7月末に発売された、シャープAQUOSのフラグシップモデル「LV3」ライン。国内の液晶テレビシェア1位を独走するシャープが、満を持して3Dテレビに参入した恰好だ。

“AQUOS クアトロン 3D”LV3ライン。60V型「LC-60LV3」、52V型「LC-52LV3」、46V型「LC-46LV3」、40V型「LC-40LV3」の4製品が用意されている。3Dメガネは各1個ずつ同梱している

LV3シリーズに投入された技術は多岐にわたり、それら複数の要素を組み合わせることで、3Dテレビとしてはもちろん、2D画質の向上も実現し、テレビとしての総合性能を高めている。このページでは、後から詳しく説明するこれらの技術をざっくりと紹介していくことにしよう。

50年ぶりの大きな進化、「4原色」革命

最近のテレビの技術革新は数年に一度のペースで大きなブレークスルーを実現しているが、今回の進化には近年の技術改良を集積した結果という側面があり、変化の中身はこれまでになく大きい。

最大の注目ポイントである「4原色」に至っては、なんとテレビ誕生以来50年ぶりという大きな進化であり、テレビの多原色化という道を切り開いた意味は非常に大きい。

RGBの3原色ではカバーできない色域を再現するため、新たにY(イエロー)を追加してカラーフィルターを一新、純度の高い黄色や深みのあるシアンを表示する能力を高めたというのが、4原色=クアトロンパネルの功績だ。

 
4原色技術により、色再現性が大幅に向上した   4原色パネルと3原色パネルの明るさを比較。4原色パネルの方が明るいことがわかる

黄色は私たちがテレビ放送やパッケージソフトで頻繁に目にする色の一つであり、色純度向上の成果はあらゆる画面で確認できる。黄色やゴールドはもちろん、シアンの領域に関連して海や空の色も驚くほどの深みがある。

UV²A技術によりこれまでにない明るさを実現

だが、4原色技術のメリットはそこにとどまらない。サブピクセルの数が4/3倍になることを利用し、輝度信号における斜め線のスムージング処理を導入。既存の映像をよりきめ細かく見せる「高精細化」のメリットにも注目したい。この「フルハイプラスエンジン」については、この後のページで具体例を紹介することにしよう。

さらに、赤と緑の各成分から黄色を作り出していた従来方式に比べ、黄色専用の画素を設けることで効率を上げ、電力消費を改善するという意外な省エネ効果も実現している。白色LEDは明るい黄色を実現しやすい特性を持つため、他の色よりも、黄色の画素を加える意味が大きいのだ。

省エネに寄与する最大の要素として、クアトロンパネルを支える「UV²A」技術の存在を忘れるわけにはいかない。光が通過する経路のリブやスリットを排除して開口率を上げ、約20%もの明るさ改善を実現しているのだ。明るさ向上に加え、光漏れの低減によって黒の沈み込みを大きく改善していることも画質に大きく貢献している。

シャープ独自のUV²A技術も、明るくてクロストークが少なく、コントラスト比が高い3D映像に大きく寄与した

4原色化は画素単位で見るとサイズが小さくなっているため、単純に考えると明るさが低下してしまう。だが、実際には明るさの向上をも引き出すことに成功している。4原色パネルの実現にはUV²A技術が不可欠だったということは覚えておきたい。

LEDバックライトやFRED技術も3D画質向上に寄与

昨年からシャープが積極的に進めてきたLED光源の導入も新パネルの性能改善に大きな役割を果たしているが、そこには大きく2つの意味がある。まずは、LEDならではのコントラスト改善効果が大きい。ピーク輝度が高いのでハイライトが力強さを増し、映像全体のコントラスト感に大きな差が生まれるのだ。UV²Aパネルのコントラスト改善効果と合わせ、従来に比べて1.6倍もの高コントラスト比を達成しているというから驚く。

もうひとつの成果は、LEDの高速応答性を生かしてバックライトの高精度なコントロールを実現したことで、特に3D表示では少なからぬ威力を発揮する。具体的には上下方向に分割したエリアごとに高速にオン/オフを制御するスキャニングLEDバックライト方式を導入することによって、クロストークの発生を大幅に抑えることに成功した。

4つめの注目技術はFRED(Frame Rate Enhanced Driving)と呼ばれる、パネル駆動回路の改良である。これは、従来は2本必要だった信号ラインを1本に減らすことで消費電力を大きく抑える効果とともに、配線幅が半減することで光の損失を抑えることができ、ここでも従来に比べて約10%の明るさ向上を果たしているという。

FRED技術は1本の信号ラインで240Hz駆動を実現。明るく低消費電力な映像が実現できる

以上の4つの技術の組み合わせによってクアトロンパネルが実現した明るさの向上は従来に比べて約1.8倍に及ぶという。「明るい3D」を支える技術一つひとつの成果は1割から2割程度だが、4つを掛け合わせるとここまで大きな数値になるのだ。

次ページからは、それぞれの技術の詳細と、それらが具体的にどのような効果を生み出しているのか見ていくことにしよう。