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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第167回】ラジオ好き集まれ!ソニーが送る“現代のラジオ”「SRF-V1BT」の素晴らしさ

公開日 2016/10/07 11:19 高橋敦
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この機能切り替えのボタン操作では、選択から実際の切り替えまでワンテンポの猶予が用意されていることに感心した。例えば、FMとBluetoothの間に置かれているAMの音が意図せず鳴ってしまうみたいなことはなく、配慮が行き届いている。なお、ワンテンポ待たずにとにかく手早く切り替えたい場合は、選択後に「決定」ボタンを押せばOKだが、実際それで稼げる時間は0.5秒とかその程度だ。

また、それらのボタンやホイールは天板に対してフラットでありつつ、適度なクリック感とクリック音を持たされており、触感と聴覚へのフィードバックの心地よさも操作感のよさに貢献していそうだ。


筐体上半分の側面は突き板仕上げだが、ウッディさを殊更にはアピールせずにさらっとシックに生かしている
他にも、前述のように充電式バッテリーを内蔵しておりFM受信時で約21.5時間の駆動が可能で、本体のコンパクトさと合わせて室内での持ち運びの自由度が高い。この点は自宅内でも場所によって電波の受信状況が変わる場合などにも役立つ。

例えば、AMを聴きたいときはその周波数をいい感じに受信できる窓際などに移動する、といったことが手軽にできる。ちなみにAMの受信感度も悪くない。そして特にアピールはされていないが、バッテリー内蔵という要素は災害時のことを考えても心強いだろう。


背面端子。写真奥から電源アダプタ、3.5mmアナログ入力、3.5mmヘッドホン出力

ワイドFMとは?その威力は?

さて、この製品は現在の製品としては当然だがワイドFMに対応する。

ワイドFMとは「AM放送のFMでのサイマル放送(同時送信)」の愛称だ。「FM補完放送」というお硬い名前が本名で、何を「補完」するのかというと、災害時の設備損壊によってあるいは平常時から何かの理由でAMの電波状況が悪い地域に向けて、AM放送を補完して届けるということ。近年の各分野への電波割り当ての整備でFM放送の周波数帯域の一部に空きを確保できたため、それがこれに割り当てられて実現した。詳しくはソニーのサイトでも確認できる。


ワイドFMについては、ソニーサイトで詳細が確認できる
災害時のことはそれはそれで重要なので頭に留めておいてもらいたいが、普段からありがたいのは平常時の改善だ。AM周波数の電波は大きな目で見ると遠くにまで届く。しかし山やらビルやらという物理的な大きな遮蔽物の陰には電波が届きにくい。そのため「東京都内に住んでいるのに在京局がノイズまみれだったり全く受信できなかったり…」なんてことも珍しくない。

例えばだが、文化放送は埼玉県川口市、ニッポン放送は千葉県木更津市、TBSラジオは埼玉県戸田市にAM送信所を構えている。それらの送信所はもちろん関東全域をカバーするだけの電波を出力しているのだが都内、埼玉、神奈川、千葉でも、実際にはそれらの局をまともに受信できない場所も多い。

例えば文化放送の場合、川口市との間に都心の高層ビル群が存在する神奈川方面では受信が難しくなりがちだという。僕は東京の多摩方面に住んでいるが、ここも受信状況はよくない。

それに対してワイドFMは、共同で「墨田FM補完中継局」を設置運営しており、この送信アンテナは東京スカイツリーに設置されている。AMとFMの違いのため電波の絶対的な到達距離では劣るが、何しろ都内の他のどんな建築物よりも高い建物に設置されているので、たいていの障害物を上から超えて「東京都23区と埼玉県・千葉県・
神奈川県の主要都市及び周辺」にはクリアな電波を届けることができるのだ。

全国的な例でいえば「上坂すみれの♡をつければかわいかろう」は文化放送の他、ネット局の近畿の朝日放送、中京の東海ラジオ放送、福岡のKBCラジオもワイドFMを開始しており、北海道のSTVも近日開始予定。着実な広まりを見せている。

次ページワイドFMは驚愕のクリアさだった!

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