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理想的な音の放射を実現

【製品批評】PIEGA「Master Line Source 2」− 新リボンユニット搭載の次世代フラグシップ

公開日 2017/07/04 11:17 山之内 正
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製品批評


スピーカーシステム
PIEGA
Master Line Source 2
¥10,000,000(ペア・税抜)



ピエガがハイファイスピーカーの世界で堅固な地位を築くことができたのは、リボン型ユニットの魅力を伝え続ける一貫した姿勢が支持されたからだ。このたび新世代のリボン型ユニットを搭載する新フラグシップ「Master Line Source2(MLS2)」が誕生した。

新しい同軸型「ラインソースユニット」は、トゥイーターの振動板形状を縦長に拡大して輻射面積を大幅に増やしていることが特徴だ。新同軸ユニットを縦に4基並べるライン配列を採用した上で、アルミ振動板を採用した220mm口径のウーファーとパッシブラジエーターを各2基ずつ前後に配置し、400Hz以下の低音を受け持たせる。音源をライン上に配列すると、音波が円筒状に輻射されることで音源から聴き手の耳に音がダイレクトに到達するのだ。

ピエガ新世代のリボンユニットとなる同軸型ラインソースユニット。このユニットを4基、縦に配列している

もうひとつの技術的ハイライトは「音響レンズ」だ。MLS2ではMDF材で作った特殊形状の音響レンズを同軸ユニット背面に配置することによって、背面に輻射される音を水平方向に均一に拡散させ、壁からの反射の影響を抑えることに成功した。本体は10mm厚のアルミ製バッフルとMDF製エンクロージャーを組み合わせて堅固な構造を確保している。

塗装を施したMDFで構成される精巧な音響レンズ。この回折と反射効果により、後方に放射される音が拡散される

大面積で極薄の平面振動板が生む音には、音の実在感が極めて高いことと、「箱」の存在を感じさせない透明な音色という2つの特徴がある。本機はそれに加えて立体的な音場の広がりが見事で、ショスタコーヴィチの交響曲では、前後左右に広大なサウンドステージが展開した。

音の実在感が高いのは、従来の同軸型ユニット比で約3倍、一般的なドーム型トゥイーターに比べて50倍というリボントゥイーターの振動板面積に理由がありそうだ。ホーン楽器やパーカッションがその典型的な例だが、声や弦楽器もスピーカーの介在を忘れさせるようなリアリティがあり、聴き慣れた音源からも初めて聴くような新鮮な印象を受ける。

スピーカー本体は大柄だが、楽器のイメージが広がりすぎることは決してなく、三次元のサウンドステージのなかに楽器や声の音像が鮮明に定位し、それぞれのイメージに余分な音がまとわりつくことがない。聴いているうちにスピーカーの存在が意識から消えるほど、音楽に集中できる。また、各音域もそれぞれのユニット構造の違いを意識させず、スムーズなつながりを実現している。

ムジカ・ヌーダのベースとヴォーカルのデュオはその例のひとつで、イタリア語の明るくスピードの乗った発音とベースのピチカートが完全に同期し、抜けの良さが際立つ。ベースはE線の最低音までテンションが緩まず、パッシブラジエーターも含めて正確なレスポンスを確保していることをうかがわせた。

迫真の実在感と繊細な描写力が両立したMLS2の再生音は、ピエガが目指してきたサウンドの完成形であると同時に、今後の方向を決定づける音でもある。新しい同軸ユニットの技術は他の製品にも波及するはずなので、今後の動きからも目が離せない。

(山之内 正)

Specifications
●型式:ダイポール3ウェイスピーカーシステム(アコースティックレンズ搭載)●ユニット構成:ラインソース・ドライバー×4、220mmウーファー(Ultra High Quality Driver)×2、220mmパッシヴ振動膜(Ultra High Quality Driver)×2●能率:92dB/W/m●推奨アンプ出力:20〜500W●インピーダンス:4Ω●再生周波数特性:20Hz〜50kHz●クロスオーバー周波数:400Hz/3kHz●入力端子:WBTターミナル(バイワイヤリング対応)●サイズ:1760H×320W×430Dmm(平型脚含む)●質量:93kg/1台●仕上げ:シルバー、ブラック、ホワイト、ゼブラウッド●取り扱い:(有)フューレンコーディネート



※本記事は「季刊オーディオアクセサリー」163号所収記事の一部を抜粋したものです。くわしいレビューは雑誌でご覧頂けます。購入はこちらから

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