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ハイエンドオーディオにおけるオリジナルDACとは?

今こそ知っておきたい「DAC」の基礎知識(後編) ー オーディオメーカーによる“独自DAC”などを解説

公開日 2017/12/30 08:00 山之内 正
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【Q10】様々なハイエンドメーカーが独自にDACを手がけていますが、それぞれでアプローチが異なるのでしょうか。

独自開発のDAC回路を積むのはハイエンドオーディオを手がける海外のブランドが中心で、それぞれ特徴的なD/A変換アルゴリズムを工夫しています。

Sonomaと呼ばれるDSDレコーダーの開発者として有名なアンドレアス・コッチ氏が設計したPlayback Design(米国)のDACは、入力信号を5.6/6.1MHzにアップサンプリングして波形の精度を高めるPDFAS技術を採用し、ジッターによる音質劣化を排除した点にも特徴があります。独自アルゴリズムはFPGA上で実行しているため、ファームウェアのアップデートによって最新のプログラムに更新することができます。

旗艦機「DAVE」をはじめとするCHORD(英国)のDACも、独自設計&ディスクリート構成DACを代表する存在と言えるでしょう。いずれもロバート・ワッツ氏が開発を担当。アルゴリズムの詳細は公開されていませんが、音の立ち上がりを改善する過渡特性の優れたWTAフィルター、高次ノイズシェイパー、パルスアレイDACなどの独自技術を組み合わせ、FPGAを用いた高精度なDACを構成しています。

dCS「Vivaldi DAC」独自開発 Ring DACの8世代目を搭載する

英国のdCSは社名(データ変換システム)が示す通り、AD、DAの各変換プロセスを徹底的に研究し、独自のアップサンプリングやフィルター技術を駆使して、高精度なD/A変換を実現しています。独自開発のRing DACは世代を重ねるごとに性能を向上させ、徹底した低ノイズ&低歪、優れたチャンネルセパレーションを実現すると同時に、クロック精度の向上についても独自のこだわりを持っています。

マランツはフラグシップSACDプレーヤーのSA-10に自社開発のMarantz Musical Mastering(MMM)を採用し、ディスクリート構成のDACを初めて導入しました。MMMはデジタルフィルターやΔΣ変調のプロセスをDSPで構成し、DSD信号をアナログFIRフィルターでアナログ信号に戻す処理も独自に設計しています。DAC回路の前段と後段の間にノイズを遮断するデジタル・アイソレーターを配置するなど、ディスクリート構成ならではの音質対策を導入している点も見逃せません。

(山之内 正)

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