を採用。薄膜加工してドーム上に成形加工し、ベース材に貼り合わせている。


ウッドプレートを配置して反射音を効果的に拡散・調整した
振動板の背面にはバスウッド材を使った「ウッドプレート」を搭載し、反射音の拡散を調整。従来は前方に放射される音と金属プレートからの反射音が混ざり合ってしまうことで、分解能を高めることが困難だったが、新製品ではウッドプレートを金属プレートの上に配置して、今まで反射音の混ざり合いで分解音の阻害要因となっていた音を吸収・拡散調整。ユニットの余分な振動を抑えて、高分解能を実現している。


ウッドディフューザーも振動板からの反射音を自然に広げる効果をもたらす
さらにブラスリングの前面に「ウッドディフューザー」(こちらもバスウッド材)を設けて、振動板からの放射音が滑らかかつ自然に広がるよう調整している。ウッドプレートと同じアイデアから生まれたもので、音の歪みや濁りの原因となっていたユニット前面の金属キャップから発生する付帯音を、木製素材で拡散調整。自然な広がりを実現している。


アコースティックハイブリッドダンパー、ウッドリングアブソーバーを配置

FX850/750はユニット前面もブラスリングで抑える「アコースティックデュアルハイブリッドダンパー」仕様
本体の構造は「アコースティックハイブリッドダンパー」を採用。ユニットの固定に高比重のブラスリングを配置して、ユニットの不要振動を抑制。これに加えて、新製品では「ウッドダンパー」と呼ばれる木製素材を配置して、ブラスリングからの振動を効果的に吸収させている。さらにFX850/FX750の2機種には「ウッドリングアブゾーバー」をノズルの音の出口付近に設けて筐体の響きを最適化する「アコースティックデュアルハイブリッドダンパー」を採用。木による自然な音場と、高解像サウンドを両立させている。

宮澤氏は「音づくりの工程ではカット&エラーの繰り返しだった。数々の苦労を経て、木の部材を効果的に使いながら空間表現力の向上、高分解能の実現に辿り着くことができた」と製作の過程を振り返りながら、「ハイレゾ音源のクオリティを余すところ再現できるイヤホンが完成した」と自信を込めて語った。


3機種の音を聴いてみた

本日の発表会場に展示されたウッドシリーズの新製品3機種を短い時間ながら試聴できる機会を得た。


左からFX650/FX750/FX850
最上位のFX850は11mm口径の大型ユニットを搭載していることから、イヤホン部の筐体サイズが他の2機種と比べてわずかに大きめだが、耳の中に挿入するとフィット感は悪くない。ケーブルも他の2機種よりも太めだが、柔軟性が高く取り回しがよい。一般的なMMCX端子を採用しているので、リケーブルはぜひ楽しんでみたいところだ。

Perfumeの「Baby cruising Love/GAME」は広大な音場空間に楽器やボーカルの演奏がクッキリと浮かび上がる。アタック感はタイトでスピーディー。音の響きは芳醇だが無駄がなくスマート。低域は歪みが抑制されており、力強さとクリアさを兼ね備えている。

リチャード・ペイジ「Kiss On The Wind/Solo Acoustic」のアコースティックギター弾き語りは温かみのある楽器とボーカルが魅力。倍音成分が豊かで響きも芳醇。筐体に開口部が設けられたことで、適度に音のヌケがあり、高域の透明感が非常に気持ちよい。FX700のサウンドにいっそうの情報量が加わり、濃密さを増した印象だ。ハイレゾの再生では、イヤホンで聴いているのに、まるでスピーカーで聴いているように強い体感イメージが得られるインパクトのあるサウンドだ。

FX750は、FX850に比べると低域の立体感がややコンパクトになるが、カッチリとしてタイトな音像。高域のスピード感が豊かで、ロックのドラムスはビシビシとタイトに決まる。スネアやハイハットなど金属楽器の響きには無駄がなく、低域の音像もシャープな輪郭だ。FX650は音像のフォーカスがややマイルドになるが、空間表現の巧みさや音の響きの豊かさはシリーズならではのものだと思う。ハウジングが最も小柄なので着け心地も良い。


5月発売予定のハイレゾ対応ポータブルヘッドホンアンプ

K2テクノロジーのON/OFFが選べる
5月発売予定のヘッドホンアンプの試作機にFX850をつないで聴いてみた。サウンドイメージが広がりを増して、SNが向上、ノイズフロアが低減されることで見通しがよりクリアになる印象。アコースティックギターは音符のアラインメントが正確に揃い、中域の弦の響きは和音のハーモニーがしっかりとまとまって、束になって迫ってくる力強さがある。ヘッドホンアンプは間もなく最終の音質調整が完了して、具体的な発表が発表されるそうなので、こちらも期待しながら待ちたい。


【問い合わせ先】
JVCケンウッドカスタマーサポートセンター
TEL/0120-2727-87

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  • ジャンルヘッドホン(単体)
  • ブランドJVC
  • 型番HA-FX850
  • 発売日2014年2月下旬
  • 価格¥OPEN(予想実売価格38,000円前後)
【SPEC】●ドライバーユニット:11mm口径 ウッドドーム ●音圧レベル:106dB/1mW ●再生周波数帯域:6Hz〜45kHz ●インピーダンス:16Ω ●質量:約13g
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【SPEC】●ドライバーユニット:10mm口径 ウッドドーム ●音圧レベル:105dB/1mW ●再生周波数帯域:6Hz〜40kHz ●インピーダンス:16Ω ●質量:約11.2g
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  • 型番HA-FX650
  • 発売日2014年2月下旬
  • 価格¥OPEN(予想実売価格19,000円前後)
【SPEC】●ドライバーユニット:8.5mm口径 ウッドドーム ●音圧レベル:100dB/1mW ●再生周波数帯域:6Hz〜30kHz ●インピーダンス:16Ω ●質量:約9.5g