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公開日 2025/06/25 12:50
ハイエンドなホームオーディオに活用できるものも

フランスのPA音響機器ブランド、L-Acousticsの最新サウンドを体験

編集部:筑井真奈

フランスのPAオーディオ機器メーカー、L-Acousticsの最新技術を体験できる「L-Acoustics Experience 2025」が、新木場のGARDEN 新木場ファクトリーで6月17日(火)に開催された。L-Acousticsの国内展開を行うベステックオーディオ(株)が主催するイベントで、同社が提供する「音響システム構築のために必要な総合ソリューション」の紹介とともに、最新スピーカー「L2 system」のデモンストレーションも行われた。



最新ソリューションを体験できる「L-Acoustics Experience 2025」


L-Acousticsは、1984年に創業した総合PAオーディオメーカーで、ライブハウスやコンサートホール、屋外イベントなどさまざまな場所で活用されている。創業当初から「ライブや劇場などにおける音の体験を最適化する」というポリシーのもと製品開発を行っており、単にアンプやスピーカー等のハードウェアを販売するだけではなく、システムを組む現場スタッフにとっても使いやすく効率的な、総合的なソリューションとして提案していることが大きな特徴となる。



L-Acousticsは、コンサートホールなどで活用される大型のラインアレイスピーカーなどを中心に展開するブランド。写真はKシリーズ


L-Acousticsのソリューション提案は、5つのレイヤーに分かれて提供されている。「仕様」「設計」「実装」「校正」「運用」である。これらを一気通貫でサポートできる「秘書」のような存在だと考えているという。



ホールやライブハウスでの具体的な設置、実装に至るまでの効率性や本番での安定した運用まで含めてトータルソリューションとして提供している


コンサート現場での音響設計は、まずホール等の図面を確認し、どの位置にどのようにスピーカーやアンプ等を配置するかをシミュレートするところからスタートする。興行主がどのような音を求めているのか、会場にはどのような制約があるのかといったさまざまな条件を踏まえて仕様の策定が必要で、そのシミュレーションを助けるためのソフトウェアも独自に用意する。



ホールでの設置におけるシミュレーションソフトも自前で用意


シミュレーションが完成したら、現場での実装となる。施工性や安全面での知見に加え、今回は「AVB MILAN」について詳しく解説。AVB MILANは、いまプロオーディオ業界で大きく注目される規格で、音声や映像をLANケーブルのみでリアルタイムかつ高速に伝送するためのもの。オープンな規格となっており、条件さえ満たせば他社のデバイスでも相互に連携できるというメリットがある。L-Acousticsは2017年からAVB MILANに対応しており、アンプやスイッチングハブなどで活用されている。


ベステックオーディオの担当者はAVB MILANの優位性について、「時間軸方向の正確性」があるという。PA機材では複数のアンプで複数のスピーカーをドライブするが、そのときのアンプ間の時間の揺らぎを最小限に抑えることができるという。その結果、「ハイの音圧が上がった」「サブの帯域が締まる」といった声が現場からも上がってきているそうで、今後の製品についても基本AVB MILANに標準対応していくことを考えているという。



プロオーディオ機器の間で注目の規格「AVB MILAN」。オープンな規格のためブランドの垣根を超えて利用できることに加え、音質面でも評価


もうひとつL-Acousticsが大切にしているのが「校正」、つまりキャリブレーションで、理想的なシミュレーションと実際の現場における実装とのずれを補正するもの。たとえば開演前に計測したデータから、実際にお客さんが入った時に、気温や湿度が大きく変わってしまい、音の鳴りが想定と違うものになってしまうことも現場では少なくない。そういった微妙なズレを調整し、なるべく良い状態をキープできるようなソリューションも用意されているという。


イベントの後半では、最新の「L2 system」というスピーカーシステムについて紹介。LシリーズはL-Acousticsのなかでもトップグレードの製品となり、ホールの天井から吊るされるラインアレイタイプのスピーカー。3ウェイ20ドライバー構成の「L2」と、そこからさらに下に伸ばすJ字型の「L2D」という2種類から用意されている。



天井に吊られているのが「L2」、手前にあるのが「L2D」。奥に見えるのはサブウーファー


特許を取得しているProgressive Ultra-Dense Line Source(PULS)という設計思想に基づいて開発されており、「これまでで最も理想に近いラインソーススピーカー」だと訴える。8基のコンプレッションドライバーと8基の10インチウーファー、さらにサイドパネルに4基のカーディオイドドライバーも搭載する。



ラインアレイソーススピーカーの「L2D」


多くのラインアレイタイプのスピーカーでは、角度が調整できる代わりに、後ろ側に空きスペースがあることも多く、システムが巨大になりがちであった。このL2シリーズは不要なリブやパネルをなくすことで軽量化・小型化しながらも、設置性を高めるとともに音質面でも「会場ごとに自然で一貫した音響特性を得られる」と説明する。


デモンストレーションでは、ダフトパンクの「Get Lucky」など低域がしっかり入った音源などが再生されたが、おなかに響く低域感の太さ、それぞれの楽器の分離感、高域の芯のある伸びやかさなどがしっかり再現されており、PAシステムもここまで進化したのかと驚かされる。ベステックの担当者も、「ライブ向けの音響システムの性能は非常に向上していて、ここまでの解像度を実現できるようになっているのです!」と胸を張る。


会場では、大規模ホールなどで活用されるKシリーズ、Aシリーズのほか、家庭や会議室用途などでも利用できるコンパクトな「SOKA」「SYVA」なども展示。また、ゼンハイザーのワイヤレスマイクシステムなども展示。ゼンハイザーのマイクは相互干渉が少ない独自の技術を採用しており、「失敗できない現場」で多く活用されているそうだ。



ハイエンドなホームオーディオにも活用されるSシリーズ


プロオーディオの現場では、「最高の音を必要な場所へ、最小限のリソースで届ける」ことが要求される。プロオーディオブランドが培ってきた、音に関する課題解決の提案は興味深く、ハイエンドオーディオとはまた違った音に関する知見は新鮮に映った。今後、コンサート現場などでPAシステムを見る際の着目点もあらためて変わりそうだ。

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