音像が絵に描いたように３次元定位する

ヤマハほどＡＶアンプの製品ラインナップが充実しているメーカーは他にないだろう。それがさらに拡充されることになった。

つまり７万円台にＤＳＰ−ＡＸ７４０を新規参入させ、その下の機種も「４０シリーズ」として一新されたのだ。今回視聴したＤＳＰ−ＡＸ６４０は特に内容が充実している。

まず、６チャンネルのアナログ音声入力とプリ出力が揃っていることに注目したい。この価格帯ではプリ出力が省略されることがあるのだが、マルチチャンネルオーディオを考慮するとプリ出力は重宝する。またセレクト機能が充実している。Ｄ４端子２系統はもちろん、前面に光デジタルとＳ端子付きのＡＶ端子を装備するなどなかなかの気配りだ。　音声デコーダー／シネマＤＳＰについては、ラインナップの全８機種と同様にＹＳＳ９３８を使用。操作性に配慮したのも特徴。イージーセットメニューとして、部屋のサイズの大、中、小やスピーカーの数を設定するだけで、基本的な調整が完了するのである。

しかし今回のハイライトは「ハイカレント・アンプ・テクノロジー」のパワーアンプだ。大電流対応の実装やパーツを採用し、高級オーディオアンプとして仕上げたのである。

その成果だろう、「若鮎の鮮度」といいたいほど中高域の切れがよく、音像が絵に描いたように３次元定位する。低域の底がもう一段掘り起こされたような量感も実力志向を物語る。それにシネマＤＳＰとの組み合わせ次第では、濃密な音場が出現するのだから守備範囲が広い。「価格を越える性能」などというより、「ヤマハの価値観」を体現した実力機なのである。

（text：吉田伊織）