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5年先を見据えた技術の行く末は

東芝のテレビ開発撤退は本当か? 「やめるべきでない」いくつかの理由

公開日 2015/12/16 11:15 編集部:風間雄介
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今後拡大する4K/8K市場を去るのは不合理

ポイントとなるのは、国内向けテレビの開発体制を残せるかどうかという点だ。特に4Kや8K、HDRなど次世代技術の開発体制がどうなるかが、今後の同社テレビ事業の大きなカギを握る。

同社は6月時点で、「日本国内市場向けのテレビ事業は、従来どおり自社開発および販売を継続する」とコメント。「顧客価値の高い商品を創出することで、今後も事業の安定的黒字化を目指す」と説明していた。ところが昨日の日経報道では一転して「テレビ事業は自社開発をやめる検討に入った」と、ニュアンスが大きく変わっている。これをどう捉えるべきか。

テレビ開発からの全面撤退、そして国内販売縮小ということになれば、短期的な利益にしか興味のない一部投資家は歓迎するかもしれない。だが筆者としては、これは中長期的には得策ではなく、会社全体の経営という観点からも不合理と考える。

すでに2020年の東京オリンピックに向けて、4Kや8K放送/配信サービスのロードマップがある程度固まっている。地デジ化によってテレビ需要が大きく拡大したように、来期、あるいは2017年度以降に、4Kテレビや8Kテレビの需要が一気に広がるのは明白だ。

地デジ化当時と比べて国内のプレーヤーが減っていることもあり、REGZAのブランド力をテコに魅力的な商品を投入していけば、拡大する4Kテレビ市場の中で存在感を発揮し、安定して黒字を続けることは比較的容易だろう。

これは他社も含めた話だが、国内のテレビ事業会社にとって、2Kテレビから4Kテレビへの端境期である今が、経営的には一番難しい時期だ。逆に言えば、ここさえ乗り越えれば、買い換え需要が徐々に高まり、テレビ事業は再び“儲かる”ビジネスになる可能性が高い。それが分かっているのにみすみす市場を去り、膨らむパイを他社が分け合う姿を傍から眺めるというのは、いかにももったいない。

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