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AVR-A100

DENON
AVR-A100

¥280,000(税抜)

発売:2010年11月1日
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HDMI Ver.1.4a端子を搭載、3D映像のパススルー出力やARCをサポートする9.2ch対応AVアンプ

【SPEC】●実用最大出力:210W×9ch ●周波数特性10Hz〜100kHz(+1,-3dB、ダイレクトモード時) ●S/N比102dB(JIS-A、ダイレクトモード時) ●歪率0.005%(20Hz〜20kHz、ダイレクトモード時)

※原則として製品発表時のデータを掲載していますので、内容・価格は変更されている場合があります。また、この製品データベースには生産・販売を休止したモデルの情報も含まれています。

テストレポート

ハイクオリティサウンド&多機能を実現した100周年記念モデル

創業100周年記念にデノンが発売する“A100シリーズ”のラインナップに加わるサラウンドアンプ。同社はA100シリーズをレギュラー系列のバージョンアップモデルでなく、独自の製品系列と位置付けている。ちなみに「AVR-A100」は欧米でも発売される。本機の内容は今期新製品の「AVR- 4311」とほぼ同一だが、電源部ブロックコンデンサーを大型に換装、フート(インシュレーター)が鋳鉄製に変わりスピーカー端子は金メッキ仕上げとなる。前面パネルもアルミマイカ入りの光沢のある黒になるので、音質は同じではない。あくまで独立したアンプ新製品として聴いてほしいというのがデノンの考えだが、サラウンドアンプの購入をお考えのユーザーは、本機とAVR-4311との音質がどう違うのか興味津津だろう。

サウンドを試聴した印象を紹介する前に、本機の構成をさらっておこう。9.2ch構成のサラウンド対応で、フラグシップ「AVC-A1HD」に次ぐ存在。デコーダーは11ch分を内蔵する。デノンの場合、シャーシ構成は一定期間同じものを踏襲していくやり方だが、AVR-A100、およびAVR-4311 はその更新のサイクルに当たっており、シャーシを完全に新規設計としている。今後はA100のシャーシパターンが母型となる。チャンネル数の増加に伴い、近年の技術課題であるシンプルな構成と、各ステージを最短で直結する構造をさらに推し進めている。

アナログパワーアンプ部はオーソドックスなカレントミラー型回路で、9chディスクリート・モノラル・コンストラクションの電源部を持つ。実用最大出力 210W×9(JEITA 6ω)。Audyssey DSX、ドルビープロロジックIIzプロセッサーを搭載、通常の7.2/9.2ch再生に加えDSXのワイド、ハイトを同時出力する9.2ch再生は本機の大きな魅力だ。前述の通りプリ出力は11.2chまで対応。自動調整はAudyssey MultiEQで従来比32倍とフィルター解像度の増したXT32。Audyssey MultiSub Calibrationを内蔵し、フロントサブウーファー2台使用時に音量/位相/イコライジングを自動調整する。

DENON LINK4thを搭載し、同社ユニバーサルプレーヤーと接続すればHDオーディオのビットストリーム・ジッターレス再生が可能だ。もちろん、HDMI Ver.1.4を搭載し、3Dパススルー、ARC対応。USB音楽ファイル再生はMP3/WAV/WMA/AAC(DRM非対応)/FLAC(96kHz /24bit含む)に対応。iPodデジタル入力はデノン独自のアナログ波形創出回路「AL24 Processing Plus」でなめらかで歪みを抑えた高音質再生が可能。iTunesライブラリを高音質ストリーミング再生できる「AirPlay」にも対応する。iPhone/iPod touchで本機をネットワーク経由で操作できるオリジナルアプリ「Denon Remote App」によるコントロールにも対応した。

デノンのサラウンドアンプの特徴は、半業務用途で使われることが、多く同時に熱心なファンを持つことでもある。前者は連続使用時の信頼性によるものだが、後者は他のアンプにない音の個性を持っていることが背景にあろう。それは鮮度と力と、芯のある音質だが、昨年の製品からスピード感を重視、解像感は高いが、きれいな方向の音になったように感じた。結論を先にいうと今回のAVR-A100はある意味デノンファンの声なき声に答えた製品に思える。BDソフトを例に具体的に紹介していこう。

『ハート・ロッカー』は、冒頭のバグダッド街頭の爆弾処理シーンを視聴した。様々な音の要素が重層的に渦を巻き、静と動の変化でリスナーを心理的に包囲するサウンドデザインで、再生においてはデコーダーの解像力と、アンプとしてのSNと歪みのなさがポイント。本機の場合、Audyssey DSXのアグレッシブな音場の作り方と相まって、音場がドーナツ状にならないどころか聴き手を真綿のように締めつける密度がある。アクションを音で描く上で「温度感」「エネルギー感」は重要だが、デノン・サラウンドアンプの特徴はまさにそれだ。A100は金属が灼熱を孕んで破裂し四散する時のエネルギーの高まりが実感できる。低域の重量感とレスポンスもいい。空間創成力も高い。

『レギオン』冒頭のSEの移動感は空気に鋭利なパレットナイフが条痕を残すように鮮明だ。音場創成に、回路レイアウトの最適化とパワーアンプの品位向上がかみ合っている。ハードボイルドな量感を復活させつつ、音の鮮度をも研ぎ済ました印象である。筆者はAVR-4311も試聴したが、A100が密度感でやや上回り量感重視のバランスと見た。聴いていて「血の濃くなる」瞬間を味わえる今最もデノンらしいサラウンドアンプ。AVR-A100のワンアンドオンリーな魅力がそこにある。

(text:大橋伸太郎)