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VGP2023 SUMMER受賞:TCLジャパン 張濟鵬氏

【インタビュー】TCLのゲームに特化した“スマートパネル”「C845」、98型「C955」は確信に満ちたテレビの新潮流

公開日 2023/09/14 06:30 PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
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VGP2023 SUMMER
受賞インタビュー:TCLジャパンエレクトロニクス


ゲーミング機能に特化し、チューナーを非搭載としたスマートパネルという斬新なコンセプトを提案したMini LED「C845シリーズ」がVGP2023 SUMMERで特別大賞を受賞したTCLジャパン。7月20日からはいよいよ98インチMini LED「98C955」の予約受付も開始された。テレビ市場の話題をさらう注目商品を連打する同社の強みを張濟鵬社長に聞く。


株式会社TCLジャパンエレクトロニクス
代表取締役
張 濟鵬


プロフィール/1989年1月13日生まれ、中国山東省出身。2010年 吉林大学卒業。2010年 TCL中国 営業マネージャー・地域マネージャー、2017年 TCLパキスタン支社 運営管理マネージャー、2020年 TCL香港支社 代表取締役を経て、2022年4月 TCLジャパンエレクトロニクス 代表取締役に就任。

■的を射たテレビの新スタイル「C845シリーズ」



―― “史上最高の4K MiniLED”を謳う「C845シリーズ」が、VGP2023 SUMMERで特別大賞を受賞されました。おめでとうございます。年々着実に進化していく画質や数々の最新技術はもちろんのこと、ゲーミング機能に特化し、チューナーも非搭載とした“スマートパネル”という斬新なコンセプトにも審査会では高い評価が集まりました。

VGP2023 SUMMERで特別大賞を受賞した「C845シリーズ」

 事前に日本のマーケットを調査すると、特に若い消費者のテレビに対するニーズは、単にコンテンツを見るだけでなく、ゲームを楽しむニーズが大変高いことが確認できました。しかし、そうしたニーズが高いにもかかわらず、市場には高い満足感を提供する商品がほとんど見受けられませんでした。さらに、日本市場の特徴として、倍率やリフレッシュレートに対する要望が非常にシビアなことも挙げられます。

そこで、144Hzのリフレッシュレートを実現するとともに、HDRや色表現も最適化し、ゲーミングテレビ業界の中でも最高スペックとなるC845シリーズを商品化し、日本市場で発表、導入しました。最新チップ「Algo Engine Max II」を搭載し、これからのゲーミングテレビのマーケットをリードしていく商品になると確信しています。

「C845シリーズ」は最先端のゲーミングモニター同様に144Hz VRR(Variable Refresh Rate)に対応する

日本ではMini LEDの上陸が遅れたこともあり、テレビ市場ではOLEDが主流になりつつありますが、Mini LEDはTCLが業界でいち早く手がけ、業界内でも最先端のポジションにあります。このC845シリーズも、Mini LEDテクノロジーによる鮮やかな色彩や深みのあるコントラスト、高い輝度による没入感のある映像体験に対し、高い評価をいただいています。

―― 5月29日の発売から数ヶ月が経ちました。お客様やご販売店からの手応えはいかがですか。

 お陰様で大変大きな反響をいただいており、発売当初1ヶ月の販売実績は、昨年発売した人気モデル「C835シリーズ」を上回る滑り出しです。高いリフレッシュレートや低遅延をはじめ、ゲームプレイに必要な要素がしっかり実装されていることからゲーマーから大変好評を得ています。また、一般ユーザーからも美しい映像品質やチューナーレスとしたことで実現できたスマートなデザインに称賛が寄せられています。家電量販店各社でも、従来にないハイスペックのゲーミングテレビとして注目され、店頭に導入いただいており、さらに人気が高まっています。

―― 日本市場では、テレビと言えばチューナーが搭載されていることが当たり前という既成概念に対し、メインのラインナップとして“チューナーレス”を投じた判断も大いに注目されました。

 TCLでもチューナーレスとしたテレビは初めての挑戦となりましたが、厳密に言うと、ヨーロッパで以前に発売したことがあります。「スマートパネル」という名称で、日本でもそうですが、NetflixやYouTubeなどのネットコンテンツを見ることができれば十分という、若い消費者を中心にしたテレビでのコンテンツの楽しみ方の変化を捉えて投入したものです。Fire TV Stickや Apple TVを使われる方も増えていて、予想を上回る評価をいただきました。

C845シリーズのコンセプトは、今のコンテンツの楽しみ方に非常にマッチしていると言えます。ヨーロッパで発売した商品が「スマートパネル」と称しており、日本市場でもこれから伸長が期待される新しいカテゴリーの創造へ向けて、「スマートパネル」という新しい呼称で展開していく予定です。

■用意周到かつ真似のできないスピード感



―― 中国市場ではすでに発売され、日本市場でも早期の市場導入を明言されていた98インチテレビとして、「98C955」の予約がいよいよ7月20日より開始されました。C845シリーズと同じく革新的な提案と言えます。発売へ向けた意気込みをお聞かせください。

横幅は約2.3mにもなる98インチMini LEDテレビ「98C955」。予約受付が7月20日からいよいよ開始された

 テレビの発展には大きく2つの要素があります。ひとつはスペック、もうひとつが画面サイズです。スペックの進化も著しいですが、画面サイズも現在、グローバルでどんどん大きな画面が求められています。日本でも確かにそうした流れにはあるものの、グローバルの平均値に比べると少し低いのが実情です。

そこには2つの理由があると考えています。ひとつは、よく指摘される家やリビングの広さの問題。マンションではエレベーターに入れられるサイズかどうかも重要になります。もうひとつは価格。日本の家電は品質に対する消費者の要求が高いため、製品価格は他の国に比べると高くなる傾向にあります。そこへ、さらに大型のテレビを提供しようとすれば、消費者にはさらに負担が重くなり敬遠されることも考えられます。

ところが、高額のタワーマンションが人気を集めるなど不動産価格も上昇するなかで、導入するテレビに対しても、さらに臨場感あふれる映像体験ができるより大型なものを求める傾向が確実に高まっています。また、価格面の問題においては、TCLには自ら液晶パネルの開発・製造を手掛けるCSOT(華星光電技術有限公司)というグループ会社があり、垂直統合型の生産システムを活かし、コストパフォーマンスの面における大きなアドバンテージがあります。それはインチサイズを大きくすればするほど発揮され、より大きなサイズのテレビを魅力的な価格で日本のお客様にお届けすることできます。

こうした背景のもとに登場したのが「98C955」。日本市場のテレビエンターテインメントにおける新たな潮流を牽引していきます。

―― 「98C955」では、新しくアンバサダーに就任された堂安律さんも出席された発表会も催され、反響が大きかったのではないでしょうか。

 98インチテレビの発表は、注目度の高さを証明するように、実に168社から報道され、実際の商品を見る前から数多くのオーダーをいただいている状況です。驚きを隠せないと同時に、日本市場には確実にニーズがあると改めて自信を深めています。これまで誰も出していなかった大きなサイズは、TCLブランドの認知と信頼を高めることにも直結しています。

2023年9月1日から5日間にわたり、ドイツ・ベルリンで恒例の家電見本市「IFA」が今年も開催されましたが、TCLのブースでは115インチのテレビの展示を行いました。さらに来年には日本で、グローバルでも最高スペックとなる98インチのテレビを発表する予定です。5,000のローカルディミングゾーンを備えたMini LEDで、ピーク輝度は5,000nit、スタイルもさらに超薄型になります。日本市場でTCLの実力をアピールしていきます。

先頃開催された「IFA2023」のTCLブースで、「世界最大のQD-Mini LEDテレビ」を謳い115インチのテレビが紹介された

―― ゲーミング機能に特化したチューナーレステレビ「C845シリーズ」、さらに98インチの「98C955」と大きなインパクトを与える提案を立て続けに投げ掛けましたが、日本のユーザーの声をフィードバックする仕組みはどのようになっているのですか。

 自社はもちろんのこと、同時に第三者にも依頼して、市場ニーズに対する調査・研究を常に進めています。新製品を出す前にも、市場ニーズを見極めるための調査を必ず行っており、新製品の方向性を見定めた上で市場導入しています。「チューナーレステレビ」についても昨年、調査を行いました。若い人を中心に地上波はあまり見ず、ネット配信のアプリでテレビを楽しまれている傾向が把握できました。チューナーレスにアドバンテージがあることに確信を持ち、研究・開発陣に即座に商品化を依頼し、商品化したのがC845シリーズです。

決断してすぐ行動に移せるのはTCLの大きな強みであると自負しています。今回の98インチのテレビも、「こんな大きなテレビは日本市場には受け入れられないのでは」といった声もたくさん聞かれましたが、これも事前の調査によるデータの裏打ちがきちんとあり、自信を持って市場へ投入します。

お客様のニーズやフィードバックされる声にきちんと耳を傾け、製品のさらなる改善と進化に努め、使いやすさと満足度をさらに高めていきます。最高のテクノロジーで最高のエンターテインメント体験を提供して参ります。

■アンバサダーに堂安律を起用。プロモーションを強力展開



―― 市場でもTCLブランドの存在感が高まりつつあるなかで、アンバサダーに昨年の紀平梨花さんに続き、今年は堂安律さんを起用され注目を集めています。

 TCLはグローバルな方針として、スポーツ選手やチームとの連携を深めています。スポーツの持つ精神とTCLのブランドが抱くマインドには共通部分が多く、数多くのスポーツ選手とアンバサダー契約を結んでいます。日本では、類まれな精神と努力により、多くのファンから愛されている堂安律選手を起用しました。TCLのスローガンである『INSPIRE GREETNESS』にも非常にマッチするものです。

アンバサダーに昨年の紀平梨花さんに続き、今年は堂安律さんを起用して大きな注目を集める

堂安律選手とのパートナーシップを通じ、TCLのテレビのメリットをより幅広く伝えるためのプロモーション展開を進めていきます。新製品のプロモーションでは、ドイツで撮影された堂安律選手のCMコンテンツを、屋外OOH広告、JR山手線の電車内広告、ネット広告、また、店舗内の装飾などにも大々的に展開しました。TCLのテレビ製品に対する認知度と信頼度を高めるとともに、お客様に満足いただけるエンターテインメント体験を提供して参ります。

―― 日本のテレビ市場については、コロナ特需の反動で前年比を下回り推移しています。テレビの用途や役割が変化していくなか、今後の市場をどのように展望されますか。

 新型コロナの影響で家庭内でのエンターテインメント需要が高まり、テレビの需要も一時的に増えました。しかし、今年のお盆休みや夏休みも帰省や旅行で賑わいを見せているように、コロナ特需は後退し、それに伴いテレビ市場も前年比を下回る状況が続いています。しかし、これはコロナ特需後の反動とも言える一時期のもので、状況が安定化するに伴い、テレビの新しい用途や役割に目が向けられていくと見ています。

すなわち、テレビは従来の単なる映像表示装置の域を超えた、スマートエコシステムの中心に位置する存在となり、スマートデバイスを一元管理する役割を果たすことが期待されていることです。すでに急速に増加するネット配信を楽しむためのデバイスとしての、映像や再生能力に対する要望も高まっていくはずです。

ゲームのプラットフォームとしての存在感も高まっていて、C845シリーズで実証されたように、高リフレッシュレートや低遅延などゲームに特化した機能が求められています。AI技術を活用した視聴履歴に基づいておすすめコンテンツの提供、また、持続可能性や環境に配慮した製品づくりなども見逃せないポイントです。

コロナ以前に、消費者はブランドを見てテレビを選んでいて、そこに海外のブランドが立ち入るのは難しい状況にありました。しかし、コロナを経て様々な価値観に変化が現れるなかで、テレビにおいても、購買に至る価値や尺度に変化が表れてきています。単にブランドで決めてしまうのではなく、自分の価値観に寄り添った機能や値段により意識が向けられるようになっています。

TCLの日本市場におけるブランド力はまだ決して強いとは言えませんが、さらに強くしていくために一番大切になる、消費者のことをよく理解する努力を重ねています。高スペックの商品を安価にお届けできるTCLのアドバンテージを活かし、さらに躍進できるチャンスが拡がっています。

「最高のテクノロジーで最高のエンターテインメント体験を提供して参ります」

―― テレビの販売台数は世界2位、Google TVと98インチテレビでは世界1位(市場調査機関OMDIAによる)と躍進、日本市場でのシェアも着実に拡大していくなか、これからの目標をお聞かせください。

 TCLは今、日本のテレビ市場のなかで最も成長力の高いブランドになっています。高品質の商品を低価格で提供できる点が、皆さんから徐々に認知され、評価も高まりつつあります。そのアドバンテージを存分に発揮して、お客様の期待を超える製品をお届けするための成長と革新を続け、お客様のエンターテインメント体験を向上させることに全力を注いで参ります。

さらに、テレビだけにとどまらず、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、通信デバイスなどを将来的に日本市場に導入していく計画です。昨年はサウンドバーを発売し、今年は冷蔵庫を導入することができました。来年はPCモニターと洗濯機の導入へ向けた準備を進めています。テレビのブランドとしてはもちろん、家電のメーカーとしてのTCLにも是非ご期待ください。

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