村田製作所の新スピーカー「ES701 Suono 京」を藤岡誠・福田雅光の両氏が語る

藤岡誠が語る「ES701 Suono 京」のクオリティと使いこなし

■最先端セラミックス技術を用いハーモニックエンハンサーを開発

ムラタ（村田製作所）は、セラミックスに関する電子素子・部品の研究・開発・販売が主な事業内容。それらはほとんど全世界のエレクトロニクス関連のメーカーへ納入している。つまりは私たちエンドユーザーとは大きな距離を持った企業である。しかし、唯一といっていいと思うが、オーディオに限って接点がある。その取っ掛かりになったのは、最先端のセラミックス技術の枝葉ともいうべき圧電方式ハーモニックエンハンサー（スーパートゥイーター）の開発と発売である。

これは半球状のセラミックスの表裏に金メッキの電極を形成し、そこへ電気信号を加えるとセラミックスが呼吸振動（点音源）をする圧電効果（現象）を具体化したユニットで、15kHz〜100kHzという高域・超高域の再現性が特徴。これまでES103、ES105を展開し、驚異的なトランジェント特性もあってマニアに大きな話題を提供した。

また、独自の設計思想のもとで、φ80mmの半球状圧電セラミックスを中高域ドライバーとして搭載したスピーカーシステムES024、ES301を発売。これらについては読者の知るところだと思うが、いずれも現在は生産終了している。その一方、海外ではオーストリアのウィーンアコースティック社が新型の高級スピーカーシステム「The Music」で20kHz以上の再現用にムラタのハーモニックエンハンサーを採用（φ1.3cm）。そして国内では新製品としてハーモニックエンハンサー完成品「ES105A Suono」（168,000円 ペア/税込）を発売。さらに今回、スピーカーシステム「ES701 Suono 京」の展開を開始した。

■ホールトーンの豊かさはさすがの一言。ステージイメージも良好

このES701は、ムラタが初めて開発したフルレンジ2ウェイ同軸ユニット1個のコンパクトなブックシェルフ型スピーカー。当然、ユニット中央にはハーモニックエンハンサー（φ2.0cm）をマウントしている。コーン部は13cmのポリプロピレン振動板で、コーン部がフルレンジとして動作し、ハーモニックエンハンサーはおよそ20kHz以上をカバーする。さらに簡単にいえば、フルレンジ＋スーパートゥイーターの同軸ユニットでネットワークはない。能率は85dB（m/W・6Ω）。キャビネットは前面下部のスリット状ポート方式。入力は2端子方式だ。

音はグラスハープやストリングスなどの倍音成分がたっぷり。ホールトーンの豊かさはさすがである。声の帯域はやや明るさを演出するが、トータルではスムーズで破綻がない。一般的な2ウェイと違って、クロスオーバー周波数やネットワークにまつわる中域の乱れがないのもメリットである。無論、ステージイメージも良好だ。

■卓越した空間再現性の魅力にウェイトをおいて考えたい

本機は大振幅低域の再現はちょっと無理。どちらかというと小・中音量派の方々に向いている。本機はこの点を理解した上で、中域周辺のスムーズさとステージイメージの良さ、さらに卓越した空間再現性の魅力にウェイトをおいて購入・使用するのが適切だと思う。組み合せもこうした観点で選ぼう。

ラックスマンの真空管プリメインアンプ「SQ-38u」（378,000円/税込）とCDプレーヤー「D-38u」（231,000円/税込）との組み合わせは興味深い。前者は本機との接続で30W/chを発生。ES701との相乗効果があって音質・音調のバランスが整う。フォノEQはMC（昇圧トランス）/MM対応。後者はオーディオ段に半導体と真空管の2回路を持ち、好みに応じて専用スイッチで切り替えられる。

ぐんと予算を削る場合はマランツのプリメインアンプPM7003＋SA7003の組み合わせが適当だろう。両機はいずれも63,000円（税込）。ワンランク上位の製品の性能と基本的には同等だ。巧みなコストダウンによってコストパフォーマンスが高い。

※この記事は「オーディオアクセサリー」135号（11月21日発売）に掲載予定のものをウェブ用に編集したものです

【ES701 Suono京 スペック】
●型式：ハーモニックエンハンサー同軸搭載フルレンジスピーカー ●平均音圧レベル：85dB（周波数範囲：70Hz〜20kHz） ●最大入力：30W ●推奨アンプ出力：25〜100W ●定格インピーダンス：6Ω ●外形寸法：212W×312H×247Dmm ●質量：5kg ●取り扱い：（株）村田製作所

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【ES701 Suono 京の詳細情報・問い合わせ】
（株）村田製作所
http://www.murata.co.jp/speaker/
TEL/0120-015-008