ヤマハ調音パネル「ACP-2N」で、Phile-web読者の自宅を音響改善！〜第二弾・8畳和室客間〜

小さい部屋では特に難しい低域のコントロールを実現するACP-2N

ヤマハの本地氏は「オーディオ機器のグレードを上げれば、部屋の特性が強く反映されることになります。恐らく小幡さんの場合は、再生機器をグレードアップしたことで、何も対策を施していない部屋の特性が色濃く表れたために、聴こえ方が悪くなってしまった例だったのでしょう」と語った。今回はそこにACP-2Nを設置することで、部屋の特性が抑えられ、聴感上の音質が改善された。

ACP-2Nはどういった構造でこのような調音効果を発揮するのか？ ACP-2Nの開発担当者である本地氏自身によって、パネル構造の説明が行われた。

本地氏は「ACP-2Nは独自の音響構造により、共鳴を利用して、音波の波動の性質で吸音と散乱を両方行っています」と解説する。1本の管の片面の一部に開口部を設け、上下に長短2本の共鳴管を作り出すと、2つの周波数で共鳴する音響共鳴管ができる。ACP-2Nは、これをパネル状に複数連結させている。これによって、開口部回りに堅い反射面が構成される。入射する音に対して「開口部」から放射される音と「堅いパネル面」から反射される音が相まってほど良い散乱効果を生み、同時に「開口部」での音のエネルギー消費による吸音効果も得られるのだ。

小幡さんは、本地氏の説明を熱心に聞きながら「具体的にどれくらい吸音と散乱しているのですか？」と質問した。本地氏は、「ACP-2Nに入る音のエネルギーのおよそ30%を周波数特性上ほぼフラットに吸音します。さらに、のこりの70%を散乱反射させるイメージです」と答える。一般的な吸音材では、低音域の響きを抑制することは難しいが、ACP-2Nはこの吸音と散乱を両立する仕組みによって、低音域の不快な響きを抑制し、周波数による響きのばらつきを抑えることが可能となっている。

本地氏によれば、特に小さい部屋は低域のコントロールが難しく、例えば布団などを使って調音を行おうとする場合、布団に50cmくらいの厚みを持たせないと、低音域から高音域までのバランスのいい吸音特性は得られないものなのだという。しかしそれではもっと部屋が狭くなってしまい、良い環境で音楽やホームシアターを楽しむことができない。

本地氏は、「言ってみれば、これまで小さい部屋では低域の再生クオリティを諦めるしかなかったわけです。ところがこのACP-2Nは、29mmという薄さを実現しました。小さい部屋に設置してもほとんど問題ない薄さでしょう」と語った。

家族で楽しみたいとき、ひとりで楽しみたいとき…シーンによって設置方法を変えられる

また、ACP-2Nには厳密な設置位置の規定はない。質量5.7kgというひとりで持ち運べるサイズを実現する本製品は、自分で設置場所を工夫することもできるわけだ。

小幡さんの場合、リビングにいる家族みんなと音楽を楽しみたいときにはスピーカーの後ろとセンター部分の計3箇所に、襖を閉めて自分ひとりで楽しみたいときは壁際に4枚目を追加するといった具合で、設置方法を使い分けることもできるだろう。

本地氏は、「こちらのお部屋の一番の調音ポイントは、定在波の影響によって強く出てしまう低域のコントロールでした」と語る。最後にACP-2Nを設置した状態で部屋の残響特性を測定すると、こちらも問題ない結果が得られた。「定在波が一番問題だったのですね」と頷く小幡さんは、「これまでスピーカーに部屋が合っていないのだろうな…と残念に思っていましたが、このパネルを設置するだけでこんなに楽しんで聴けるようになるのは凄いことですね」と感想を語った。

オーディオ機器のグレードを上げたはずなのに、なぜか聴こえ方が悪くなってしまった…そんな経験をしたことがあるのは、恐らく小幡さんだけではないだろう。今回は、ACP-2Nを設置することで、使用機器と部屋の特性のちぐはぐさが解消され、高い調音効果を生む結果となった。

（レポート／ファイル・ウェブ編集部　写真／川村容一）

さて次頁では、今回ACP-2Nの効果を体験した小幡さん自身による体験レポートをお届けします。8畳の和室で、全部で10通りもの設置方法を試した徹底レポートは必見。ぜひお楽しみ下さい！