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フラグシップのポテンシャルを探る

オプトマ「HD92」レビュー<後編>映画の“ルック”を再現!貝山知弘がHD92調整を極める

2015/12/24 貝山 知弘
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新開発の独立型RGB-LEDを採用したオプトマのフラグシップDLPプロジェクター「HD92(関連ニュース)」。細かい画質調整機能を備えることが特徴のHD92に関して、本機を取り扱うOSでは、公式の“OS推奨・画質設定値”も公開している。前編では、評論家・貝山知弘が、このOS推奨値による映画『アラビアのロレンス』の再現性を評価した。後編となる今回は、同じく貝山氏がジャンルの異なるBDタイトル4作で“作品ごとの画質調整”を極め、その視聴感をレポートする。

HD92(¥OPEN/実勢価格500,000円前後)

■様々な映画ジャンル別に、HD92の画質調整を試す

前回はフルHD LEDプロジェクター HD92の充実した画質調整機能について詳述した。そして人間の顔や姿が千差万別であるように、映画でも個々の作品の姿、《ルック》があって、それに合わせた〈画質調整〉が重要であることを説いた。

しかし、このことについて読者から様々な問い合わせを戴いた。それに答えるには、理屈より実例を挙げるのが好ましいであろう。そこで自分が好きな映画を取り上げ、それぞれの作品の《ルック》を示し、どのような画質調整が好ましいかをレポートすることにした。

■《ルック》を探るアプローチ

《ルック》とは、映画撮影の前にメイン・スタッフ(監督、撮影監督、美術などの主要スタッフ)の間でよく聞かれる言葉だ。そのニュアンスを理解するのに格好の素材がある。いまは亡き名カメラマン、ネストール・アルメンドロスが1978年に監督テレンス・マリックと撮った映画『天国の日々』はその好例だ。マリックは撮影前アルメンドロスに、いくつかのシーンは「マジック・アワーに撮影したい」と提案した。「マジック・アワー」とは日の出と夕暮れに現れる時々刻々に変化していく特異な光のオンパレードをさす言葉で、その効果は作品の重要なファクターになっている。

『天国の日々』公式サイト

これは大都会の仕事に適合出来なかった男ビル(リチャード・ギア)が、恋人のアビー(ブルック・アダムス)を妹と偽り、ある農場の季節労働者として働く中で起こった物語で、富裕な農場の経営者がアビーに恋したことから複雑な三角関係が生まれてしまう。マリックとアルメンドロスは、大自然の美しい光の乱舞と、複雑な人間関係の悲劇を平行させて描いたのだ(詳細を知るのには、フィルム・アート社から発売されている本「マスターズ・オブ・ライト」を読むといい)。

わたしは映画を観るたびに、自分が感じたままの《ルック》を書き留めることにしている。その作品が自分の中でどのように感じられたか、どのように消化できたかを知る切っ掛けとなるからだ。

ことわっておきたいのは、わたしがここで書く《ルック》は、極めて主観的なものだということだ。それは、作品の製作者が考えた《ルック》と違っていることがあるかもしれない。しかし長年の経験から、これを基に映像の調整を行なう効果は大きいと思っている。映画作品と自分との関わりが実感できるようになるからだ。

■HD92における、《ルック》と画質調整の記録

HD92の実力を知ったわたしは、その後、数本の作品の調整を行なってみた。すべての映画の感触が調整一つでころころ変る現実を体験し、改めて画質調整の必要と楽しさを知った。作品ごとの《ルック》を探り、それを画質調整で活かすことは、実に楽しい作業なのだ。

HD92の画質設定メニュー。ディスプレーモードやコントラスト、輝度など、細部をそれぞれ調整できる

左のメニューから、一番下の「詳細設定」に入ったところ


色温度や色域、CMS調整が行える

こちらはCMS調整メニュー

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