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若手評論家4人が聴く ー オーディオテクニカ“IMシリーズ”全6機種総合レビュー

公開日 2013/12/04 00:01
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ATH-IM70 by 折原一也 /製品詳細情報はこちら

新開発「デュアル・シンフォニックドライバー」による
ナチュラルサウンドの頂点



ATH-IM70/¥OPEN(予想実売価格10,800円前後)
オーディオテクニカが2013年のインナーイヤー型ヘッドホンの新機軸として、1つの筐体内に同調する2つの8.8mmドライバーを内蔵した「デュアル・シンフォニックドライバー」を搭載した新モデル。レッドにカラーリングされたアルミと硬質樹脂の異素材ハイブリッドボディを採用。インナーイヤー型としては巨大な筐体ながら、ケーブルも耳かけタイプの形状となっており安定感は十分。外出先で装着していれば、赤が目に飛び込むデザインからも個性を主張してくれる。

まず、iPhone 5で圧縮音源の試聴を行った。サウンドの傾向はダイナミック型ドライバーらしい空気感と迫力を上手く引き出すナチュラル志向。中域は音空間とライブ感を重視したチューニングとなっており、ボーカルは音楽のなかで自然と浮き立たせるタイプ。低音はパワフルに主張させつつも、ボリューム感を残しておりドコドコと腹に響くような音圧感も持つ。ジャズでは余韻タップリな空間を生み出す効果も持たせている。モニター調のヘッドホンとは一線を画すようなライブ音源を聴いているような独特の味が「デュアル・シンフォニックドライバー」の到達点だろう。

iBassoのHDP-R10を使ったハイレゾ音源の試聴では、空間の広がり表現に優れていることに気づかされる。「いきものがかり」の音源のようなバンド曲では、楽器個々の音のセパレートが明瞭になりボーカルとバックバンドとの距離感が表れるものだが、IM70の音はナチュラル志向を徹底し音楽としての調和を徹底させている。最もマッチしたのはノラ・ジョーンズのボーカルで、空間にナチュラルな響きを持たせてボーカルの伸びやかな声を浮かび上がらせる。

ダイナミック型ドライバーの持ち味であるライブ感と迫力をそのままに、クオリティを引き上げる事に成功したIM70の聞き心地の良さは、長時間好きな音楽を心地よく聴きたいというユーザーに最適だ。


ATH-IM50  by 折原一也 /製品詳細情報はこちら

ダイナミック型ドライバーの良さを引き上げた
「デュアル・シンフォニックドライバー」搭載



ATH-IM50/¥OPEN(予想実売価格5,980円前後)
専用チューニングの2つのダイナミック型ドライバーによる新構造「デュアル・シンフォニックドライバー」を採用したヘッドホンのエントリーモデル。耳かけケーブルを採用することで装着時の安定化を図る設計は上位機種のIM70と共通。IM50のカラーリングはブラックとホワイトで、デザイン面では大柄ながらより目立ちにくい外観となっている。

サウンドの傾向は、同じ「デュアル・シンフォニックドライバー」を採用しているIM70とやはり似ている。iPhone 5で圧縮音源を試聴したが、特にロックを聴いた際に「ドコドコと鳴らす」と形容したくなるような、適度に暴れてくれる心地良い低音は本機の持ち味と言えるだろう。ダイナミック型ドライバーの持つ豊かな低音再生能力を活かしながら空間的にも広がりを持ち、若干レトロな音楽的な楽しみのある特性を持つ。中高域は特定の帯域に偏らずクセなく鳴らすタイプながら、ダイナミック型ドライバーらしい迫力ある空気感を再現する。例えば、ダイアナ・クラールのジャズナンバーを聴けば、余韻たっぷりな鳴らし方でムードを盛り上げてくれるという具合だ。きゃり〜ぱみゅぱみゅのような現代的な電子音楽も、低音を量的に持っているため、気持ちよくならしてくれる。

ハイレゾ音源をiBassoのHDP-R10で試聴しても、IM50の音の傾向の基本はナチュラル志向だ。Daft Punkのテクノナンバーでは、高域にハイレゾらしいキレをしっかり出しつつ、低音をよりタイトにドライブする。モニター調に個々の音を分離して聞き分ける、というよりもナチュラル志向のサウンドだ。「いきものがかり」の楽曲も華やかさはあるものの、派手なハイレゾ志向というよりも着実にサウンドのクオリティを向上させている。

いずれにせよ、音バランスは低域から高域までナチュラル志向でまとめられており、空間再現性にアドバンテージがあるだけに、昨今流行のBAドライバーとは異なる音傾向を求める人にはまず試してもらいたいモデルだ。

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