巻頭言

暑くて熱い夏

和田光征
WADA KOHSEI

連日、亜熱帯のようなうだる暑さの夏本番。7月は暑さと同時に心も熱くしました。同時に教訓も学びとり、8月へ移ろうとしています。

私を熱くしたのは、パイオニアの小谷社長のお話。詳細はトップインタビューを読んでいただきたいのですが、何をもって熱くなったかというと『復活!パイオニア』をはっきり確認できたことです。

業界人としてここ数年における名門パイオニアの凋落ほどかなしいものはありませんでした。私ははっきりと戦略ミス、そしてその認識の甘さと責任の所在の曖昧さがもたらした結果であったと思っていました。

小谷さんが社長になられたとき、或いはなられる前からお会いしていた中で感じていたのは、まさに哲学があり楽観主義者で達観されている、そしてまた公明正大な人であるということであり、大いに期待をさせていただいておりました。その手腕においては昨今の報道の通りであり、また改革の真髄はインタビューで語られているとおりであります。そしてみごとに、期待通りの結果となりました。

多くの人が社を去る苦悩、まだまだ本来の名門パイオニアとは程遠いと小谷さんは言われました。しかし2010年3月期までに構造改革が終わり、2013年3月に向けての成長戦略にしっかりと取り組んでいる今、必ず成就するという決意を述べておられましたが、『完全復活パイオニア』を来年の春にはこの欄で高らかに宣言したいと思います。

そしてもう一つ熱くなったのは、ワールドカップサッカー日本代表の健闘でした。本田というNEWスーパースターを核弾頭に、闘莉王、中澤、長友等を含めた精鋭の防御は世界トップクラスだったと思います。惜しくもパラグアイにPK戦で敗れましたが、まさに戦いに勝って試合に負けたという思いでいっぱいでした。

なぜ、こんなに熱くなったのか。元ソニーの天外伺朗の教えがあったとの報道がありましたが、まさにそうであろうと思いました。私もソニー時代の天外氏から教わったことがありましたし、発想の巨大さにいつも驚いていました。何と言っても氏はAIBOの開発者として有名ですが、サッカー岡田ジャパンの健闘はまさに、『昨日の今日発想』から『明日の今日発想』への転換であったと思います。

具体的にはベスト4を目指すという目標設定とその達成に対する強い意志であります。このことをしっかりと選手たちが意識し自覚して練習し、身体で考えるところまで昇華させて試合に挑み、勝ち進んでいったのでした。まさに天外思想の体現でありました。

あの自信に満ち満ちた選手たちと岡田監督に、「高い目標をもって、そして強い意志で実行し必達する」ということを、経営者の皆さんは感じ取ったのではないでしょうか。

一方、菅さんの消費税発言です。かつて消費税発言で時の首相は惨敗し退陣しています。戦略的にはまず参院選に勝つことが当面最も重要だったはずです。その後、誠意をもって消費税を超党派で議論し、国民に問うべきでした。惨敗した先人の教訓は何だったのでしょうか。

私は地方の片田舎の出身ですが、中央目線の政治にいつも苦しめられてきました。10万円の収入がおぼつかないのに、消費税+税金と、単純に考えても菅さんの惨敗は目に見えていました。経営者が犯してはならない戦略ミスの典型だったと言えるでしょう。

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