DVDオーディオとは

◎まず「DVD」をおさらいしよう

“DVD”の3文字を見る機会がこの春以降ずいぶん増えてきた。それも新聞広告、雑誌の記事、電車の中吊りまで、一般の目に触れることの多いメジャーな扱いだ。当初DVDとは「デジタル・ビデオ・ディスク」の略だったのだが、そのバリエーションが増えたために現在は、「デジタル・バーサタイル(多用途)・ディスク」を指すこととなり、一般の映画ソフトなどは“DVDビデオ”と呼ばれるのが正式ではある。しかし、現状ではDVDと言えば映画などの映像ソフトを意味するのが一般的となっている。

その他のDVDファミリーには、ROM(リード・オンリー・メモリー)のDVD版であるDVD-ROMを始め、1回だけ記録できるDVD-R(レコーダブル)、1000回程度書き換えができ、ビデオレコーダーも発売されているDVD-RW(リライタブル)、さらにパソコンの記録媒体として登場し、ビデオレコーダーも発売されたばかりのDVD-RAM(ランダム・アクセス・メモリー)がある。ここに新たに加わったのがDVDオーディオだ。

◎超高音質とマルチチャンネル

DVDオーディオフォーマットの第一の特徴は、大容量を生かした「スーパーステレオ」で「マルチチャンネル」であることに集約される。 「スーパーステレオ」とは、CDを凌駕する超高音質によるステレオ収録。つまり、2chステレオ収録において、192kHz/24ビットというハイサンプリング&ハイビットで74分以上の収録が可能となったものだ。さらに、44.1kHzで収録されたCDマスターの活用を望んだソフトメーカー側の意向を反映して、88.2kHzや176.4kHzにも対応している。 「マルチチャンネル」サウンドは、ステレオではない、文字どおりマルチな6チャンネルを96kHz/24ビットで74分以上収録可能としたもの。これは、DVDオーディオの容量では元々のリニアPCMでは転送レートが不足のため、元のデータを完全に復元できるMLP(メリディアン・ロス・パッキング)方式のロスレス圧縮技術によって可能となったものだ。そしてその圧縮比は約2分の1である。

◎「DVDオーディオ」は、音楽作品の可能性を広げる

CDに代わるオーディオメディアとして登場したDVDオーディオ。そのもうひとつの特徴は、音楽ソフトメーカーの要望を全面的に取り入れていることである。それは、 1.音楽業界が望む柔軟性に富んだ音楽創造のための広大なキャンパスと言える大容量であること 2.スタジオ機器、コンピュータ、CDなど現在のデジタル音楽の基本であるリニアPCMを必須とする音楽のためのフォーマットであること 3.現存しない方式さえも見据えた拡張性に富んでいること 4.すべてのディスクが普及機から高級機まで問題なく再生できるよう考慮された全階層対応フォーマットであること、などである。

またマルチチャンネルのソフトをユーザーが2chステレオで再生することを想定した、音楽制作者自身が設定できる2chへのダウンミックス係数を記録するSMART(システム・マネージメント・オーディオ・リソース・テクニック)コンテンツにより、制作者の意図が反映される、というメリットもある。  音楽業界が望む広大なキャンバスとは、44.1/48/88.2/96/176.4/192kHzという多彩なサンプリング周波数と、16/20/24ビットという量子化ビット数に対応し、最大6チャンネル、オーディオ最大転送レートは9.6Mbps、地域限定リージョナルコードなしで、オプショナル・オーディオはドルビーデジタル、MPEG、DTS、SDDSなどに対応している。

付加機能も多彩で、動画によるビデオクリップやスライドショーが楽しめ、アーティストのバイオやディスコグラフィ、関連した静止画などの収録もできる。著作権保護については、DVDビデオのコピーガード解除の手法が公になった経緯もあり、現在著作権保護の運用規定の最後の詰めが行われており、決定次第ソフト発売となる模様である。