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デノン新SACDプレーヤー「DCD-1700NE」レビュー。大袈裟ではなく激変、耳を疑うほどに音質向上していた

公開日 2023/02/08 07:00 山之内 正
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“弦の振動まで見える”実態感、鮮度の高さで前機を超えた臨場感を実現

今回、音元出版試聴室のリファレンスシステムにDCD-1700NEを組み込み、CDとSACDで再生音を確認した。

音元出版の試聴室にて実際のサウンドを検証した

最初に聴いたアークブラスのデビューCD(avex classics)は、金管楽器それぞれの音色の描き分けと音像定位の精度、余韻の空間描写などが聴きどころだ。フィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブルのおなじみの曲を演奏しているのだが、演奏技術と洗練された音色はオリジナルを上回るものがあり、オクタヴィアレコードの江崎氏が手がけた録音も絶品。

10名の奏者が半円形に並ぶステージがそのまま眼前に展開し、岐阜のサラマンカホールの柔らかい余韻が部屋いっぱいに広がる。トランペットとトロンボーンどちらも倍音が豊富な柔らかい音色を忠実に引き出し、大きめの音量で聴いてもどこかの音域で飽和する気配がまったく感じられない。

トロンボーンの音圧は力強く、ベルやスライドの動きが見えるような実在感があるが、木質の柔らかい余韻と溶け合う感触を正確に再現しているためか、刺激的な硬さや鋭さは不思議なほど気にならないのだ。これは実際にサラマンカホールで体験した時の印象と近く、大音量で鳴ってもうるさく感じることがない生演奏ならではの良さが蘇ってきた。

ビル・エヴァンス「ビハインド・ザ・ダイクス」(Elemental Music)は1969年のライヴ録音で、聴衆の反応や会場の暗騒音もそのまま記録した臨場感豊かなサウンドが楽しめる。

DCD-1700NEは楽器から出てくるすべての音を正確に再現するだけでなく、エディ・ゴメスの左腕がベースの側板に当たる音や息遣いまで生々しく描き出し、演奏の高揚感がリアルタイムのライヴさながらに実感できる。

DCD-1600NEの音にも力強さと躍動感が感じられたが、弦の振動が見えるような実体感と鮮度の高さはDCD-1700NEが新たに獲得したもので、ライヴの臨場感は確実に前作を上回っている。これが50年以上も前の録音とは到底思えないほどの鮮度感があり、当時のアナログ録音のレベルの高さにも感銘を受けた。

ペトラ・マゴーニがリュート伴奏でロックやジャズの定番を歌った「All of us」(Fone)でCD層とSACD層を聴き比べると、リュートの一音一音の発音の速さ、ヴォーカルの子音のスピード感、そして声の柔らかさを引き出す余韻の柔らかさなどに両者の違いを聴き取ることができた(再生エリアはリモコンのMODEボタンで切り替えられる)。

リモコンの「MODE」ボタンか本体フロントの「DISC LAYER」ボタンでエリアの切り替えが可能

マゴーニのヴォーカルは強弱と明暗の振幅がどちらも桁外れに大きく、音域の広さも群を抜いているので、再生システムの対応力が問われる面がある。プレーヤー、アンプ、スピーカーのどこかに課題があると、彼女の振幅の大きな表現の醍醐味が十分に伝わらず、魅力が半減してしまうことがあるのだが、DCD-1700NEはディスクに記録された信号を忠実に再現するというソースコンポーネント本来の役割を演じ切ってくれた。

アンプなども操作可能なリモコンが付属する



オーディオの世界ではモデルチェンジのたびに「音質向上」というキーワードを繰り返し聞かされるのだが、実際の変化の中身は千差万別で、音質改善を実感できるかどうかは聴き手の判断に委ねられている。

心臓部のデバイスや回路技術が一新された場合は音の傾向が大きく変わるため、難しい判断を迫られることも少なくない。一方、今回のようにチューニングで音を追い込む手法を選んだ場合、音の基本的な指向を共有するなかでどこまで音の良さを伝えられるかが課題になる。

DCD-1700NEの再生音が前モデルとは別物に感じられたのは、エネルギーバランスや音調など基本的な音の指向は変えずに、空間表現の進化や鮮度の高さを引き出し、介在物のない距離の近さを伝える音に生まれ変わっていたことが大きい。同じミドルレンジとはいえ、格が一つ上がったような印象を受けたのはそこに理由がある。

(協力:ディーアンドエムホールディングス)

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