パワーアンプ/DSP内蔵で“速い”ウーファーを実現

アバンギャルド「DUO XD」で体感した、大型ホーン搭載スピーカーの真骨頂

鈴木 裕
2017年05月08日
avantgarde(アヴァンギャルド)のスピーカーシステム「XDシリーズ」は昨年、第3世代へと進化を遂げ、ラインナップも刷新された。今回はその中から「DUO XD」について、鈴木裕氏がレポートをお伝えする。

新XDシリーズの進化度と本機の特徴
ミッドレンジの振動板が変更、ウーファー部にはDSPを搭載

「DUO XD」のミッドレンジのホーンは27インチある。実際に見るとまずこの存在感に魅了されるが、いざ聴き出すとリアルで鮮明な音楽の世界にさらに引き込まれることになる。初代のDUOは「UNO」や「TRIO」と共に1991年に登場。そして第2世代の「G2」に成長し、四半世紀を迎えた今年第3世代のDUO XDへと進化した。


「DUO XD」¥4,700,000(写真はゼブラーノパネル)。標準色(ホーンと同じカラーパネル仕様)¥4,500,000、タイガーローズウッドパネルは¥4,700,000。すべてペア・税抜き価格。ホーンは10色を用意
まずその概要を押えておこう。トゥイーターは従来のアルミ振動板の8Ωタイプから、「TRIO XD」と同じものにアップグレードされた。マイラーフィルムの振動板で磁気回路の磁石は3kgの重量級、インピーダンスは17Ωでミッドとのクロスは1kHzだ。ミッド用のドライバーはアルニコマグネットの磁気回路を持っているが、ドライバーの振動板がソフトメッシュのファイバーグリッド(格子)ドームになった。繊維を編んだ上に、特殊樹脂素材でコーティングしてあるものだ。


ミッドレンジドライバーにはアルニコマグネットを採用。強靭なグリッド構造と伸縮性の高い裏地の組み合わせにより、分割共振を低減し、高周波歪みを吸収している

トゥイーターは独自のハイインピーダンス・ボイスコイルを採用。ダンピングファクターを向上させ、スピーカーケーブルの影響を低減する
そして大きな進化を遂げたのが、パワーアンプとDSPを内蔵したウーファー部だ。2基採用しているドライバーは先代の10インチから12インチに拡大。パワーアンプの出力は先代が250Wだったのが、ユニットごとに500Wという4倍の出力に増強されている。


ウーファー入力端子はスピーカーまたはXLR。ハイインピーダンスのバランス入力(トランス受け)で、バランス増幅やブリッジ接続のアンプとの接続も可能
さらに、低域用ユニットが持っている複雑なインピーダンス変動に対してアナログのフィードバック回路で対処していたが、XDシリーズではDSPによる高速キャリブレーションで対応。ゲイン調節、パラメトリックイコライザー機能を持つDSPと相まって、170Hz以上を受け持つホーンの音に対して“速い”ウーファーを実現している。

レコード再生の実力
解像度が高く新鮮なサウンドで、ジャズは聴いていて実に楽しい

試聴はエソテリックの試聴室で行った。プレーヤーはVPI「SCOUT II」。カートリッジはヴァン・デン・ハルのフラッグシップ「VDH-COLIBLI」。アンプ類はエソテリックで「E-03」「C-02X」「S-02」を使用した。

エリック・クラプトンの『アンプラグド』の2枚組、そのB面の1曲目「ロンリー・ストレンジャー」から聴く。ドイツのアーヘン工科大学の研究結果を引用すれば、一般的なボックス型のスピーカーに比べて、アバンギャルドのホーンシステムはダイナミックレンジが8倍、歪み率は10分の1、解像度は10倍という研究結果が出ているが、なるほどと思う。

特にその解像度だ。最近のハイエンドのヘッドホンで聴いているような情報量の多さが空間に刻みつけられている感覚。実に新鮮だ。クラプトンの声帯の粘膜の振動とか口腔の気流とか、ギターを弾いた瞬間の立ち上がりのごくごく短い瞬間に発生している指、弦、胴の鳴りの音の要素がリアルに聴こえてくる。

ビル・エヴァンス・トリオの『ワルツ・フォー・デビイ』からはB面の2曲を聴いたが、お店の中の静かなガヤやピアノのそぞろ弾くニュアンス、ウッドベースのタイム感など、聴いていて実に楽しい。さらに驚いたのはズーカーマンがヴァイオリンソロを弾いている「スペイン交響曲」で、スピーカー自体が実に静かなのだ。初代のアバンギャルドにあったホーンの鳴きや共振といったものがない。途中、ウーファーの80Hzを0.5dB上げてみたが、その調整にも敏感に反応。クリティカルに追い込んでいけるスピーカーでもある。



アバンギャルドのスフェリカルホーンに組み合わせられているドライバーはダイナミック型だが、特にそのミッドに採用されている7インチの良さと、ウーファー部の大きな進化に3代目であるXDシリーズの真骨頂を感じた。試聴しながら、これだけ大きなホーンが鳴っているのにそのスピーカーを無視するかのようにサウンドステージが展開し、音像が透明な空間に刻まれる様にしばし聴き惚れた。

なぜ大型のホーンが必要なのかは、聴かないと納得できないだろう。「オーディオってこんなもの、スピーカーってこんなもの」と良くも悪くも悟りの境地に達してしまっている方に体験していただきたいスピーカーだ。

(鈴木 裕)


本記事はanalog vol.53からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。