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<山本敦のAV進化論 第51回>LDACキーマンインタビュー(2)

ソニーのLDACは将来192/32対応に? 他社への“オープン”展開の詳細も

公開日 2015/04/22 12:22 山本 敦
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ソニーが独自に開発した新Bluetoothコーデック「LDAC」。本連載では、最大でSBCの約3倍、96kHz/24bitのハイレゾ相当のデータ量をワイヤレス伝送できる同コーデックの要素技術開発に関わった鈴木志朗氏と宮原靖武氏にインタビューを敢行。今回は、開発の狙いと技術的な詳細を訊ねた前回(関連記事)に続き、さらに踏み込んだ話もお届けする。

ソニー宮原靖武氏(左)と鈴木志朗氏(右)

■高域に含まれる音楽成分はしっかりと残されている

ハイレゾ相当のデータ量転送を実現させるため、LDACでは符号化の際に“ビットの貸し借り”を行うと鈴木氏は説明してくれた。人間の耳が音を認識する際に重要な低域については24bitビット精度を確保しながら、S/Nカーブを変えて高域のビット情報を削り、低域については16bit以上のS/Nとダイナミックレンジが出るように処理を行うことでCD以上の音質を実現しているのだという。

符号化の際に“ビットの貸し借り”を行う

このあたりの詳細は前回の記事を参照して欲しいが、ハイレゾでは高域成分の情報量が増えることでCDを超える高音質が実現されているという側面もある。高域の情報を削ってしまうことでリスニング感に影響は出てこないのだろうか。鈴木氏はこう答える。

「LDACでは高域に含まれる重要な音楽成分は犠牲にせず、しっかりと残していますので聴感上の影響はありません。単純に各帯域にビットがフラットに行き渡っている状態ではデータ量が減らないので、S/Nカーブを少し曲げてやることで、削れる高域のビットを低域に配分するという考え方によって信号をコントロールしています。

人間は低域の成分が十分に無ければ、高域の音を知覚しにくくなります。低域の可聴帯域にある音がしっかりときこえて、なおかつ20kHz以上の情報があるから雰囲気を感じることができるのです。そのバランスをキープしながら、上手に低域の部分を残せるかが大事なポイントになります」

PCMデータは編集や音処理の利便性が高い反面、データに無駄が多いフォーマットであり、必ずしも効率的にデータが格納されていないのだと鈴木氏は説く。PCM形式のファイルに記録されているオーディオデータは、周波数帯域やビット深度を常時上限まで使い切っているわけではない。

鈴木志朗氏 ソニー(株)RDSプラットフォーム システム研究開発部 要素技術開発部門 オーディオ技術開発部 3課 統括課長 主任研究員 Sony MVP2003

FLACによる符号化処理の場合はPCMの信号情報に含まれる無駄を削ることでロスレス圧縮を実現しているが、LDACではさらに効率的なデータ処理を行っている。高周波の微細な音楽信号には、元々それほどビットを使う必要がないのだが、通常のPCMの場合はその分を均等に割り当ててしまう。だから、そこから不要な部分を削っても元々のハイレゾ音源のエッセンスは残すことができるというのがLDACの基本的な考え方だ。

LDACが第一段階で削るデータは、録音時に有効なビットが記録されていない領域だ。よくも悪くもありのままを記録するPCMでは、高周波に行くに従って本来の音ではないものまで記録されてしまっているため、そこからデータを削っても、本来の音として感じられるものは残すことができるという。音楽信号のエッセンスとなる部分を効率よく残しながら、ハイレゾ音源を符号化してBluetoothによるワイヤレス伝送を実現しているというのだ。

次ページ将来的には192kHz/24bitまで拡張可能

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