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有機ELならではの高い黒の表現力

【測定】ベゼルレスが斬新な「Galaxy S8」。有機ELディスプレイの画質を徹底チェック!

公開日 2017/06/30 11:41 鴻池賢三
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「表示を最適化」(色温度は出荷設定)

このモードはUI上で「画面の色の範囲、彩度、シャープネスを自動的に最適化します。このモードはサードパーティ製アプリには適用されない可能性があります」という説明がある。どのような条件でどのような処理がなされるかは明示されていないので、アプリで測定用のカラーパッチを表示した際の振る舞いも不明だが、測定結果は以下の通り。


色温度は7500K程度で暗部から明部まで安定し、意図を持って設定および調整されていることが分かる。ガンマは基準の2.2ライン(黄色)を僅かに下回るが乱れはない。2.2に沿いつつも、気持ち明暗のメリハリを持たせたいという画作りの意思が読み取れる。色域は非常に広くDCI-P3相当だ。

「AMOLEDシネマ」


色温度が6500Kに整えられていて、一瞬「シネマ」という名称と符合していると納得した。ところがRGBバランスを見るとG(緑)の成分が少なく、目視でも赤味を感じる。xy座標ではx=0.313、y=0.314で、D65の.x=0.3127、y=0.3290と乖離がある。相対色温度は6500KだがD65ではないのだ。xyで正確にD65に改めるべきだろう。色域は先の「表示を最適化」に比べると、G(緑)の拡張幅が抑えられている。映画映像で見栄えしつつも、自然さを考慮した結果だろう。

「AMOLEDフォト」


色温度などは「シネマ」と同様だが色域設定に違いがある。「シネマ」はDCI-P3を狙った設定のようだが、「フォト」の赤色の色度点はBT.709(=sRGB)に合致する。写真のスタンダードであるsRGBに沿いつつ、緑の発色を拡張する画作りのようだ。

「標準」


色域はBT.709にほぼ沿っており、「標準」がBT.709と意識していることが読み取れる。一方、色温度は相対6500Kながら、やはり座標ではx=0.313、y=0.314で、D65の.x=0.3127、y=0.3290と乖離がある。

他にも「表示を最適化」では色温度調整が可能なため、ベストなポイントを探した。設定とその際の測定結果は次の通り。

【ホワイトバランス】

「暖色」で拡張オプションの「青」を最小に設定した時、D65に最も近くなった

「表示を最適化」(色温度調整後)

白100%の座標はx=0.308, y=0.325に修正でき、D65のx=0.3127, y=0.3290に近づけることができた

ここまでの測定では、HDTV基準の映像を得ようとすると色域の観点では「標準」が望ましい。しかし本機では、「標準」を選択すると色温度の調整ができない。色温度を重視する場合には「表示を最適化」で調整できるが、今度は色域の乖離が大きくなってしまう。結論として、マスターモニターライクな映像は望めないだろう。

【色再現性】

先述の基本測定で、本機はマスモニ調の映像を得るのは難しいことが分かったが、定点観測として、まず色域設定がBT.709に近い「標準」モードを選択しチェックした。

測位結果を解説するために表の見方を説明しておこう。キャリブレーションソフトウェア「CalMAN」で、中間色を含む約100ポイントを測定した結果を示している。図中、「CIE 1931 xy」の大きな三角形は人間が見る事のできる色の範囲で、内側の三角がBT.709の範囲を示している。その中で白い枠が測定のターゲット、色のついた丸印が実際の測定値をプロットしたもの。

評価は中央のグラフ「DeltaE 2000」が指標になる。Δ1(緑色のライン)以下だと、人間の視覚で基準に対する色のズレが識別できない。Δ3(黄色のライン)は、違いが分かるものの許容範囲、Δ10(赤色)のラインを超えるとNGとされる。

「標準」


色温度設定がD65ではないことから、グレースケール(10%〜100%)の各点がΔ10程度となってしまい、アベレージdeltaEもそれに引っ張られて5.93と、芳しくない結果が出た。MAX deltaEは11.26で、目視でも白色がピンクに見えてしまうポイントがある。動画映像でも確認したが、白壁の色が部分的にピンクに見える場面があった。

MAX deltaEは11.26だったポイントのイメージ。左のグレーが本来の色、右の色が画面上での見え方(イメージ)

「表示を最適化」(色温度調整後)


色域がBT.709より広いので色再現は忠実とは言えないが、色温度を調整するとグレースケールが改善し、アベレージdeltaEは「標準」モードよりも好成績な5.8に落ち着いた。

参考までに、DCI-P3を狙ったと思われる「シネマ」と、「表示を最適化」で色温度をD65に追い込んだ設定をDCI-P3基準でチェックした。

「AMOLEDシネマ」


色温度設定がD65ではないことから、グレースケールを中心にDelta Eの値が高く出てしまうが、BT.709よりもDCI-P3に照らした方がアベレージは低く出た。つまり本機は、パネル性能を活かしてDCI-P3基準で表示する狙いがあり、そうした意図を理解して映像を見るなら色鮮やかで悪く無いと言える。

「表示を最適化」(色温度調整後)


DCI-P3の色域に拡張されているという前提は忘れてはならないが、delta Eの値で比較すると最も良い数値が出た。また、先のBT.709ベースの測定結果でも色温度が最も適正で、総合的に本機で映像コンテンツを視聴する際には候補の一つとして推奨したい。

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