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優れた音楽表現力をそなえたモデル

オーディオテクニカ「ADシリーズ」連続レビュー − 第2回「ATH-AD900X」

公開日 2012/12/07 10:14 取材・執筆/野村ケンジ
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オーディオテクニカのオープンエアーダイナミック型ヘッドホン「ADシリーズ」がこの秋、数年ぶりにリニューアル。フラグシップモデルの「ATH-AD2000X」を筆頭に、「ATH-AD1000X」「ATH-AD900X」「ATH-AD700X」「ATH-AD500X」の5ラインナップを展開している。

今回、野村ケンジ氏が新ADシリーズ5モデルを一斉試聴。各製品のクオリティはもちろんのこと、シリーズ内での位置付けなどトータルでのレビューを3回連続でお届けする。

  ◇  ◇  ◇  


第2回:「ATH-AD900X」
第1回「ATH-AD2000X」「ATH-AD1000X」のレビューはこちら
第3回「ATH-AD700X」「ATH-AD500X」のレビューはこちら


その下、5モデル中ちょうど真ん中に位置する「ATH-AD900X」は、上位2機種とやや趣が異なっている。ケーブルが片出しとなるほか、ハニカムパンチングが施されたアルミ製ハウジングも、途中に段差を設けたデザインと変更。また、上位2モデルではハイヤーパッドの付け根で角度を設けていたのに対し、「ATH-AD900X」ではドライバー自身のハウジング固定に角度を付ける構造となっている。

ATH-AD900X

前モデルとなるATH-AD900。ハウジングのデザインが異なる。新モデルでは、挟まっていたスポンジを排除し上位機種のようにユニットが見えるデザインに変更された


ATH-AD2000X(写真右)と比較すると、ハニカムパンチングケースとハウジングフレームの間に隙間が空いているデザインになっていることが分かる
搭載されるドライバーは、アルミ線に銅被覆をかぶせたをCCAW(銅クラッドアルミ線)のボビン巻きボイスコイルを採用する、専用設計の53mm口径ユニット。また、立体縫製と起毛素材を採用するイヤパッドや、新デザインの3Dウイングサポートによって、先代に対しては装着感もかなり向上している印象をおぼえた。

ケーブルは片出し式

「ATH-AD900X」最大の注目は、やはりそのサウンドクオリティだろう。空間表現、広がり感については上位2モデルにかなわないものの、解像度感の高さ、音色のリアルさについては、先代モデルより格段のクオリティアップを果たしている。基本的には抑揚に秀でた元気なサウンドなのだが、同時に表現も細やかで、ADシリーズならではの立体的なサウンドキャラクターとも相まって、楽器ごとの分離が良い、多層的なサウンドとフィールドを堪能できる。また、高域に関しては倍音成分の揃いも良く、ピアノの音がとてものびのびとした美しい響きを聴かせてくれる。いっぽうでヴォーカルは、男性も女性も、距離感の近いウォーミーな歌声を披露。抑揚表現も絶妙で、グイグイと曲の世界に引っ張られていく。なかなかに饒舌なサウンドといえるだろう。こういった音楽性の豊かさについては、「ATH-AD1000X」をも凌駕しているかもしれない。

音楽表現に優れた「ATH-AD900X」をとるか、空間表現に優れた「ATH-AD1000X」をとるか。選択の難しいところだ。しいていえば、ロックやジャズなどをメインに聴く人にとっては、「ATH-AD900X」の方が相性的には良好かもしれない。どちらにしろ、好みの範疇の話であることは確かだ。


(野村ケンジ)

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