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PRHDMIの画質/音質も進化!

デノン“孤高”の15.4ch一体型AVアンプ「AVC-A1H」レビュー。どこまでも懐の深い、想像を絶する逸品だ

公開日 2023/04/27 07:00 大橋伸太郎
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パワーアンプ部は大電流駆動に対応したプリント配線を採用した。デノンはHi-Fiアンプでも常に低インピーダンス化をテーマとするが、今回、基板に印刷されている銅のパターンの厚みを一般規格の35μから倍の70μへと厚くした。これはA110で採用された手法で、音質への実効性が証明されA1Hでも続けて採用した。

X8500HA/A110でもヒートシンクとパワーアンプの間に2mmの銅板を挟んでいるが、A1Hは倍の4mmを採用。ch数が増えて奥行きが長くなったため、重さは2倍以上になる。銅の値段が高くなっている昨今だが、音に代えられず贅沢に使用した。

15chとなると強力な電源部が必要である。13chのX8500HAは重さ8.1kgの電源トランスを使っていたが、今回はそれでは不足で、V/A値15%増の大容量トランスをメーカーが新規に製作した。

しかしその開発当初、トランスの試作品が入った段ボールを開けてみると、重すぎて自壊しているではないか。もっと強固な筐体にしてくれとダメ出しをして自壊しないものが出来上がったのだが、シャーシに組み付けて落下試験をすると今度は歪んでしまう。何度かやり取りがあって、A1グレードの強力な筐体を持ったトランスが誕生する。重さにして11.5kg。現行の7ch AVアンプ「AVR-X2800」の総質量が9.5kgなので、7chアンプより重いトランスがこの中に入っているわけだ。

15.4chプロセッシング出力のため、超大型カスタムトランスを開発。実に質量11.5kg!

ブロックコンデンサは音質を最も左右するパーツだ。A110/X8500HAも22,000μFの大容量コンデンサだが、その1.5倍の33,000μFのニチコン製ブロックコンデンサを採用した。A110と同じ、低域の豊かに出るタイプだ。

デジタル部をみていくと、D/AコンバーターはESS製の2ch/32bit DACチップを10個使用する。コンデンサーはサウンドマスターの山内慎一氏が選定したものを採用、全DACを1個のクリスタルで同期させることで、正確なクロックを実現している。

筐体を無用に大型化しないで済んだのは、プリアンプの小型化によるところが大きい。X8500HAのプリ部の基板は2層だったが、A1Hでは4層になっている。これにはワイヤーを使わず最短距離で結べる利点もある。HDMIが載っている基板は実に10層である。

内部を上から見た図

また、部品の進化もポイントで、X8500HAは2個のDSPでコントロールしていたが、A1Hでは最上位チップ「Griffin Lite XP」1個を採用し、X8500HAより精度の高いコントロールを実現した。この2つの進化がプリアンプの小型化を可能にしたのである。

さらに歴代A1専用のこだわりのスピーカーターミナルを15年ぶりに復刻して採用した。スピーカーターミナルだけで1kg超という重さ!

さて、これだけの重量物を支えるとなると、強力なシャーシが必要だ。ボトムプレートの厚みはX8500HAより0.4mm厚い1.6mm、さらに2枚のプレートを重ねた3層構造で総厚4mmである。トランスの載る部分は別途2mmの銅板を下に敷くため6mm厚になる。それを鋳鉄のフットで支える。A1を作るのであれば、これをあれをと積み重ねていくと実に32kgになっていた。

音決めしたのは山内氏。妥協を知らない一徹なサウンドマスターが音質検討に費やした時間は10ヶ月以上、AVアンプでは過去最長であった。その思いを伝えるために全力で無理難題に答えた設計担当が、A110を送り出した高橋氏であった。最強のタッグで孤高のAVC-A1Hが誕生した。

スピーカーターミナルはAVC-A1HDと同じものを採用しようとしたところ、すでに生産終了していたためロゴ含め忠実に復刻した

次ページ画質が良くなったことにも驚き! AVC-A1Hを自宅環境でじっくり試した

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