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PRHDMIの画質/音質も進化!

デノン“孤高”の15.4ch一体型AVアンプ「AVC-A1H」レビュー。どこまでも懐の深い、想像を絶する逸品だ

公開日 2023/04/27 07:00 大橋伸太郎
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『シャイニング』(4K UHD Blu-ray)では、DTS-HDをAuro-3Dにアップコンバートして聴いた。Auro-3Dのハイト重視、高々とした立面で表現する特徴によって、ヘリ空撮が山道のワーゲンを追うタイトルシーンは劇伴に挿入された叫び声がハイトchにくっきりと現れ、人知を越えた邪悪な存在が空高く主人公を見下ろしている。

大きく変わったのが劇伴の表現力。ハイトスピーカーに楽音がマッピングされ、さらに本機の帯域と解像力でペンデレツキの「ヤコブの目覚め」の帯域が広がり、音の滲みが消え研ぎ澄まされた結果、パーカッション連打が魔性を帯びて冷たくそびえ立ち音場を切り裂く。

骨太、かつ歪みによる硬さを感じさせない音質。HDMI入力での音質/画質の進化も見逃せないポイント

『海街dialy』(Blu-ray、DTS-HD音声)は、UDP-205のHDMI出力を2KとしてAVC-A1Hで4Kアップスケールしてプロジェクターに入力した。本機にアップスケールを委ねたのは映像に目覚ましい進境を生んだ。本作はコダック35mmフィルム撮影/4Kデジタルスキャンだが、2K映像に隠れていた4K情報が現れる。映画の前半、被写界深度の浅い望遠レンズで捉えたショットは、4人の女優の遠近感が美しく、広瀬すずの艶やかな黒髪が1本1本分離し、3姉妹が4姉妹に変わる感動を一段と高める。

AVC-A1Hの優れたHDMI回路を使い、SACDマルチチャンネルディスクを聴いてみよう。ボブ・ジェームス・トリオ「フィール・ライク・メイキング・ライヴ!」で、サウンドモードは5.0マルチチャンネル(サラウンド)。これはDSDピュアダイレクトが好結果だった。

サラウンドバックまでアクティブ化する(鳴らす)Auro-2Dは厚みがあって立体的な音場だが、楽音の鮮度とトリオの定位感が魅力的なこのソフトでは、DSDピュアダイレクトの見通しの良さ、ソリッドな表現をとりたい。ウッドベースの胴鳴りの迫力があり、低音まで音圧が下がらず明瞭な音程で鳴らし切る。アンプが802Dを駆動しきっている証左。多彩な音色を生むドラマーの技巧を細大漏らさず克明に音場に描き込む解像力も見事だ。

「ブラームス ピアノ協奏曲第一番、第二番/アンドラーシュ・シフ」(CD)は、まずUDP-205のHDMI接続からのピュアダイレクトで試聴した。優秀録音であるものの再生の難しいディスクだが、映像で実感したHDMIの進化がここでも明らかになった。

HDMIステレオ再生の不満に音像定位の甘さがあったが、本機はその歯がゆさがない。低域に量感豊かなピラミッド型のバランスだが、響きが澄明で甘く鈍くならない。オケとピアノの関係が立体的で対話性があり、第二楽章はピアノの透明な響きに曇りがなく、包み込むようにオケが帯域広くスムースに音場に広がる。第三楽章はオケのローエンドの再現に感嘆した。

これをSACDプレーヤー、ヤマハ「CD-S3000」のアナログ出力で聴き直してみよう。アナログ入力もまた躍進していた。HDMIに比べシェープアップされソリッドな響きだ。音場の見通しがよく楽音の鮮度が高い。本機のアンプとしての音の地肌、素顔がここにある。圧巻は第一番の第二、第三楽章のピアノ独奏。ノイズ抑制に優れ弱音の粒立ちも見事。クラシック再生の勘所、弱音の表現力に優れたアンプだ。



どこまで音場再現の懐が深いのか、想像を絶するアンプだ。発見に満ちていてすべての映画ディスク、音楽ディスクを聴き直したくなるアンプだ。投下された物量と技術密度に見合った音のスケールでステレオ音楽再生から最新のサラウンドまで余裕で支え切る一台である。それを考慮すれば、税込99万円は決して高価でない。


(協力:ディーアンドエムホールディングス)

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