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公開日 2023/02/23 07:00

PS VR2の「映像鑑賞デバイス」としての性能は?良い点・悪い点をチェック

プロジェクターでの大画面体験とどちらが良い?
編集部:押野 由宇
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ソニー「PlayStation VR2」(PS VR2)が発売された。すでに製品の総合的な性能についてのレビューはお届けしているので、今回はオーディオ・ビジュアル機器としての使い心地について触れていきたい。


PlayStation VR2は言うまでもなく、VRへの期待を一気に高めた「PlayStation VR」の次世代モデルだ。第一世代機の発売は2016年のこと。あれからいくつもの高性能ヘッドマウントディスプレイ(HMD)が登場している。それだけに、PS VR2に寄せられる期待値も高い。

PS VR2のスペックをみると、有機ELディスプレイのパネル解像度は片目当たり2000×2040で、4K/HDRの再生をサポート。リフレッシュレートは90Hz/120Hz。視聴モードは対応するVRゲームを楽しむ「VRモード」と、それ以外のゲームや映像コンテンツや「シネマティックモード」の2つを用意している。

シネマティックモードでは、最大でフルHDとなる1920×1080での表示が可能。ただしHDRやリフレッシュレート120Hzは、こちらのモードでも対応している。映像鑑賞においてはシネマティックモードを利用することになるわけだが、実際に試してみると、スペックが4K対応ではないことなどにガッカリするより、ほかに気になることが多々あった。

■しっかり光を遮って没入感が得られる。一方で重量バランスに難あり



PS VR2は初代機に比べて、かなり扱いやすくなっている。セッティングが容易で、PlayStation 5とHMDをケーブル1本で接続するだけでよく、使い始めるまでの準備もスムーズに進められた。こういったHMDに対して、「設置や準備が面倒くさい」と感じている方も多いと思うので、この点はかなり好印象だ。

またHMDを装着し、なにも表示されていない状態だとわかりやすいのだが、外の光をまったく通さない暗闇を作り出せる。たとえばOculusの旧モデルでは、鼻の低い傾向のあるアジア人の顔の形状に適した「Fitted Interface」というフェイスプレートがオプション販売されていたが、筆者はこれを使っても鼻周りに隙間ができてしまっていた。PS VR2はライトシールドが工夫されており、光を完全に遮ってくれるので、より高い没入感が得られる。

蛇腹になったライトシールドは、目の周りに余裕を持った作りだが光をしっかり遮ってくれる

さらに言うなら、隙間はないのに目の周りの空間には余裕があり、メガネを着けたままでも特に本体と干渉せず装着できた。ツルが太めだったり、レンズの大きなタイプのメガネの場合、その限りではないかもしれないが、一般的なメガネであればあまり気にならないはずだ。これもポジティブなポイントだろう。

しかし、装着した段階で気になるのは、どうも映像にピントが合わないということだ。詳しく説明すると、ヘッドバンドを、自身が快適と思える締め付け感にした状態でゴーグルおよびレンズ間距離を調整しても、少しぼやけてしまう。圧迫感があるレベルでかなりキツく締め付けると、ようやくピントが合った。これはメガネユーザーだからかもしれないが、長時間の装着の場合、影響がでる予感がする。

そしてもうひとつ、これだけキツく締めてもフロント部分がずり落ちてくることも問題だ。PS VR2の本体質量は約560gで、初代の約600gよりも軽量化されているが、重心が明らかにフロント側にあるため、どうしても下がってくる。前後のバランスがあまり取られていないため、数字よりもずっしり重く感じてしまうが、なによりもHMDの装着がずれることで、せっかく合わせたピントも外れてしまうのが痛い。上述したようにピントが合わせにくいからこそ、いちいち調整し直すのが面倒に感じた。

ずり落ちてしまわないよう、キツめに締め付ける必要がある

■HMDでの大画面体験としてはハイグレード



映像鑑賞に入る前の段階で、いくつか良い点・気になる点を書き連ねたが、開封から10分程度でセッティングが行えたので、早速複数のコンテンツを視聴してみる。

映像が再生された瞬間、真っ先に感じたのが「ド迫力」ということ。でかい。シネマティックモードの画面サイズは設定で変更できるが、中途半端な画面サイズに設定するくらいなら、HMDならではの「大画面鑑賞の楽しさ」を味わうべきだ。

画質については及第点といったところ。フルHD相当の解像感はしっかり感じられ、人物の輪郭線などもガタガタしていない。激しい爆発が起きるようなシーンではHDRらしいコントラスト、きらめきも感じられる。ハイエンド有機ELテレビのような黒の表現はさすがに期待しすぎだが、それなりの暗部階調表現も実現している。暗闇に映像だけが浮かび上がっており、「HMDで見ている大画面」という作り物的な要素が薄く、かなり自然な没入感が得られた。

音質に関しては、付属のイヤホンを用いた場合、正直「それなり」という印象。情報量が少なく、映像に迫力があるだけに軽く感じられてしまう。ただ、付属イヤホンは本体の3.5mmのステレオ端子に接続する方式なので、手持ちのイヤホンやヘッドホンに着け替えることもできる。ヘッドホンもモデルによるだろうが、HMDのヘッドバンドの上からでも違和感なく装着することができた。しっかりコンテンツの音も楽しみたいのなら、イヤホン・ヘッドホンの差し替えは必須と言っていい。

PS VR2に付属のイヤホンを装着したところ。ケーブルが邪魔にならないようになっているため、使い勝手がいいのはたしか

モデルによってはヘッドバンドと干渉してしまうが、オンイヤータイプなどは違和感なく使用できた

また装着性について、上述の締め付けや重さ、ずり落ちてくるといった点がネックとなり、長時間の映像鑑賞では疲れが結構溜まる。見ているうちに疲れて下を向きたくなるが、向いたとしてもだんだんと首や肩が痛くなってくる。ネックピローのようなものを使い、ソファなどに寄りかかって首を支えながら頭を後ろに預ける体制が最も楽で、HMDがずり落ちるのを防止できた。

■プロジェクターでの大画面体験と比べると?



ここでオーディオ&ビジュアル的な観点で考えると、家で楽しむ大画面といえば、プロジェクターによるホームシアターがまっさきに頭に浮かぶ。PS VR2の値段が74,980円(税込)で、PlayStation 5も新規で入手するなら合計で10万円を優に超えてくる。こうなると相当なレベルのプロジェクターが買える金額なので、比較対象として考えてもおかしくないだろう。

ではそれらと比べた場合、PS VR2のメリットは何か。それは「超大画面」と「環境を問わない」ことだろう。プロジェクターでも、100インチ以上を実現するには部屋のレイアウトに工夫が必要な場合が多い。PS VR2では感覚的に100インチ超えの映像がすぐ再生できるので、この点は優位だ。

そしてプロジェクターの場合、部屋の明るさが投写される映像に影響を及ぼすため、できるなら暗い環境を用意したいところ。部屋を真っ暗にして映画を見るのは、映画館に行ったときのように作品と向き合う気持ちにさせてくれる良さもあるが、それなりのしつらえや準備が必要であることも否めない。その点PS VR2は、装着すれば部屋の明るさに関係なく、くっきりとした映像を映し出してくれる。いずれも、気軽に大画面を楽しめるというのが大きな利点だ。

もちろん、プロジェクターに軍配が上がる点もある。最大のポイントは「画質」だろう。先程は触れなかったが、PS VR2では少し網目のような模様が見えてしまい、コンテンツによってはそれが気になってくる。特に実写よりアニメ作品で目立ってくるかもしれない。

PS VR2+PS5の予算をプロジェクター+スクリーンに投入すれば、フルHDでも画質としては上の、高品位なモデルを選ぶことができる。相応の投資が必要になるが、サウンド含めて発展性もある。本気で良い画質の大画面を楽しみたいならプロジェクターを選んだ方がいい。ただしはっきりと書いておきたいのだが、これはあくまでしっかりとしたクオリティのプロジェクターを選んだ場合のこと。極端に安価なプロジェクターと比べると、体験の質はPS VR2が上回る。

PS VR2の真価はVRゲームを楽しむことにあるだろうから、これはあくまで。映像を楽しむという限定的な用途からのいち意見として参考にしていただきたい。厳しいことも書いたが、HMD全体を見渡したときに、映像鑑賞用途として性能が悪いかというと、決してそんなことはない。今後ラインナップが増えるであろう専用ゲームを含め、特別な体験ができることを踏まえれば、PS VR2ならではの価値は大いにある。お試しで買うというには高いのも確かだが、一度使うとハマってしまう人も少なくないはずだ。

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