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連続企画:日本コロムビアのハイレゾ音源レビュー

GIGA MUSIC独占先行配信!ジャズ/ロックファンこそ聴け!歌謡曲の真髄「舟木一夫全曲集」がハイレゾで登場

公開日 2017/01/26 14:00 大橋伸太郎
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音楽配信サイト「GIGA MUSIC」にて、名門・日本コロムビアが擁する選りすぐりの未ハイレゾ化音源が、続々とハイレゾで登場。しかも独占先行配信となっている。

Phile-webではこのハイレゾ音源を連続レビューする企画を展開している。リリース当時のエピソードや、ハイレゾになったからこそ注目したい聴きどころをたっぷりとご紹介したい。





舟木一夫全曲集 春はまた君を彩る / 舟木一夫
96kHz/24bit FLAC
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「舟木節」が魅力の歌謡界の大御所的存在

「♫おーとこだったあらー、ひとつにかけーるー…」舟木一夫と聞くとTV時代劇「銭形平次」のテーマソングを思い浮かべる方が多いのではないか。十代の頃は洋楽一辺倒の筆者が歌詞を諳んじていてアカペラで歌える位。「水戸黄門」の主題歌と双璧の国民的TVソングかも。実はそんな歌謡曲の大御所もかつては女の子のアイドルだった。

デビュー曲「高校三年生」(1963)がミリオンセラーの大ヒット、素朴でいなたい魅力の橋 幸夫、ロカビリー出身でハイカラな西郷輝彦を一歩も二歩もリードして初代「御三家」の筆頭格。細面のしょうゆ顔の美少年で痩身長駆。何と言っても歌がうまい。デビューしたばかりの頃はけれん味なく真っ直ぐに歌う初々しさが魅力。一言でいうと「青い魅力」。ヒットを重ねながら練り上げた「舟木節」で歌謡界の大御所的存在になっていく。

日本を代表する大衆音楽、歌謡曲は新旧の音楽の伝統が混淆した雑種音楽で背景は多様だ。例えば、村田英雄は浪曲、北島三郎は民謡がバックグラウンドでこう言っては失礼だが泥臭い。それに対し、舟木一夫の歌は長唄、江戸小唄、端唄といった近世の都会的な邦楽の粋で洗練された節回しを取り込んだことが特徴だ。一度聞いたら忘れられない舟木一夫の「いなせなフィーリング」は邦楽のエッセンスを巧みに取り込んで生まれた。それは、レッスンを授けた作曲家 遠藤 実や日本コロムビアのディレクターの着眼によるのだろう。

不振の時期もぶれることがなかった歌手人生

「高校三年生」は、歌謡曲史上初めて「世代別マーケティング」から生まれた画期的なヒット曲だった。それまでの歌謡曲はリスナーの性別や年代を限定せず広く大衆に歌いかけた。「高校三年生」は違う。学生服に凛と身を包み同年代の少女たち一人一人にラブレターを手渡すように歌った。新ジャンル「学園歌謡」「青春歌謡」がこの瞬間生まれた。1970年代のスクール歌謡(森 昌子「せんせい」やフィンガー5「個人授業」)、男性アイドル歌謡(郷ひろみ「男の子女の子」)のルーツ全てがここにある。

その後も「絶唱」(1966年日本レコード大賞)、「夕笛」と大ヒットを重ねて歌謡界の大御所に。しかし「高校三年生」以来の女性ファンを何より大切にする歌手道のアンビバレンツがその後やって来る。

1970年代に入ると舟木一夫は不振の時期を迎える。フォークソングブームが巻き起こる一方、ポップスの影響で生まれた新世代演歌が台頭すると、舟木の歌唱スタイルはいかにも古めかしく聞こえた。本人の苦悩も深かったに違いない。しかし、この歌手の偉かったのは日和見せず変節しなかったことだ。

美声の民謡歌手として男性ファンも多かった三橋美智也がディスコブームに乗って、白いスーツでミラーボールを指差し「フィーバー!」を連呼し、古くからのファンをがっかりさせたのを他山の石としたのかもしれない。舟木一夫はどこかで吹っ切れた。「舟木一夫のまま」決してぶれることがなかった。

1980年代は日本中を行脚しての地方公演を精力的にこなす一方、舞台俳優としても活躍。それが実を結び1990年代に入り舟木リバイバルが起き、中高年女性の永遠のアイドルとして再び脚光を浴びる。「同じ青春を過ごした仲間にしか通用しない歌手でいい」デビュー30周年プレ公演を前にしての本人の言葉だ。

舟木一夫の歌には歌謡曲というものの奥深い生い立ちの魅力がある。普段ジャズやロックばかりを聴く音楽ファンにこそ聴いてほしい歌謡曲の真髄がここにある。

その絶好の機会がやって来た。日本コロムビアの名歌手の名盤の数々をハイレゾで配信しているGIGA MUSICから、舟木一夫の2015年のベストアルバム「春はまた君を彩る」(CD)が新たに96kHz/24bitのハイレゾで配信開始されるのだ。古希を過ぎて歌謡界のトップであり続ける舟木一夫の秘密と真髄をハイレゾの解像力が解き明かしてくれる。

「春はまた君を彩る」は1963年のデビュー曲から2015年の最新曲まで舟木一夫の代表的ヒット曲16曲で構成した決定盤だ。デビュー曲「高校三年生」は素直な歌い口が初々しい初心に満ちているが、フレージングの巧さに大器の片鱗を窺わせる。舟木はレコーディングを重ねる都度、テクニックを磨いていく。ビブラート、ポルタメント、レガートといった西洋の声楽の技巧が、歌謡曲特有の旋法(和声的短音階)や伝統邦楽の歌い口と融合し、粋でいなせな邦楽+ジャズ的ニュアンスを生み出したところが歌手 舟木一夫の偉大さだ。


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