アニソンオーディオ:第6回

ゲーム未プレイのライターがゲームサントラを聴いたらこうなった

赤江ユウ

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2015年10月01日

特に気になった曲を厳選

試聴に用いたオーディオ機器だが、この時の記事と同じ布陣が揃えられた。

感じる既視感、けど意味があります

パソコン Macbook Pro 
再生ソフト Audirvana Plus2.0 
DAコンバーター ローランド Mobile UA 
スピーカー GENELEC G One 


横着したわけではなく、アクティブスピーカーがポイントとなるのだ。これがあれば、USB DACとの接続による再生はもちろんだが、例えばPS Vitaなどのヘッドフォン出力端子と変換ケーブルで繋いで、ゲーム自体を良い音で楽しむことが出来る。テレビとの接続やBluetooth機能なども有用だが、これ以上は企画がブレるので触れないでおく。けれど、アクティブスピーカーは活用の幅が広く、ゲームとの相性が良いことは伝えておきたい。

さて、試聴はゲームをプレイしたことのある編集担当と、プレイしたことのない筆者での協力体制により進めることとなった。筆者が音楽を聴いた際のファーストインプレッションを語り、それがゲームの内容に対してどこまで近いのかを編集担当に確認してもらうのだ。まず原曲にてその印象を確かめ、その後それぞれのアレンジでどのように変化しているのかを聴いていく形となる。

なお収録されている楽曲数が多く、全てレビューすると大変なことになってしまうので、一聴してこれはと感じた3曲をピックアップさせていただいている。


●「風を共に舞う気持ち

赤江:長閑な朝って感じですね。何だかとても情景がイメージしやすいというか、雰囲気のある曲。ゲーム的に言えば、最初の方の村とかで流れる音楽的な。

編集:言わんとする所は凄く分かります。確かにそんな風に感じますね。正解ですが、ゲームのタイトル画面で流れる曲でした。続編となる「空の軌跡 SC」では若干アレンジを変えて、飛行船甲鈑でのシーンなんかで使われています。


メロディは後述の「星の在り処」がアレンジされているもので、明るく柔らかな楽曲。タイトルが非常に上手く楽曲を表しているが、アレンジによって“風”や“舞う気持ち”の表現が異なるように感じられる。短い中に、豊かなイマジネーションが込められている。

オリジナルは跳ねる様な音で構成されているのが特徴的だ。例えばアルペジオのギターピッキングなど、ピンッ、という響きが常に含まれているし、他の音使いにしても同様だ。また、素朴さを感じさせる音色がメインに立っているのも面白い。流麗な、というよりも天真爛漫な舞いを感じさせるイメージの楽曲となっている。

アレンジバージョンとなる「VIVE!〜風を共に舞う気持ち〜」では、オーケストレーションの楽曲へと大胆な変貌を遂げている。二転三転していく疾風怒濤の展開を思わせるような、“旅”のテーマであるという印象が強い仕上がりだ。

Evolution版ではストリングスが主旋律を担い、伸びやかさや涼やかさが強調されたアレンジとなっている。拓けた丘に立つような、空気感を感じさせる構成。その広がりの感覚が、ハイレゾではより感じられるように思う。


●「虚ろなる光の封土

赤江:これはおそらく、ボス戦とか重要な戦いのシーンの曲でしょう。緊迫感があって、疾走感もある。戦闘曲だとしても、毎回これだと疲れてしまいそうなくらい緊張を強いられるほど。きっと時間制限つきの戦いとかですね。

編集:惜しい所をついています。正解は、ラストダンジョンで使用される曲でした。ユーザーからの人気も高い楽曲で、今回は外しましたが『空の軌跡ざんまい』というアルバムにもアレンジ版が収録されています。


曲の要素としては「空の軌跡」というシリーズの名を関するテーマ曲をベースに取り入れ、オーケストラ調に仕上げたもの。5分を越えるオリジナルサントラ盤でも最長の構成だが、ただの繰り返しではなく後半でソロピアノが追加されるなど、全体を通して作り込まれている印象だ。

オリジナルではメインメロディをリードするブラス、エレクトリカルなアクセント、低音を支え楽曲を引き締めながら崩壊の危うさを演出するビートなど、良い意味でゲームミュージックならではの特色が感じられる。

Evolution版だが、まずアレンジとして電子っぽさが抜けている。より楽器の音を中心に据えた構成となり、荘厳さが増した印象だ。音の強弱がはっきりと出て、ビビットになっている。そしてハイレゾであることの恩恵が大きく感じられる。前後左右への広がりといった、空間性の表現がはっきりグレードアップしていると明言出来るほど異なる。ダイナミックレンジの広さを上手く活かして、深みを加え、言うなればクライマックス感がアップしている。アレンジの違いもそうだが、ゲームミュージックにおけるハイレゾの意義といったポイントも判断しやすい1曲だ。


●「星の在り処

赤江:完全にメインテーマですね。エンディングで流れるに違いない。エンドクレジットが流れるのが見えるようですもん。と言うか、何も知らずに聴かされたとして、ゲーム関連の楽曲と気づくのは難しいです。

編集:その通りですね。エンディングではボーカル入りですが、その他にも作中のイベントシーンではハーモニカバージョンが流れたり、色々と展開されている曲です。


まったくもって失礼なのだが、ただただ良い曲で驚く。これはさまざまなバージョンが作られるわけだ。インストゥルメンタルの楽曲よりも、さらに“普通の曲”に近いボーカルの曲では、その音楽性の高さをまざまざと見せつけられるようだ。メインとなるボーカルのメロディは切なさを多分に含んだしっとりとしたもの。それが、演奏のアレンジや担当するボーカリストによって、かなり違う顔を見せてくれる。根本がしっかりしているからこそ、どれもが破綻することなく成り立つのだろう。

オリジナルはゆったりとした入りから、民族音楽色の強いジャジーな展開につながる。使われる音色は多いが、ポイントごとにしっかりと仕事をしている、という形で渾沌としてはいない。こういった音使いは、ある種の世界観を持っていないとなかなか見られない。楽曲としての完成度の高さとゲーム音楽ならではのメリットが上手く融合した好例だろう。

『ほしのありかざんまい』からの「星の在り処 serenade」は、水谷美月によるボーカル/ヴァイオリンをメインとした構成で、チェロ、ピアノ、パーカッションが周りを支えている。タイトルのセレナーデは、音楽ジャンルとしての側面もそうだが、相手を想い奏でられる音楽としての面を主張しているように感じる。それだけ感情が揺さぶられるような、美しいアレンジとなっている。

Evolution版ではオーケストレーション・アレンジがなされており、管弦楽器がバックの主体となっている。しかし、壮大華麗といった豪華さを押し出しているわけではない。メインメロディを活かして、抑えるべき所は抑え、盛り上げるべき所を盛り上げ、曲の持つ感傷を見事に描き出している。

軌跡jdkアクースティックス版では、ヴァイオリン、ギター、ボーカルが溶け合うようにして音を奏でる。それぞれは解像度高く分離しており、そのつもりであれば聴き分けは容易だ。けれど、空間を満たすような音は、そのまま音楽として全体を受け止めた方が良いだろう。どこまでも広がる、といった感覚ではなく、良質なジャズ・バーのような距離感。アルバムのコンセプトを色濃く示すタイトルだ。



今回、「空の軌跡 FC」の楽曲を色々と聴かせてもらい、レビュー曲以外にもインプレッションクイズを行った。結果は全体的に実際のシーンから当たらずといえども遠からず、といったところ。ちなみに、筆者はゲームに関してライトユーザー層に位置すると自負している。

つまるところ、根底にある「空の軌跡」の世界を感じ取ったというわけだ。これがゲームミュージックの素晴らしさだ。ある作品の音楽を聴くということは、異国を旅するような感覚に近い。その世界にハマればとことんヒットする

ゲームに興味がないからと、ゲームミュージックにまで関心を持たないでいるのはもったい無い。何回か聴いたけどツボじゃなかった、という人も同様だ。ゲームの数だけ、世界が存在する。自分が好きな世界の音楽が、必ず見つけられるだろう。膨大過ぎてどれから手を出せばいいか分からない、という方には、日本ファルコムのタイトルはお薦め出来る。筆者はサントラを聴いて、思わずゲームソフトを購入してしまったほどだ。それだけ魅力的な世界であると断言しよう。

購入したゲームをプレイ中。戦闘中の音楽がまた良いのです


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