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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第172回】We are X ! Love Titan ! チタンイヤホン/ヘッドホンをX JAPAN「ART OF LIFE」30分一発レビュー!

公開日 2016/12/09 10:00 高橋 敦
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●16分30秒|第二間奏-C
●20分31秒|第二間奏-D

 不協和音を重ねまくる混沌としたブロック。なのだが、このイヤホンは「不協和の透明感」とでも言えば良いのか、そういうものまで見せてくれる。音程としては危うかったり完全にぶつかっている音が重なっても、濁るという感じはさせない。最初の方で述べた「透明感の高い音色同士であるおかげか、余計な厚みや滲み、濁りが生まれない」というところを、改めてより顕著に感じられる。

●21分41秒|第二間奏-E
●23分22秒|終盤イントロ

 ピアノソロの基本フレーズが再び浮かび上がってきて、混沌の中に光が差し込む。そして全体イントロのフレーズがやってきて……というブロック。次のブロックに移る手前、荘厳なストリングスの厚みが際立つ。ローが出ているというわけではなく、解像感や質感の描き込みで「存在感としての厚み」が増している、というような印象。

●24分18秒|第一スパート-3rd
●24分44秒|第一メイン-3rd

 またも嵐のようなドラムスだが、またもそれを補強するベースの活躍もしっかり届けてくれる。重低音的な存在感の強さではなく、素直で明瞭な届け方のおかげだ。

●25分25秒|ギター主題-4th
●25分46秒|第一サビ-3rd
●26分08秒|様々なテーマの再提示
●26分27秒|第三間奏
●27分16秒|イントロ主題-2nd
●27分31秒|第二サビ-3rd(最終サビ)

 怒涛のエンディング!ということでこちらも一気にまとめて。というか総まとめのブロックなので、ここで改めて気付くというような要素はあまりない。だが最後の最後の第二サビで、ベースが音場のローエンドに溶け込んで支えている様子、スネアドラムの一打一打への力の込めっぷりなどは印象的。

FitEar TITAN 印象まとめ「光る透明感とクリアさ、全体が充実したバランス良い音質」

音色の透明感、そしてそれが必然的に生み出す音場の透明感が特に光る。ギターのエッジ感が暴れすぎず整うことも印象的だ。どういった要素からそれが生み出されているのかを断言することはできないが、チタンハウジングもその要素の一つであってくれるのかもしれない。

「透明さ」は「濁りのなさ」と言い換えられる。チタンは不要振動を抑える、制振性に特に優れる金属というわけではないと思う。しかし冒頭に載せたギターパーツのような、チタンそのものな小物をタップしたり床に落としてみたりして音を聴けばわかるように、素材自体の響きに癖がなく実に素直だ。特段に響きにくい金属ではないが、響いてしまうときでもその響きに癖がなく、本来の音に対しての濁りの成分にはなりにくい。それは「透明感」を生み出す要素の一つかもしれない。

研磨されていない音導管内周の様子。これを見ると、加工性は低いと言われるチタンをこの状態から鏡面に仕上げるとは…改めて驚かされる

もう一つ印象的なのは、超低域から超高域までのレンジの広さや低域の量感、そういった要素は飛び抜けて優秀なわけではない…にも関わらずの全体としての充実感だ。ハイブリッドでダイナミック型も使っているから低域すごい!高域側はBA型で伸びてる!…という感じではない。

完全密閉型だからなのか、低域が伸び伸びと鳴り響くタイプではない。高域側のBAも超高域を追加するためではなく、フルレンジ的ダイナミックの高域のディップ、凹む部分の補強に使われている。

しかし、ほぼフルレンジのダイナミック型を完全密閉にしたからこそ中域から低域にかけて目立つピークやディープ、凸凹がないのでは?という気もする。特にバスドラムのアタックと胴の響きのバランスの良さからそれを感じた。

高域のディップをBAで補強することで、そこはフラットに近くなっているはずだ。だがそこは、相対的な感覚としては「凹んでいそうな箇所が凹んでいない」わけでもある。高域に少しだけアクセントがあるように聴こえるのは、それが理由かもしれない。何にせよ、シンバルの鈴鳴り感といったところが際立つイヤホンだ。

濁りや暴れも巧く生かした、そんなチューニングも良いだろう。ダイナミック型らしさという意味ではその方が分かりやすいかもしれない。しかしこのモデルはそうではない。「そんなにワイドレンジである必要はない。人の聴覚の完全な守備範囲内でのバランスやポイントを的確に押さえることが重要だ」そんな意識、意図を感じさせるサウンドのイヤホンだ。

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