3Dの画質を高めるためには2Dの画質を極めることが欠かせない。その一方、3D再生を視野に入れて導入した画質改善は、2Dにおいてもプラスにはたらくことが期待できる。コントラスト感しかり、応答性もまたしかりである。その意味でLV3シリーズの2D映像には大いに期待がふくらむ。

これまでの液晶テレビで見たことのない自然なコントラスト感

AQUOSの画作りに携わっている、シャープ(株)AVシステム開発本部 要素技術開発センター 副参事の小池晃氏

前のページでも簡単に触れた「映画(クラシック)」は、個人的にはかなり気に入った映像ポジションである。中途半端な補間なら使わない方がいいというのが映画を見るときの筆者の基本スタンスなので、24p表示がデフォルトのこのモードをまずは選択する。

『トリスタンとイゾルデ』の婚礼場面の前後を見たのだが、暗部階調は積極的に引き出しながら、黒はしっかり沈み込み、闇は闇として忠実に再現した。この作品のナイトシーンでこれだけ自然かつ十分なコントラスト感を引き出した液晶テレビは初めてかもしれない。

ピーク輝度を伸ばしながら明部の階調もしっかりと描き出す

暗い背景に浮かぶイゾルデの衣装の輝きには適度な落ち着きがあり、たんにピークが明るいだけのコントラストではなく、白側のグラデーションを確保していることがわかる。肌色は色バランスが自然で透明感が高く、柔らかい質感を巧みに再現している。

一方、宴会の場面で宙を舞うキラキラとした光の描写など、ピーク感が欲しいところではしっかりと明るさを引き出してきた。同じことは人物の瞳にも当てはまり、クローズアップ画像で目が訴える表情の豊かさは、ピークの明るさと、細部のコントラストの高さに由来するものだ。

フィルムグレインの描写は、微妙なさじ加減の難しさが設計者泣かせだろう。私が期待していた見え方に比べてほんの僅か強めに感じたが、つるりとなめらかな状態で見るぐらいなら、こちらの方がずっと良いと感じた。

階調の粘りはテレビ全体でもトップクラスに位置

本機は選択する映像モードによって解像感が大きく変化するが、その理由の一つはグレインノイズの処理方法におけるモードごとの違いにある。「映画(クラシック)」モードはグレインをやや強めに見せることで、一歩踏み込んだディテール描写を志向しているのだ。他のモードにはそれがないので落ち着いたなめらかなタッチが味わえるが、どちらを好むかは個人差があり、作品によっても選択は変わってくる。

意図的にグレインを残しているシーン、または強調しているシーンでは過剰気味に見えてしまう心配があるが、それが気になるようなら普通の映画モードに戻すなり、THXを有効にするという手がある。また、フォトモードが色バランス、シャープネス、ガンマともにほぼニュートラルな設定なので、そちらで原信号に忠実な再生を狙うというのもありだろう。いずれにしても、映画モードに過剰な作り込みはなく、安心して映像に浸ることができた。

『ダークナイト』のナイトシーンでは、バックライト設定の巧みさと、周辺環境に合わせて自動補正する能力の高さを確認した。室内の明るさを3段階に変更してみたが、どの明るさにおいても、最も微妙な明暗差をしっかり描き分けており、ぎりぎりのところで黒つぶれは起こらない。いろいろなテレビで同じ場面をチェックしているのだが、本機の階調の粘り具合はトップクラスに位置付けられる。

「フルハイプラスエンジン」が細部まで見通しの良い映像を実現

4原色パネルのサブピクセルの多さを利用して精細感を高める「フルハイプラスエンジン」の効果は、人物や背景のテクスチャーの変化として容易に見出すことができる。しかも、クローズアップや細部の描写だけでなく、画面全体の見え方の変化としても明らかに違いがわかるところが、この技術の特筆すべきメリットだ。

たとえば、「きみに読む物語」を例にとると、冒頭の自然描写からノアとアリーが出会うシーンあたりまで、屋外と室内を問わず、また明るいシーンとナイトシーンのどちらでも、細部まですっきりと見通すことができることが、クアトロンパネルの大きな特徴なのである。フラグシップを含むAQUOSの従来モデルと比べてもその差は一目瞭然だ。

ARSS+DuoBassで音質にもこだわった

音質についても触れておかなければならない。LV3ラインの46V型以上の3機種は4ウェイ8スピーカーシステムを内蔵し、本体だけで2.1ch再生が可能だ。ウーファーは2つのユニットを対向配置したDuoBass方式を採用。さらに、音場再生技術を投入したヤマハのAudioEngineを搭載するなど、LV3シリーズはオーディオ性能にもこだわりを見せる。

 
青い丸印の部分にスピーカーを内蔵している(46V型以上の場合)   本体側面に大型のスピーカー部が見える。これにより画面周りのベゼル部のスリムさと音質を両立させている

ライブ作品で確認した再生音は中域に厚みがある素直な音調に特徴があり、低域はほどよく引き締まったバランスだ。重要な帯域の明瞭度をしっかり確保しており、音楽だけでなく映画でも説得力のあるサウンドを堪能できそうだ。